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2013 Rd12 イタリアGP観戦記 <BR>ベッテル 不安な独走

▽ベッテル 不安な独走 ベッテルはモンツァで今シーズン初めて2連勝を飾ったドライバーになり、混戦模様だったシーズンに決着をつけるべく今シーズンの6勝目をあげた。一見、ベッテルが独走し退屈なレースに写ったかもしれないが、その裏ではスリリングな状況があった。
今回レッドブルはモンツァ専用の空力パッケージを持ち込んだ。 昨年まで予選ではコース上の好きな部分でDRSが使用できたが、今年からDRSゾーンでしか使用することができない。 その為、予選のタイムを考えると軽い空力パッケージが必要となったからだ。それでも彼らはフリー走行ではギア比を下げて加速重視の姿勢を見せていたのだが、予選では少しギア比を上げて予選に臨んだ。もし予選でメルセデスに前に行かれても、レース中にオーバーテイクができる仕様に変更したのだ。それでもハミルトンのトラブルなどもあり予選ではフロントロウを独占。これでベッテルの勝利は盤石なものと思われた。 実際レースではタイヤ交換後の5周を除きトップを走り一見楽勝には見えたが、少なくともレッドブルのピットはそう考えていなかった。 まずスタート直後の1コーナーでの順位争いでベッテルは右フロントタイヤを激しくロック。 なんとかトップをキープできたのだが、ここでフロントタイヤにダメージがあった。 レッドブルのマシンはタイヤのグリップを増しコーナーリングスピードを上げるために、他のチームよりもキャンバー角(※)をつける。 確かにコーナーではパフォーマンスが上がるのだが、直線ではインサイドのショルダー部分だけが路面に接触するので、熱を持ちやすくブリスターが発生し、最悪タイヤがバーストすることもある。タイヤロックによる彼の右フロントタイヤのインサイド部分へのダメージは想像より大きく、ピットでは2ストップへの作戦変更も検討された。結果的に22周までタイヤが持ったが、高速のモンツァでは最悪タイヤがバーストしてノーポイントという事態も考えられたので、レッドブルのピットではかなりの緊張があった。 タイヤ交換をして一安心のはずだったが、今度はギアボックスのトラブルに見舞われた。実は彼らはレース前にベッテルとウェバーのギアボックス内のパーツを交換していた。これはギア自体は交換しなかったのでペナルティはなかったのだが、レース中に再び問題が発生していた。実はモンツァはギアボックスに厳しい。シケインで縁石を乗り越え一瞬タイヤが路面を離れて、負荷がかからなくなる。そして一瞬の後タイヤは路面にたたきつけられ高い負荷が突然かかる。これは駆動系への負担が大きい。特に2速と3速の低速ギアでショートシフトを要求されていたので、シケインでの通過で負荷がかかっていたと考えるのが妥当だろう。最終的には心配されたギアボックスも最後までもち勝利を得たが、見た目ほど簡単なレースではなかった。 これらの二つのトラブルを乗り越えて勝利を手にしたベッテル。 これでランキング2位のアロンソとの差を53点差に広げた。 ベッテルが2レース連続リタイヤして、アロンソが2連勝しても逆転できない。 これはベッテルが自滅しない限り逆転はできないということで、数字上は逆転のチャンスが残ってはいるが、ライバル達はベッテルの自滅を待つしかないという困難な状況に追い込まれたことを意味している。
アロンソの二位で盛り上がるティフォッシ達
 ▽最後まで諦めないアロンソ アロンソはベルギーに続いて2位。できることは全てやったがベッテルには届かなかった。 実は予選でのフェラー リはレッドブルの次に速く、実力を出せれば予選の3位は可能だった。ところがチームはマッサのスリップストリームをアロンソに使わせて、コンマ数秒を稼が せようとして失敗し、彼はマッサの後ろの5位からスタートすることになった。もしアロンソが3位からスタートしていれば、抜群のスタートでベッテルをかわ すことも可能だったし、それができなくても2位でベッテルを追いかけることができた。予選終了後、アロンソが激怒したのはそういう背景がある。