F1 ニュース&コラム Passion

アロンソのインディ500参戦はマクラーレン終わりの始まり

フェルナンド・アロンソのインディ500参戦が発表された。これで彼は最近ではあまり類を見ない現役F1レーサーのインディ500ドライバーとなる。 最初、このニュースを英AutoSportsのサイトで見たとき、これを記事にするのをためらってしまった。エイプリール・フールだと思ったからだ。こんな出来の良い嘘はないよなと思いつつ、カレンダーを見ると4月1日はとうにすぎていた。 その後、日本語のサイトでもこの続報が届けられて、これは本当なんだと初めて思った。それくらいはこれはあり得ない出来事である。 現役のF1ドライバーがインディ500に参加するだけでも普通はあり得ない。ご存じの通りインディ500はオーバルコースであり、とても特殊なレイアウトである。そして高速のオーバルコースは一度クラッシュした場合のダメージがとても大きい。そんなレースにF1チームが現役の契約ドライバーの参戦を許すなんて、普通はありえない。しかもそのドライバーはチームのエースドライバーであるフェルナンド・アロンソである。いくらなんでもこれは非常識な話である。 しかもそのインディ500とモナコGPの開催日が同じ日で、モナコGPを欠場してインディ500に参加するというのである。チーム首脳陣は何を考えているのであろうか。 アロンソはこの計画はロン・デニスがいたら実現していなかったと言っているが、他のどのチーム代表でもこんな計画を許すはずがない。確かに大昔は現役F1ドライバーがインディ500に参加していた例はあるが、当時はドライバーが今ほど大きな金額をもらっていなかったし、F1のレース数も今より少なく、その多くはヨーロッパで開催されていた。 だが今のF1レースは違う。ドライバーは巨額なお金をF1をドライブすることで得ており、昔のように半分アマチュアのようなチームではない。年間100億円以上を投資して戦うビッグビジネスである。そしてチーム代表はそのチームの成績を少しでも向上させるのが主な仕事である。 そんなチーム代表がエースドライバーをモナコGPがあるにも関わらず参加させるというのは、ほとんど職場放棄に等しい行動である。 もちろんこの行動がいっこうに上向かないマクラーレン・ホンダのパフォーマンスに嫌気の差したアロンソを引き留める為のものであるかもしれないし、来年度以降の契約更新を見据えたものなのかもしれない。だがそれにしてもこのような話は少なくとも一流のF1チームであってはならない。 私はアロンソのインディ500参戦がダメだと言っているわけではない。個人的にはとても興味深いし、今年のインディ500がとても楽しみではある。そしてジェンソン・バトンの復帰も心からうれしいと思う。だが少なくともワークスエンジンを搭載しているチームがすることではない。 しかもアロンソが欠場するモナコGPはカレンダーの中でもっともパワー差が出にくいサーキットであり、マクラーレン・ホンダにもチャンスがあるコースである。そのコースをエース・ドライバーに走らせず、いくら伝統のあるインディ500をホンダエンジン搭載車で戦うとはいえ、それを許すチームを理解することはできない。 ホンダはこの件に関して何も意見を言わなかったのであろうか。確かにドライバーをどうするかに関してはチームの管理事項である。だがホンダはマクラーレンに資金援助をしているのであれば、こんな行動を許してはいけない。ホンダはこのプロジェクトにいくら投資しているのか。 組織というのはトップがダメになると、急速に崩壊する。そう考えるとこのアロンソのインディ500参戦は、凋落の著しいマクラーレンの終わりの始まりになるのかもしれない。