レッドブルの苦悩
レッドブルはプレシーズンテストでいいところがなかった。開幕戦を約1週間後に控えて、彼らの問題は深刻の度合いを深めている。
レッドブルはトロロッソにブレーキバイワイヤーに関して、助言を求めたと伝えられている。これは別にトロロッソが優れたブレーキバイワイヤーのシステムを持っているからではなく、単純にレッドブルはブレーキバイワイヤーのテストまで手が回らなかったと考えた方がいい。彼らはパワーユニットの問題に集中し、その他の部分についてはほとんど手が付けられていない。
今年のF1はより多くのエネルギー回収が認められている。その為、減速する際のエネルギー回収時に、より多くの負荷が後輪にかかり、ドライバーによるブレーキングの調整が難しくなっている。その為にFIAはブレーキバイワイヤー、つまりコンピュータによるブレーキ制御を認めた。だがこれは非常に繊細な分野でドライバーによっても調整が必要だし、そもそもどの程度ブレーキングさせるのが適切なのかを決めるのは難しい。
それには走行距離が必要だし、何度も挑戦し失敗する必要がある。レッドブルは周回数が上位陣に比べて三分の一くらいだったし、その周回数もほとんどレーシングスピードで走れていない。それではブレーキバイワイヤーの調整などできない。
またターボラグに苦しんでいるという報道もある。だがこれはターボが問題ではないと思う。今年のターボは羽の部分に小型のモーターが着いており、排気エネルギーが少ない時でも、羽を回してターボラグを少なくすることができる。また今年はモーターによるアシストが認められている。彼らはそのモーターによるアシストを使えていないと思われる。これもブレーキバイワイヤーと同じで、どういう状況でどの程度アシストするかが、非常に重要になる。モーターの場合、エンジンと違い急激にトルクが立ち上がる。だからターボラグを補完するツールとしては最適なのだが、あまりにもアシストを強くするとタイヤが滑る。当然タイヤの寿命は短くなるし、最悪はスピンする。
この部分もレッドブルはまだ手つかずである。つまり彼らの問題はパワーユニットの問題だけでなく、他に多くの問題を抱えている。当然、限られたプレシーズンテストでこれらの協調制御を完璧に仕上げたチームはいない。だが走行距離が多ければ多いほど、より良い状態であるのは間違いない。
もちろんレッドブルのチームが優秀で、キャッチアップしてくることは間違いがない。だがシーズンが始まれば無制限に走るわけにもいかない。そういう意味では彼らの問題解決能力に疑いはないが、解決するには時間が必要になる。
レッドブルの苦戦は開幕してからも、しばらく続きそうである。
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