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2013 Rd.9 ドイツGP観戦記 勝利を逃したライコネン

 ▽勝利を逃したライコネン
ライコネンは手中に収めかけた勝利を逃してしまった。最後のタイヤ交換を終えたベッテルを従えながら、ライコネンは好調なタイムを刻んでいく。この時点でベッテルは3ストップで最後までいける。ライコネンは2ストップでもう一度タイヤ交換するかどうかは微妙だった。

絶対的なタイムこそタイヤの新しいベッテルの方がいいが20周近く走ったタイヤとは思えないライコネンの力強いタイム。残りは11周。最後まで走るとライコネンのタイヤは30周を記録するが、勝利するためにはギャンブルしかなかった。ところがライコネンは49周目にタイヤ交換のためピットへ向かいタイヤ交換した。ソフトタイヤにして3位からの逆転勝利を目指した。

上位の3台は何度も同じラップタイムを記録する恐ろしく高いレベルのバトル。だがライコネンは最終ラップでベッテルに追いつくも、追い越せずに2位に終わる。

それにしても、なぜロータスは最後のタイヤ交換をしたのだろうか? もちろんミディアムタイヤで30周走るというのはギャンブルである。この日はこの週末としては一番暑く、しかもニュルブルクリンクにしては記録的な路面温 度となる44度まで上昇した。このためレース前にはミディアムで30周以上走れるとの予想だったが、タイヤの温度が予想より上昇して熱だれが発生。そのた めにほとんどのドライバーが15周前後でミディアムタイヤを交換。だがライコネンは違った。彼らはタイヤの温度管理ができていた。温度さえ問題なければミ ディアムで30周は走りきれたのだから、温度管理ができていたライコネンはタイヤ交換なしでも最後までいけた可能性がある。しかもベッテルとの差は15秒 近くあったので、タイヤを労わる余裕もあった。

問題は優勝するためにリスクを冒すべきかどうかだ。最後のタイヤ交換を引っ張った場合、タ イヤがもたなくてもう一度タイヤ交換してもベッテルに追いつくには週回数が足りない。またアロンソの後ろでコースに復帰し4位になる可能性もあった。2位 を確実にしながら、優勝も狙ったのが、この日のロータスの作戦だった。だがロータスが優勝を目指すなら、思い切ったことをしないとレッドブルに勝つのは難 しい。

もしソフトにタイヤ交換するならば、もう少し早く入るべきだった。スタート直後の燃料が重い状態でグロージャンは13周まで引っ張 れた。燃料が軽く路面状態が改善されているレース終盤であれば、もう少し長く走れる。ただ残念なことにライコネンには予選で6周走ったソフトタイヤしか 残っていなかった。もし新品ソフトが残っていれば、逆転も夢ではなかったのだが。

そしてもう一つライコネンをトラブルが襲っていた。無線 のトラブルだ。ライコネンはピットからの無線は聞こえるが、ピットはライコネンの無線が聞こえなかった。そのためピットはタイヤの状態をライコネンから聞 くことができず、手持ちのデータとタイムだけで判断しなければならなかった。ライコネン自身は最後のタイヤ交換を必要なかったと言っているので、もし無線 にトラブルがなければ結果は変わっていたかもしれない。

▽輝いたグロージャン
今回のレースで一番の驚きはグロージャンである。5 位からスタートしたグロージャンは先頭集団が8周前後で続々タイヤ交換する中、ソフトタイヤで13周走り一挙に2位に上昇。本日のレースメーカーとなっ た。その後も素晴らしい走りを見せたグロージャンだったが、セーフティカーで複雑な状況に追い込まれた。トップのベッテルとの差がなくなり、優勝のチャン スがでできたが、同時に3位のライコネンとの差もなくなった。セーフティカー後のレースで最初に動いたのはグロージャン。40周目にタイヤ交換し、ベッテ ルをアンダーカットする作戦。これに反応したベッテルが翌周にタイヤ交換してトップをキープ。これはアンダーカットを狙いつつ、ベッテルを早くタイヤ交換 させて、ライコネンをアシストする素晴らしい作戦だった。ベッテルが早くタイヤ交換すればレース終盤、彼のタイヤは厳しくなる。最終的にはライコネンが 49周目にタイヤ交換した後で追い上げられた時は、チームオーダーがでて結局3位になった。

優勝こそできなかったが、この日のグロージャンはベッテルやライコネンに優るとも劣らない走りを見せてくれた。ただ彼はこの走りをいつも見せなければならない。その安定性こそが彼に欠けているものである。

▽かろうじて勝ったベッテル
今回のベッテルの勝利は彼のキャリアの中で最も厳しいレースの一つになるだろう。勝つには勝ったが苦しいレースだった。ただ最後は古いタイヤにムチ打って、しかもミスが絶対に許されない中、ミスなく走り切った走りは見事としか言いようがない。

これで彼はシーズン4勝目、キャリア30勝、そして地元ドイツでの初勝利となった。
そして、この日の勝利は4回目のチャンピオンに向けた大きな一歩になるかもしれない。

▽今日のピレリタイヤ
今 回、ピレリは後輪の構造の部材をスチールからケブラーへ変更してきた。当然、シルバーストーンでのタイヤバースト続発への対応である。このサーキットはシ ルバーストーンよりタイヤへの負荷が小さいこともあり、タイヤには問題が発生しなかった。それにしてもこの短期間で新しいタイヤを作り、輸送したのは見事 である。これは簡単にできることではない。
次のハンガリーGPには昨年の構造に今年のコンパウンドを接着した新しいタイヤを持ち込む。これで今年のピレリタイヤ問題は解決されるだろう。

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