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ハミルトンとロズベルグ 明暗を分けたスタート

f1spa_2015_hz_04308-s ハミルトンはチームメイトであるロズベルグを完膚無きまでにたたきつぶして今シーズンの6勝目を完全勝利で終えた。これは彼の通算39回目の勝利であり、セナの記録へあと2勝と迫った。 最前列に並んだメルセデス二台の注目はスタートである。このベルギーGPからフォーメーションラップ中の指示が制限された。またスタート直前に決めていたクラッチのバイトポイントを、ピットから出たら変更できないルールになった。 クラッチのバイトポイントを決めるのにピットを出た後だろうが、スタート直前であろうが、あまり影響がないと思われるかもしれないが、チームにとってこれはなかなか難しい問題である。 クラッチの適切なバイトポイントはクラッチの温度や外気温、湿度によりとても微妙な影響を受ける。そして路面状況もスタート直前まで変化するので、エンジニアとしてはバイトポイントの決定をスタート直前まで引っ張りたい。だがこのレースから、それができないので、エンジニアは予想するしかない。 だがこのレースでは、このバイトポイントに影響を与える出来事があった。それがスタートの中止と2度目のフォーメーションラップである。ヒュルケンベルグがスタートできなかったことにより、最初のスタートは中止になり、もう一周フォーメーションラップがおこなわれた。ここでロズベルグのクラッチは温度が上がりすぎた模様である。 これによりロズベルグはスタートに失敗し、順位を落としてハミルトンの挑戦する権利を失った。もっともロズベルグがスタートで前に出ていても、ハミルトンを抑え切れたかどうかは微妙であった。 それほどこの日のハミルトンは圧倒的であった。バーチャル・セーフティ・カーがでた時、一時的に差は縮まったが、その後はハミルトンが容易に差を広げて、ロズベルグに精神的なダメージを与えた。 今のロズベルグはハミルトンを破る糸口がない。その糸口を探せなければ、ロズベルグはハミルトンに勝つことはできない。それは優勝という結果ではない。もしハミルトンがリタイヤして、ロズベルグに勝っても、ハミルトンは痛くもかゆくもない。次のレースで勝てば良いだけである。そうではなくて実力でハミルトンを破り、彼に焦りを感じさせなくてはいけない。 精神的に追い詰められたハミルトンはミスが増える。それこそがロズベルグが目指さなければならない。だが現状では、その糸口すら見つからないのが、ロズベルグの苦しいところである。