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ピレリが秘密テストをした本当の理由

カナダGPの金曜日にチームに配られた変更された新しいタイヤは、イギリスGPでは使われない事が決まった。理由は雨が降り走行距離が少なくテストができなかったのと、特定のチームから反対されたからだ。現在のルールではタイヤを変更するには安全上の理由がなければ、全チームの同意が必要となる。

ここで一番問題になるのは安全上の理由があれば、全チームの同意なくしてタイヤの変更が可能な点だ。ピレリは今回のタイヤの変更の理由を頻発するタイヤ交換を抑制する事を上げている。つまり安全上の問題ではないという事だ。だがタイヤ交換の回数を減らすのであれば、四種類あるタイヤのうち硬い方のタイヤを持ち込めばいいだけである。シルバーストーンみたいにタイヤに厳しいサーキットであれば、ハードタイヤのコンパウドを変更すればいい。これは昨年も実施している。構造素材を変更する必要はない。

以前にもお話ししたが、今回のタイヤ変更はマルチストップの抑制というよりは、タイヤの安全性の確保が目的ではないかと思っている。
あれだけトレッド剥離が何回も発生すれば、それが破片によるものではない事が容易に想像できる。昨年より破片が多いという証拠はないから、昨年よりトレッド剥離がおきているのであれば他の理由がなければ理解に苦しむ。というかあの種類のトレッド剥離は過去に記憶がない。

私は今年のピレリタイヤは構造を柔らかくした為に負担がかかり剥離が起きていると思っている。だから彼らはスチールケーブルをケブラーに変更して構造の変化を抑え、それによりタイヤへの負荷を下げようとしている。

た だピレリとしては安全でないタイヤを供給したとは言われたくない。最悪の場合、訴訟にもなりかねないし、イメージダウンは計り知れない。だからマルチス トップの抑制という大義名分を持ち出してきたわけだが、昨年4ストップがあったレース後もピレリは今回と同様の変更をしてはいない。だからロータスは強硬 に反対している。彼らのマシンはこのタイヤにあっているからだ。もしタイヤが変更されれば、ロータスはタイヤの発熱で今以上に苦労する事になるだろう。

そうピレリは今、八方塞がりな状況に追い込まれている。その半分はテストができない事が理由で、残りの半分は安全性を主張できない自らがまねいている。こう考えれば、ピレリがルール違反に問われるかもしれないテストを、この時期にメルセデスとおこなったことが理解できる。

彼らはタイヤに厳しいバルセロナでタイヤがどこまで持つのか知りたかったし、新しいタイヤのテストも当然おこなっているはずだ。

さ らにこの状況下で最近、ピレリがタイヤテストの復活を訴えている理由も理解できる(これは来年実施されることが決まった)。つまりテストなしでシミュレー ションだけでは限界があるという事だ。確かにシーズン前テストはあるが気温も違えばマシンのパフォーマンスも違う状況では有用なデータを集める事は難し い。

このような追い込まれた状況でピレリはタイヤの製造工程の変更で切り抜けようとしている。しかし製造工程の変更で問題が解決するのであれば、そもそも構造の変更を模索する必要はない。それともメルセデスとの秘密テストで目処がたったというのであろうか?

タイヤに厳しいシルバーストーンでのレースは今月末に開催される。そこでどうなるのかは、大変興味深い。安全性を損なうような状況にならない事を願うのだが。

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