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ハミルトン 僅差の圧勝 アブダビGP観戦記

今回もハミルトンがライバルを圧倒したレースだった。2位ベッテルとの差は僅かに2.5秒だったがハミルトンとメルセデスの組み合わせは他のどのライバルをも上回っていた。
 
レース前の予想はワンストップ。上位陣で最初にタイヤ交換したのはハミルトンだった。55周のレースの7周目にピットイン。これはヒュルケンベルグのクラッシュによりセーフティカーが出たタイミングだった。
 
ワンストップにしてはかなり早めのタイヤ交換だったが、交換したスーパーソフトはほぼレース距離を走れる耐久性があったので、チームはこのタイミングでのタイヤ交換を決断。すでに後続グループとの差も大きく、中団グループの前で戻れることもこの判断をした理由のひとつとなった。
 
セーフティカー中のタイヤ交換は約10秒ほどタイムロスを削減できるので、これでハミルトンは有利に立つことができた。実際、ライバルがタイヤ交換を終えた後には、ハミルトンは難なくトップに戻った。
 
とはいえレース終盤にフレッシュなタイヤを履いたライバル勢の攻勢は心配だったが、それも杞憂に終わった。残り5周でハミルトンとの差を5秒以下に削ってきたベッテルだったがそこからハミルトンが反撃に出た。ハミルトンはうまくペースをコントロールし50周近く走ったタイヤでも、8周も若いタイヤを履くベッテルより速く走り差を広げた。最後はペースを落として差は縮まったが、余裕のある勝利だった。
 
今年のハミルトンを見ていると、若い時みたいに速さで押し切るレースだけでなく、今回のようなタイヤを温存するレースもできるようになり、レース展開の引き出しが他のドライバーに比べて多い。
 
このハミルトンの能力とメルセデスの的確な作戦判断が今年のチャンピオン獲得の大きな力になった。逆にフェラーリは判断ミスが多く、それをカバーするべくベッテルがリスクを冒し自滅するケースが多かった。
 
だが2014年に始まった新フォーマットのF1の中で最高に面白いシーズンだったのは間違いない。
 
 
今年は決してメルセデスが最速だったわけではなく、フェラーリが優勢だったレースの方が多かったくらいだ。ただメルセデスはフェラーリ優勢のレースでも確実にポイントを獲得し、抜群の作戦判断で時には勝ってみせた。
 
特に夏休みを挟んだドイツ、ハンガリー、モンツァ、シンガポールとフェラーリ絶対有利のレースに連勝したのはその象徴だった。
 
だがフェラーリとメルセデスの差は確実に少なくなっているし、来年ホンダを搭載するレッドブルもこの争いに絡んでくればもっとエキサイティングなシーズンになることは間違いない。
 
ルクレールやガスリーの移籍もあり、はやくも来シーズンが楽しみである。
 
▽最終戦も入賞を逃したトロロッソ・ホンダ
 
実り多かった今シーズン最終戦を入賞で飾りたかったトロロッソ・ホンダだったが、今回もまたポイントを獲得することはなかった。
 
しかもガスリーはエンジンからのオイル漏れで白煙を吹くリタイヤ。大きなトラブルではないものの、そのまま走り切れていれば入賞の可能性が高かっただけに、残念な結果である。
 
予選のQ1でもQ2進出がほぼ確実なアタックをしていたガスリーに最終コーナーでPUにトラブルが出てQ1脱落。これはエンジンが壊れていた。初日にはホンダとは関係ないが、ギアボックスからのオイル漏れが出たり、シーズンを通じて見られていたトロロッソ・ホンダ全体のチーム力が表れたレースとなった。
 
結局、今シーズンはザウバーに逆転されてコンストラクターズ選手権9位終わった。それでも今シーズンがトロロットとホンダにとって実りの多かったことは間違いない。ただホンダのPUがまだメルセデスやフェラーリに比べて劣っていることは間違いないし、信頼性の面でも不安はある。トロロッソにとっても初めてのワークスPUを搭載したシーズンだったが、チーム力に限界があり結果としては大きなものは残せなかった。
 
それでも昨シーズンまでとは違い、トロロッソとホンダはひとつのチームとして、上を目指し成長を遂げてきた。そこからガスリーが活躍し、来年はレッドブルへと移籍する。ホンダのPUもいよいよトップチームであるレッドブルに搭載となる。
 
まだまだホンダのPUがライバルに比べて劣っていることは間違いがなく、レッドブルに搭載したからといって簡単に勝てるとは思えない。だが少なくとも来シーズン、レッドブル・ホンダが勝てるチャンスは何回かあるだろう。
 
そこでチャンスをつかめるかどうかはホンダにかかっている。レッドブル・ルノーが上げた4勝を上回れなければ、レッドブルから見ればホンダへのスイッチは失敗と言うことになる。
 
期待も大きいが不安もある来シーンのホンダになるが、それでも4年目が終わってようやくここまで来たかと思うと感慨深い。