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2013 Rd.10 ハンガリーGP観戦記 勝者と敗者 明暗を分けた最後の予選アタック

▽新しいタイヤはメルセデスに有利なのか?
今回から持ち込まれた新しいピレリタイヤ。実績のある昨年の構造に、今年のコンパウンドを使用したタイヤに変更された。構造にケブラーを使用したタイヤはタイヤの変形を抑えるので当然、発熱も抑えられる。またタイヤの変形を抑えることでコンパウンドの剥離も抑えられることになる。

ではこの変更は誰にとって有利になって、誰にとって不利になるのか。
このレース、1位はメルセデス、2位はロータス、3位はレッドブルとなった。1位と3位は旧タイヤで苦しんでいたマシンであり、2位のロータスは旧タイヤを上手く使いこなせていた。結果からいうと、タイヤ変更による有利不利はなかったように見える。ただこの気温の高い状況でメルセデスのマシンが最後まで残ったのは興味深い。もちろんこのサーキットはタイヤに特別厳しくはないし、ハミルトンはセーフティリードを確保している時間帯が長く、余裕があったのも確かだ。それでもハミルトンがペースを落とすことなく、優勝できたことは、注目に値する。タイヤの変更に関しては、全てのチームが同一条件であり、これにより遅いマシンがいきなり勝つことはないし、逆もまたあり得ない。だがこの変更がタイヤに厳しいといわれいたチームに有利に働いたことは否めない。プライム側のミディアムタイヤで30周以上走ったマシンもあった。これはミディアムの寿命が長いことを意味し、ハードタイヤはこれよりも持つということである。だが確定的なことは夏休み明けのベルギーGPまで待ちたいと思う。このサーキットはタイヤに厳しい。ここでメルセデスが勝つようだと、ゲームのルールは変わることになるかもしれない。
 ▽勝者と敗者の分かれ目
とはいえハミルトンは新しいタイヤだけが原因で勝ったわけではない。メルセデスは事前のシルバーストーンでの若手ドライ バーテストに参加しておらず、今回初めてこのタイヤを使用した。彼らは金曜日に長距離を走り、タイヤの特性と最適なセットアップを探し求めた。金曜日の時 点ではロングランでレッドブルに対抗できなかったのだが、見事に決勝レースではセットアップを決めてきた。
そしてハミルトンの予選最後のタイムア タック、スタート、レースペースは素晴らしく、彼が勝つのは当然であった。とりわけ素晴らしかったのは、タイヤ交換後に遅いバトンとウェバーを早々に抜い たこと。これは簡単に抜いていたように見えるが、ベッテルはバトンを抜きあぐねて大きくタイムロスしたことを考えると、このハミルトンのオーバーテイクは 見事としか言いようがない。このオーバーテイクでハミルトンは勝利への扉を自分自身で開くことに成功した。

ハミルトンに唯一対抗できたの はベッテルだったが、彼は予選Q3最後のアタックで保守的にいきすぎたため、タイムを余り伸ばせず予選2位になったのが致命傷になった。ハミルトンはQ3 最初のアタックから約1秒刻み、他のドライバーも1秒前後縮めてくる中、ベッテルはわずか0.1秒しか縮められなかった。これがなければベッテルはポール ポジションを獲得し、いつもの勝利の方程式を描けたのだが。それでもベッテルはレース序盤2位で優勝のチャンスもあったのだが、1回目と2回目のタイヤ交 換を延ばしたためにタイムロス。2度にわたりバトンに先行され、大きくタイムロスしハミルトンに大きなマージンを与えてしまう。ちなみに2回目のタイヤ交 換でバトンの後ろに出たのは、計算ミスではなく、右フロントのタイヤ交換に時間がかかったためである。これらのミスにより2ストップのライコネンに先行を 許し、3位で満足するしかなかった。もっともグロージャンにペナルティがなければ4位もあり得たので、幸運な結果でもあった。レッドブルの場合、コース上 で抜くこと考えてセッティングされておらず、最高速が低い。そのため、前に出られると抜くのは困難な仕事になる。今回はハミルトンを逆転するために2ス トップという選択肢を考えて2回目のタイヤ交換を先延ばしにしたばかりに、2位の座も失ってしまった。それでもライコネンとは3ポイント縮められただけだ し、アロンソには更に差を付けることができたので、それほど悪い結果ではない。

▽明暗が分かれたロータスの二人
またも勝てなかっ たライコネン。勝てない理由は今回も予選順位である。もしキミがグロージャンと同じ2列目からスタートできていれば、ハミルトンに脅威を与えることができ ただろう。ライコネンのマシンは新しいタイヤに上手く対応ができず最適なセットアップを見つけることができなかった。そのため、チームメイトのグロージャ ンが3位グリッドを確保している中でライコネンは6位。これが逆なら優勝争いも可能だったのだが。それでも路面温度50度の高温の中で、他より一度少ない タイヤ交換で、終盤くたびれたタイヤでフレッシュなタイヤをはくベッテルを余裕で抑えきる、正確なドライビングはさすがライコネン。

今回 は予選3位からスタートしたグロージャンは条件によっては勝つチャンスがあった。少なくとも表彰台は獲得できただろう。彼の表彰台を阻んだものはまたもペ ナルティ。ただ今回の彼には同情の余地はある。確かに彼はシケインを不通過したし、コースアウトしながら抜いていった。だがコースアウトして抜きながらペ ナルティがなかったドライバーはたくさんいるし、シケインをまっすぐいかなくても、バトンは抜けていた。ただ彼の詰めの甘さは、バトンを抜いた後にレコー ドラインに戻ろうとして、接触していることだ。あそこでは完全に抜き去っていない限りスペースを残さないといけない。その接触でグロージャンはシケインを 不通過して、ペナルティをもらい、表彰台を逃した。もし彼がライコネンのように2ストップでいけたのなら勝利もあり得ただけに、不注意としかいいようがな い。この二つのオーバーテイクも含めて、走り自体は前回同様素晴らしかっただけに、あまりにももったいない。
これからシーズン後半に突入するF1において、彼に残された時間は少なくない。この世界では結果を残したドライバーだけが生き残れるのである。

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