2006 Rd.2 マレーシアGP観戦記
ルノーのジャンカルロ・フィジケラがほぼ一年ぶりの優勝を、ポール・ツゥ・ウィンで飾った。
ポール・ポジションから飛び出したフィジケラは、ピットストップ時を除き最後まで首位をキープして優勝。
素晴らしい走りだった。
だがフィジケラはこの優勝を手放しでは喜べない。
理由は三つある。
まず、チームメイトのアロンソが燃料を多く積んでしまったこと。
アロンソは給油リグの不調により、最終予選前に、予定より多くの燃料を積んでしまった。
通常、予選の第三ピリオド前に決勝スタート時の燃料を積み、予選終了後に走って減った分の燃料を補充することが認められている。
だが、アロンソはこの補充をしないほど多くの燃料を積んでいた。
決勝レース前に燃料を追加しないほど、燃料を積んでいればアロンソの予選8位も納得だ。
(推測だがアロンソは予選開始時、フィジケラの倍ほどの燃料を搭載していた模様だ)
アロンソは燃料の重い序盤にフィジケラに引き離され、最後までその差を埋めることができなかった。
アロンソの最初のピットインはほぼレース半ばだったので、2ストップとしてはアロンソがいかに多くの燃料を積んでいたのかわかるだろう。
アロンソとしては思いがけないトラブルで、マレーシアGPを戦わずして失った。。
だが、アロンソはこのハンディ・キャップをモノともせず最終的には2位でフィニッシュ。
貴重な8ポイントをゲットした。
とくに圧巻だったのがスタート直後のオーバーテイク。
スタートでマクラーレン二台を抜き去ったアロンソは、そのまま予選3位、4位のウィリアムズ二台をアウトから鮮やかに抜き去った。
これはウィリアムズのニコ・ロズベルグがウェバーを意識してコーナーのイン側からアプローチして早めのブレーキングをした為だが、それにしても重いマシンでブレーキをロックもさせず、抜き去るその技術はさすがにチャンピオン、と思わせるものがあった。
ライコネンが1周目にリタイヤしたこともフィジケラにとってはラッキーだった。
ライコネンはクリエンにリアをヒットされ、リア部分が壊れ、バランスを崩してコースアウト。
不運なリタイヤとなってしまった。
フィジケラにとって三番目の幸運はミハエル・シューマッハーがエンジン交換をして、10番手降格の14位スタートになったこと。
ミハエル・シューマッハーは結局、6位でフィニッシュするのがやっと。
しかも二度のエンジン交換で最後尾スタートになったマッサの後塵を拝することになってしまった。
これはミハエル・シューマッハーにとっては極めて珍しいことだ。
最後までマッサを追いかけたミハエル・シューマッハーだったが結局、一度も仕掛けることもなくマッサの直後でフィニッシュ。
チームメイトなのだから、次のレースに向けてエンジンを温存した方がいいのではと私などは思ってしまうのだが、ミハエルにこの理屈は通用しない。
この数年、フェラーリの信頼性、特にエンジンの信頼性はトップレベルだったので、今回これほどフェラーリエンジンが壊れたことには驚いた。
フェラーリはこの二台以外に、クルサードのエンジンも壊れた。
今回は新型V8エンジンで初の2レース目ということと、高温のマレーシアGPということでエンジントラブルが続出。
フェラーリ以外にもコスワース、BMW、ホンダと多くのエンジンがトラブルに見舞われた。
特に終盤まで5位を走っていたハイドフェルドがリタイヤのは惜しかった。
今後はコンディションも楽になるし、開発も進むので改良されてくるとは思われるが、シーズン序盤にエンジン・トラブルが連発するチームはチャンピオン争いから脱落しかねない。
なにしろルノーは昨年同様の信頼性を見せており、シーズン序盤に連勝し、そのリードを守りきるというパターンが繰り返される予感があるからだ。
昨年、エンジンの信頼性の低かったマクレーレン・メルセデスは、モントーヤがトラブルがなく完走した。
ライコネンがリタイヤし表彰台を逃したマクレーレン・メルセデスにとっては唯一の慰め。
フィジケラがこの状況を最大限に利用し勝ったことは素晴らしいが、チャンピオンを狙うのであれば、この三強が健在のレースで勝たなくてはいけない。
昨年、開幕戦の勝利もアロンソが予選で雨にたたられ後方からスタートしたことに忘れてはいけない。
ただ、このレースの彼の幸運は最近亡くなった彼の友人がもたらしてくれたのかもしれない。
今回のMIP(Most Impressive Driver)は最後尾から追い上げ、なおかつミハエル・シューマッハーを上回ったフェリペ・マッサに決まり。
バリチェロとはひと味違う走りを見せてくれそうだ。
▽ホンダ陣営
ホンダは一発のタイムは出るが、ロングランでのタイムが安定しない。
バトンは序盤でアロンソに対して大きなリードを築いたが、これを守りきれずに3位でフィニッシュ。
今シーズン初の表彰台だが、ホンダとバトンは満足できない結果だろう。
ミハエルとライコネンがいないという幸運もあった。
今年もホンダはタイヤの使い方が勝負のポイントになりそうだ。
ただ、ホンダという名前にはなったが元BARがシーズン途中にサスペンションを大改造してこられるとは思えないので、優勝するには幸運が必要だろう。
スーパーアグリF1は長足の進歩を見せた。
予選で佐藤琢磨はモンテイロと1.2秒差。
決勝レースでもモンテイロと激しいバトルを演じ、遅いマシンでもファイティング・スピリットを見せてくれた。
トップ独走のレースだったとはいえ、ほぼ最後尾に位置するバトルをこれだけTVが写すのも異例だろう。
何しろ4年落ちのマシンだから、バトルすること自体が奇跡的なことだ。
この調子だと意外と早く、ミッドランドを凌駕する日も訪れそうだ。
▽ウィリアムズの挑戦
ウィリアムズのニコ・ロズベルグがまた見せてくれた。
デビュー二戦目で予選3位をゲット。
ライコネンやアロンソが燃料を積んでいたとしてもこの結果はすごい。
何よりチームメイトのウェバーより速いのがすばらしい。
ウェバーと言えば今までチームメイトより必ず速く、チームメイトキラーの異名もあるほどのドライバー。
全く同じ条件のチームメイトを上回るのだから、驚きだ。
レースではエンジントラブルでリタイヤしてしまった。
第一戦の終盤にファーステストラップをたたき出し、エンジンを酷使したことも関係あるかもしれないが、これは問題ではない。
F1ドライバーはとにかく速くなくてはいけない。
経験は後から、身につけることができるが、速さを後で身につけることは容易ではない。
そしてニコ・ロズベルグにはその速さがある。
今後も楽しみだ。
それにしても完全にプライベート・チームとなったウィリアムズだがここまでの戦いぶりは素晴らしい。
何とかシーズン前半で結果を出して、大きなスポンサーを獲得してほしい。
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私は書く、従って私は存在している
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