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チャンピオンの実力 イギリスGP観戦記

2019 British Grand Prix, Saturday – LAT Images

 

▽ボッタスとハミルトンの明暗
このレース、流れからするとボッタスが勝ってもおかしくはなかった。
予選でもハミルトンを1000秒の6という僅差で上回りポールポジションを獲得。スタートも決めレースをリード。その後ハミルトンの猛アタックも一度抜かれたが、再度抜き返し意地を見せて再リードを奪った。その後、ハミルトンも1秒前後で離されはしなかったが、レースをコントロールしていたのはボッタスだった。
 
それが動いたのが16周目にボッタスがタイヤ交換の為にピットイン。シルバーストーンはご存じの通りタイヤに厳しいのでレース前の予想は2ストップだった。ボッタスのタイヤ交換はこの3周前にタイヤ交換をすませていた後ろを走るフェルスタッペンとルクレールにアンダーカットされない為だった。
 
このタイヤ交換は2ストップを前提に考えると想定範囲内であった。レース前にメルセデスは二台のタイヤ種類を違えることを予定していた。ボッタスは1回目はミディアム、ハミルトンはハードに帰る予定だった。第二スティントでハードを履いても予測としては二回ストップが必要な計算だった。
 

2019 British Grand Prix, Sunday – LAT Images

 
だからハミルトンは最初のタイヤ交換をできるだけ遅らせて、2回目のタイヤ交換を遅らせて最後にソフトを履いてボッタスにアタックするつもりだった。だからハミルトンは第一スティントを長く走りたかった。そんなハミルトンに幸運が訪れる。セーフティカーの登場である。
 
この時タイヤ交換したハミルトンはボッタスの前で戻ることに成功した。だがそれでも二人とももう一度タイヤ交換する必要があると誰もが思った。メルセデスもハミルトンもである。ボッタスはミディアムからミディアムにつないだからルール上必ずもう一回タイヤ交換の必要がある。だがハミルトンもこの時点ではもう一度タイヤ交換するつもりだった。
 
そして実際、残り5周でハミルトンにはピットインの指示が出た。だがハミルトンはこれを拒否した。なぜならタイヤの状態がとてもいいと感じていて、最後まで行けると考えたからである。そして彼は32周をハードで走りきるという予測外の走りも見せ、しかも最終ラップにボッタスが最後のタイヤ交換後にソフトタイヤ(中古だったけど)で記録したファステストラップをひっくり返し、26ポイントを得るという常識外れのことをやってのけたのである。
 
これがワールドチャンピオンの底力と言うべきだろう。ボッタスの走りは素晴らしかった。彼が勝ってもおかしくはなかった。しかし今日も勝ったのはハミルトンであった。
 
 
▽表彰台を逃したが問題ないレッドブル・ホンダ
オーストリアGPで初優勝したフェルスタッペン、今回も表彰台確実だったがベッテルに後ろから追突されて表彰台を逃した。
 
だがまったく下を向く必要はない。もともとシルバーストーンはメルセデスが圧倒的に有利とみられていたサーキットである。ところが予選でフェルスタッペンは4位だったのだが、ポールのボッタス差は僅かに0.183秒差であった。しかもこの予選でフェルスタッペンはターボの応答性が悪いと訴えていたにも関わらずここまでメルセデスに迫ったことは、驚きである。
 
もしターボの応答性が通常であったなら、フェルスタッペンがどこまでメルセデスに迫ることができたかは、とても興味深い。レースでもメルセデスに大きく離されることがなかった。だからこそボッタスはフェルスタッペンをカバする為に早いタイヤ交換を強いられたのである。もしフェルスタッペンがベッテルに追突されなければ、彼は2位も可能な走りだった。
 
シルバーストーンでのこの善戦かなりの驚きである。このパフォーマンスが続けられれば、毎レースメルセデスに迫ることが可能である。後半戦が楽しみになってきた。