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混戦を制した未来のチャンピオン ドイツGP観戦記

天候がめまぐるしく変わる中で、完璧な作戦をできたチームがなかったので、変化するコンディションに対応できたドライバーが上位に入りました。
 
まず予選二位のフェルスタッペンがスタートでホイールスピンして四位に落ちます。これはエンジンのマッピングが濡れた路面に最適化されてなかったようです。つまり路面が濡れていたのに、スタート用のマッピングが想定よりもパワーが出るように設定されていたのでしょう。
 
レースは雨で路面が濡れていて、ペースカースタートになります。三周してレーススタートしますが、その頃には路面がかなり乾いていて、多くのマシンがインターミディエイトタイヤに交換します。
 
その後、レースの前半はメルセデスが1-2で、地元のレースで彼らのモータースポーツ125周年を祝うGPになりそうな予感でした。
 
 
 
大きくレースが動いたのが28周目。これまで路面状況が改善されていたのに、急に雨が降り始めました。その周にソフトタイヤに交換していたハミルトンがセーフティカー中にもかかわらず、最終コーナー手前でクラッシュ。フロントウイングを壊したものの、幸いぶつけたフロントサスペンションには異常がなく、コースを横切りピットへ向かうハミルトン。
 
ところがこの時、メルセデスのピットではハミルトンの後ろを走るボッタスのタイヤ交換に備えてスタンバイしていました。そこにハミルトンが急に入ってきたからさあ大変。大混乱に陥ってしまった。持ってくるタイヤの種類を間違えたり、ボッタスのフロントウイングを持ってきたりで、作業に50秒もかかってしまった。
 
しかもこの時ボッタスはステイアウトして、次の周にタイヤ交換したことにより、順位を落とすというおまけもついた。
 
この時、メルセデスがソフトタイヤに交換した事を批判されているが、この時の雨は誰にも予測できてなかった。というのもこの数周前にフェルスタッペンはミディアムに交換している。彼らがミディアムに交換したのは、このタイヤならレースを最後まで走れるからである。つまりレッドブルもこれ以降は雨が降らないと考えていたことになる。
 
実際にメルセデスもこの前にボッタスにミディアムを履かせている。ハミルトンがソフトを選んだのは、彼がミディアムはこのコンディションでは硬すぎると判断したからである。
 
実際、ミディアムを履いたフェルスタッペンはタイヤに熱が入らずにスピンしているので、ハミルトンの判断は正しかった。
 

2019 German Grand Prix, Sunday – LAT Images

 
ところが予想がはずれ雨が降り、ハミルトンがクラッシュしてレースは大きく動いた。ここでハミルトンを責めるのは簡単だが、この前にはルクレールが同じところでクラッシュしており、その為にセーフティカーが出ていた。同じところでクラッシュしたハミルトンは幸運にもレースは続行することができた。
 
昨年のベッテルを思い出してもらいたいが、F1マシンは軽くてパワーがあるので簡単にコントロールを失ってしまう。だからクラッシュしたからといっても、一概にドライバーばかりを責めることもできない。特にこのように雨が降る中ドライタイヤで走るのはかなり難しい。
 
そんな中でもスピンはしたが、コントロールして戻ってきたフェルスタッペンと安定した走りを見せていたベッテルが1-2だったのは偶然ではない。
 
この時、コースを横切りピットに向かったハミルトンは正規のピット入り口から入らなかったので、5秒ストップのペナルティを受けた。この後、路面が乾いてきてタイヤ交換のタイミングがあったので、この時に5秒ペナルティを消化しておけば順位のロスは最小限で済んだのだが、引っ張ってセーフティカー明けにタイヤ交換した時に消化してしまった。当然セーフティカー明けには、各車の間隔が狭まっており。これでハミルトンは一気に順位を落とし最後尾まで落ちた。それでも最後にスパートして2ポイント得るのだから、しぶといというか、やはりすごいドライバーである。
 
 
トップに立った後のフェルスタッペンは、安定しており、全く危ない部分がなかった。昨年までの彼とは別人のようで、速くて安定している走りは、もう完全にチャンピオンの風格さえ漂わせている。
 
レッドブル側のマシンをかなり改良されてきており、それが今回の予選二位にも表れている。実力でメルセデスの一角を崩せるようになるとは開幕当時は予想もできなかった。
 
この調子でいけばハンガリーも期待できるし、シーズン終盤に向けて互角に渡り合えるかもしれない。