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冷たい戦争 アロンソ対モンテツェモロ

アロンソとフェラーリの蜜月時代は終わりを告げた。どんなに仲のいいカップルでも、ケンカの一つや二つはする。今回、その原因を作ったのはアロンソである。だがケンカをした時に感情的になると取り返しのつかないことになり、後悔することになる。 フェラーリに移籍してきて4年目を迎えるアロンソ。過去3年間のうち二度は最終戦までチャンピオンを争った。結果的にチャンピオンは逃したが、2010年はチームの判断ミスにより間違ったタイミングでタイヤ交換し、ペトロフの後ろで沈んだ。昨年は大量リードしつつも、アロンソには責任のない接触によりシーズン終盤のベルギーと日本GPで0ポイント。それさえなければアロンソがチャンピオンだった。 しかもアロンソがドライブしていたマシンはよくて2番目、大半の期間は3番手か4番手の競争力しかもたないマシンでのランキング2位だから、それは見事であるといわなければならない。今年のアロンソの予選最高順位をご存じだろうか。3位である。フロントロウは一度もない。しかも第5戦以降の最高予選順位はなんと5位でしかない。これでチャンピオンを争っていたのだから、人間業とは思えない。実際アロンソはランキング2位にいるのは奇跡的だと述べている。同意である。 そんな状況の中で、オペレーションミスなどが出たタイミングでアロンソが怒りを爆発。チームを批判してしまった。フェラーリにおいてチーム批判はタブーである。ドライバーのためにマシンがあるのではなく、マシンのためにドライバーがある哲学のフェラーリにおいて、チーム批判は許されない。 ただアロンソの立場に立てば、批判の一つもいいたくもなる。彼が相手にしているのはもはや歴史に残ることが確実視されるセバスチャン・ベッテルである。しかも彼のマシンは確実にこの時代を代表するマシンになる名車である。彼らにアロンソは単独で戦っているようなもので、なんとか一つでも順位を上げようとしている時にミスが出れば、怒りたくなる。これまでアロンソはマシンが走らない時も、いつも我々は進歩する必要があるといい、決してチームを批判しなかった。フェラーリでチーム批判をするとマスコミが騒いで、お家騒動に発展しスケープゴートにされる人間がでてくる。 4年間たまりにたまった不満を話してしまったアロンソを責める気にはなれない。 ただモンテツェモロの気持ちもわかる。どんなスタードライバーであろうともチーム批判をした人間をおとがめなしにしてしまうと後々問題になる。だからアロンソに厳しく接したに違いない。チーム批判をする人間に居場所はいないと。ドライバーの契約書には、チームを批判しないという条項が入っていることが多い。だから最近のドライバーは公式のインタビューでは、当たり障りのないことしか言わない、実に退屈なインタビューが増えている。 アロンソの発言も契約違反にあたる可能性があった。そうなるとアロンソは黙るしかない。今から競争力のあるシートを探すことは難しいからだ。 ただこれで終われば良かった。一ヶ月もすれば誰もが忘れて平穏な日々に戻っただろう。だがモンテツェモロの気持ちは収まらなかった。そしてフェラーリはライコネンと契約することになる。これは明らかにアロンソに対する対抗措置である。それまでであればアロンソの意向に添わないドライバーと契約することはなかっただろう。 アロンソがいなくなった時のことを考えて、実力のあるドライバーを獲得する。これはシューマッハー引退時と同じ状況である。そして同じような状況でキミは再び跳ね馬の門を叩いた。 ただこれは企業のトップであれば普通のことである。トップたるもの、いつも最悪の場合を考えておかなければならない。アロンソがいなくなってから、後任を探してもすぐに見つかるわけではない。それなら市場にいいドライバーがいる時に契約しようと考えることは、何の不思議もない。 一度生まれた不信感はなかなか消えない。フェラーリはアロンソにもう王様ではないのだと思い知らせるために、ライコネンと契約した。次はアロンソの番である。今はいいシートの空きがない。であるならばフェラーリに残るのが最善の策である。マクラーレンを追われて、競争力のないマシンで走った悲哀はもう味わいたくはない。彼はこれから次のシートを探すために、動き出す。それがどこになるのかはわからないが、マクラーレンに戻っても驚かない。F1では目的が同じであれば、性格や相性など関係がない。 来年、フェラーリが競争力のあるマシンを提供できれば問題はない。だがそうでなければ内紛が起きる可能性が高い。冷たい戦争が熱い戦争に変わるのである。 そうなれば、移籍市場の主役がアロンソになるのは間違いがない。彼が行けるチームは限られている。来年のシート争いも激しいが、再来年に向けてのシート獲得競争も早々とスタートしそうな気配である。

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