そして更に 言うと昨年の予選でポールポジション確実な状況で整備ミスによりアンチロールバーにトラブルが発生し、勝利を失った過去もある。 今回、ほとんどのマシンは1ストップ作戦を選ぶと予想され、実際に序盤にトラブルのあったドライバー以外は1ストップを選択。 これによりアロンソは作戦面でベッテルをつけることができなくなった。 そうなれば速いマシンに乗るベッテルが勝つのが当然なのだが、絶対に諦めないのがアロンソというドライバーである。 ア ロンソはベッテルよりも5周遅くタイヤ交換をした。この間新しいタイヤを履くベッテルはアロンソより約1周あたり1秒速く、タイム的に見ればアロンソはす ぐにタイヤ交換した方がよかった。だが同じ作戦を選んだ場合ベッテルを逆転できないことがわかっていたので、遅いことを理解しながらも意図的にタイヤ交換 を遅らせた。もちろんその場合でも2位は確保できることは確認しての作戦。そうすればレース終盤に何かが起こるかもしれないからだ。結果的にはベッテルの ギアボックストラブルは深刻なものではなく、ベッテルの勝利は揺るがなかったのだが、それでも最後まで諦めないアロンソの姿勢には感銘を受ける。 しかもこの作戦、チームから指示ではなく、アロンソ自身が考えて実行した形跡がある。 普通ドライバーはレース中はドライビングに集中しており、そこまで考えられるドライバーは彼以外にはいない。 勝利することはかなわなかったが、それでもアロンソは超一流のドライバーであることを証明した。
マクラーレンは創設50周年を祝った
▽ハミルトン かみ合わない週末 楽 勝に見えたベッテルだったが、この男がいればもっと仕事は困難だった。ハミルトンは予選Q2でコースアウトした際にフロアを傷めた。フロアを傷めると床下 を流れる空気が乱れディフューザーの効率が落ちてダウンフォースが失われる。その為、彼はQ2で脱落してしまう。挽回を目指したレースでも序盤でタイヤが パンクして早々にタイヤ交換を強いられて、予想外の2ストップに見舞われる。しかも無線が通じなくてタイヤ交換のタイミングもサインボードだけでやりとり する苦しい状態。実際に最初のタイヤ交換もピットからの指示にすぐには反応できなかった。12番手スタートで他より1回多いタイヤ交換と苦しい状況では あったが、それでも9位入賞。レース後半のペースはトラック上の誰よりも速く、もし彼が予選に失敗しなければ、ベッテルはもっと苦しいレース展開を強いら れただろう。だがその安定感のなさがハミルトンとベッテル、メルセデスとレッドブルの差である。 ▽大金星 ヒュルケンベルグ 今年のザウバーのマシンで予選3位は不可能である。それを実現するところに彼のポテンシャルの高さが垣間見える。 このモンツァでは極限までダウンフォースを削るセッティングがセオリーである。 これは元々ダウンフォース不足に悩まされていたザウバーには好都合だった。 非常に軽いリアウィングを使用するので、リア周りのエアロバランスが好転したのかもしれないが、本当のところはザウバーのエンジニア達もわからない。 だがダウンフォースが少ないということはドライビングは非常に難しくなる。 そこをヒュルケンベルグは自分のドライビングでミスなくまとめたからこそ予選3位を得られた。 ルーキーとはいえチームメイトのグチエレスが遙か後方であったことが、彼の能力を証明している。 彼が初のポールポジションを獲得した雨のブラジルGPも、路面はスリッピーでドライビングは非常難しい状況だった。 つまり彼は難しいコンディションで速く走れる、高い能力を持っていると考えていいだろう。 決勝は残念ながらスタートでマッサとアロンソに前に行かれて5位に落ち、そのまま5位フィニッシュ。 だが4位マッサとは1秒差、3位ウェバーとは4秒差、2位アロンソとの差は5秒である。 これはドライブするマシンがザウバーである事を考えると奇跡的なタイム差である。 彼がフェラーリに行けるかどうかは、ライコネンの契約次第ではあるが、来年も楽しみなドライバーではある。 (この後、ライコネンのフェラーリとの契約が発表され、彼のフェラーリ入りは今年も流れた)

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