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2012 Rd12 ベルギーGP観戦記 バトンのひとり旅

 ▽バトンの一人旅
今回はバトンとハミルトン、二人のチームメイトの明暗がはっきりと分かれた。
バトンはPPから余裕の優勝。ハミルトンはスタート直後の1コーナーでクラッシュ、リタイヤ。
二人の差はどこから生まれたのだろう。

バトンは今回、新しく持ち込んだダインフォースの少ないリアウィングを搭載。当然、抵抗も少なくトップスピードが高い。これが優れたパーツで彼は全開の多いセクター1と3で他のドライバーより0.3秒ずつ速かった。つまり合計で1周0.6秒も速かったのである。当然、カーブの多いセクター2では0.3秒ほど遅いのだが、それでも全体で観て0.3秒のアドバンテージでポールポジションを獲得した。

一方、ハミルトンはFP3で同じ新しいリアウィングを試したもののセクター2でのバランスが悪く、予選では旧型のダウンフォースが大きいリアウィングへ戻した。
これが結果的にバトンとハミルトンとの予選で差になった。
ところがダウンフォースを減らしたバトンであるが、予選はよかったが決勝では一抹の不安もあった。ダウンフォースが少なければセクター2で不安定になりタ イヤの消耗が激しくなる可能性もあった。だがバトンはトップに立つことによりセクター2を全開で走る必要がなくなった。セクター2では多少遅くても追い抜 かれることはないからだ。そうすればバトンはタイヤの消耗を気にせずレースをすることができる。

特にスタート直後の1コーナーで上位陣5台が消えるアクシデントもあり、その後のバトンは後ろを見ながらのレースになる。唯一の脅威になったのは1ストッ プできたベッテルだった。ただバトン陣営は2位スタートだったザウバーの可夢偉が1ストップ作戦でくるかもしれないと予想し、1ストップの準備もしてい た。だからベッテルが1ストップでくれば1ストップで対抗し、2ストップだったらそれにあわせてきただろう。

一方のハミルトンは旧型のウィングを使い予選7位。これによりスタート直後にグロージャンと絡んでリタイヤしたのだから、気分は重いだろう。実際彼は予選 終了後、Twitter上でテレメトリーのデータを撮影した画像を彼のアカウントで公開。チーム側はそれを削除するように要請。数時間後には削除された が、それにはセットアップの情報が含まれており公にする類いのものではなかった。

▽可夢偉のレースは数秒で終わり
可夢偉はクラッシュに巻き込まれなくても、バトンに勝つことは難しかっただろう。
もしバトンはスタートで可夢偉に前にでられても、セクター1の速いバトンはバックストレートで可夢偉を抜き返すことができたから。
可夢偉が優勝する唯一の方法はワンストップ作戦だったが、マクラーレン陣営もワンストップ作戦をオプションとしてもっていて実行。
可夢偉の優勝の可能性は低かったが、表彰台は十分に可能であった。ところがスタート直後の1コーナーでグロージャン、ハミルトン、アロンソ、ペレスが絡ん だ多重クラッシュに巻き込まれ、リタイヤこそ逃れたものの、マシンを大きく損傷した可夢偉はその後ピットインを繰り返し13位でレースを終える。

確かに今回のクラッシュは可夢偉の責任ではない。だが可夢偉がスタートを大きくミスしていなければクラッシュに巻き込まれることはなかった。実際予選3位 のライコネンはクリーンなスタートを決めて巻き込まれていない。だから可夢偉も予選順位を守れていれば問題はなかったのだが。そもそもスパはスタート位置 から1コーナーまでの距離が短く、スタートで何台にも抜かれることは希である。にも拘わらず大きく順位を落とした可夢偉のスタートはかなり悪かったことに なる。
スタートの動き出しに関しては、担当エンジニアが可夢偉にクラッチ設定の指示を出し、ドライバーは、それを忠実に実行するだけである。だが今回もその設定 は間違っていたようだ。ホイールスピンが多く動き出しが鈍い。これはエンジニアの予想以上に路面の抵抗が少なく、タイヤがグリップしなかったことを表して いる。

それにしてもなぜ可夢偉が予選上位につけた時に、スタートの失敗が続くのであろう。この原因を彼らはつかんでいるのだろうか。今年の中国GPでも昨年の日 本GPでもスタートを大失敗している。これがザウバーのチーム力と言われればそこまでである。トップチームはこのような失敗を何度も繰り返しはしない。

▽またまたお騒がせのグロージャンとマルドナド
スタート直後のクラッシュに関してはグロージャンに責任があるだろう。接触する瞬間、グロージャンはハミルトンが見えていなかったか、観ていなかった。だからイン側を閉めてしまった。これでグロージャンは次のイタリアGPへの出場を禁止されてしまった。

それにしてもクラッシュに巻き込まれたアロンソは気の毒である。彼は予選こそ6位(マルドナドのペナルティで5位スタート)だったが、スタートで2台のザ ウバーを抜き3位に位置していた(フライングのマルドナドは考えないものとする)。チャンピオンシップを争うベッテルは10位スタート、ウェバーは12位 スタート。彼にとってはバトンが勝っても、可夢偉が勝っても関係なかった。彼が注意していたのはレッドブルの2台よりも先にフィニッシュすることである。 だがそれをすることもできなかった。あの状況では事故を避けることはできない。ただアロンソの目の前をグロージャンのマシンは飛び越えており、もしもう少 しヘルメットに近い位置だったら最悪の事態も考えられただけに、幸運だったとも言えるだろう。

これでアロンソとベッテルとの差は24ポイント。まだアロンソ有利な状況は変わらないが、ベッテルも逆転チャンピオンに向けて可能性がでてきた。
それにしてもベッテルの日曜日の走りも不可解だった。土曜日にはトラブルもないのにQ2で落ち、日曜日は10位からスタートし2位。今年のF1は本当に理解するのが難しい。

そして明らかなフライングをしたマルドナド。あそこまで酷いフライングは久しぶりだった。1970年代とか80年代には結構あった。特にグリッド後方だと 見えにくいのでフライングしてもペナルティがなかったこともあった。だが今は違う。センサーによりブラックアウトする前に動き出せばすぐに判明する。マル ドナド本人はクラッチパドルから手が滑って動き出してしまったそうだが、そんなことがあるのだろうか。疑問である。
フライングとコース上での接触により彼は次戦イタリアGPで10グリッド降格になる。フライングで5グリッド降格、接触で5グリッド降格、合計10グリッ ド降格である。今シーズンの彼はペナルティで何グリッド降格したのだろうか。誰か数えていたら教えて欲しい。すでに24グリッドくらい降格してたりして。



 

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