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2013 総集編 技術編2 ピレリタイヤに揺れたシーズン

今シーズンの始めからピレリのタイヤはおかしかった。彼らは今年のタイヤ構造にスチールベルトを採用した。昨年まではケブラーベルトを使用してタイヤの剛性を確保していた。彼らがスチールベルトを採用したのは、タイヤの剛性を下げてタイヤをたわみやすくしてグリップを増やすためである。 だがバーレーンGPではタイヤトレッドが剥離するトラブルが発生。ピレリは縁石で傷がついたのが理由と発表したが、タイヤに傷がつけば普通はパンクかバーストする。トレッドが剥離するのは明らかにタイヤ剛性が不足していて、タイヤに強い振動が伝わった時に、共振がおさまらずにタイヤトレッドがベルトから剥離したのが本当の原因だろう。だからタイヤに厳しい他のサーキット、シルバーストーンでのタイヤが心配された。 そしてシルバーストーンでのイギリスGPでその心配は実現した。トップを走るハミルトンのタイヤがバーストすると、次々にタイヤがバースト。危険でレースの続行が危ぶまれる状況となった。ここでの原因をピレリは以下のように説明した。 1.装着するタイヤを左右に入れ替えていた 2.タイヤの空気圧が低い 3.極端なキャンバー角 4.攻撃的なシルバーストーンの縁石 以上四つがタイヤが破壊された原因であり、タイヤには問題がないというとがピレリの見解である。 確かにこれらの要因が重なりタイヤがバーストしたのは間違いがないだろう。だが通常は空気圧が少し低くても、キャンバー角がきつくても余裕を持ってタイヤが壊れないようにするのが、良識的なタイヤ設計というものである。 関連記事:ピレリタイヤは危険なのか、安全なのか 理由はともかくピレリはハンガリーGPから2012年の構造に今年のコンパウンドを接着した新しいタイヤを持ち込んだ。これはスチールベルトからケブラーベルトに変更されており、より高いタイヤ剛性が確保されていた。その後は同様のトラブルが出なかったことからも、シーズン前半のトラブルの原因が外部ではなくタイヤ自体にあったことが推測できる。 このタイヤの変更では笑ったチームやドライバーと泣いたチームやドライバーに別れた。特に有利になったのはレッドブルである。以前の剛性不足のタイヤでは高速コーナーなどで強い負荷を長時間かけ続けるとタイヤがすぐにダメになった。だから彼らは持ち前のスピードをセーブして走らざるをえなかった。だがタイヤが変更されたことにより、彼らはそのスピードを思う存分活かすことができるようになった。もしタイヤの変更がされていなければ、ベッテルが9連勝できていたかどうかは、疑わしい。 またタイヤの変更に伴い指定空気圧やキャンバー角の制限も厳しくなった。通常はこれらの設定を変更することによりセットアップを変更するのだが、それができなくなった。ロータスの2人のドライバーの明暗はこうして分かれた。新しいタイヤがあうグロージャンは、シーズン終盤で表彰台の常連になったが、フロントタイヤのグリップ感がなくなったライコネンは自信を持って攻めることができずに、予選でグロージャンの後ろになることが多くなった。これはタイヤの仕様変更後に顕著なので、ドライバーというよりはタイヤが原因である。 ただ全てをピレリタイヤの変更にするのも間違っている。フォースインディアなどは、シーズン後半の失速をタイヤのせいにしているが、彼らは5月の時点で今年の開発を中止しているので、タイヤが変わらなくても失速していたのは間違いない。しかもザウバーが開発を成功させてきたので、対照的な結果が目立つだけである。 フェラーリも同じである。彼らも6月に空力開発を大失敗して、競争力を失ったのが痛かった。タイヤの変更はあまり関与していない。なぜならシーズン前半にタイヤをうまく使いこなせていたロータスは後半も速かった。 またメルセデスが秘密のタイヤテストをして、有利になったと言われたが、その効果は限定的であると考えている。確かにテストの後のモナコGPで勝利しているが、これは例外的にタイヤに優しいサーキットなので、テストの有無は関係が無い。またイギリスGPでのニコの勝利はベッテルがトラブルで止まったからである。ハンガリーGPでのハミルトンの勝利は実力の勝利であるが、ここにきてやっとメルセデスはタイヤ温度管理ができるようになった。ただそれでも全てのコンディションではなかったのだが。

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