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モンスター誕生の予感 ハンガリーGP観戦記

 
すごいレースでしたね。夢のようなレースでした。勝ったハミルトンもすごいけど、破れたフェルスタッペンもすごかった。現チャンピオンと未来のチャンピオンのガチバトル。素晴らしいレースとなりました。
 
実力でポールをゲットしたフェルスタッペン。ついにレッドブルホンダはここまで来ました。パワーの影響力が比較的低いサーキットとはいえ、トラブルなしのメルセデスを下してのポールポジションには価値があります。
 
スタートでもポジションを守ったフェルスタッペン。追い抜きの難しいハンガロリンクだけに優位にレースを進めます。予選三位からスタートしたハミルトンがフェルスタッペンを追い立てます。序盤はフェルスタッペンが差を広げたのですが、すぐに逆襲してフェルスタッペンとの差を約1秒につけるハミルトン。
 
その為、フェルスタッペンはハミルトンのアンダーカットを避ける為に、ハミルトンよりも先、25周目にタイヤ交換せざるを得ませんでした。ハミルトンは引っ張りましたが、逆転できないと見ると6周後にタイヤ交換。2人ともハードタイヤに交換したので、これでフィニッシュまで走る作戦でした。
 
 
 
 
ハミルトンはすぐに追いつき、激しくフェルスタッペンを攻め立てます。ところがここはハンガロリンク、追い抜きは容易ではない。明らかにハミルトンの方が速いが、抜けない。するとなんとメルセデスは48周目に2度目のタイヤ交換を実行。
 
実はこの時、3位のフェラーリは40秒も後方にいて、ハミルトンは順位を失う事なくタイヤ交換できる、フリーストップの状態でした。
 
ここでフェルスタッペンがすぐにタイヤ交換すればよかったのですが、ハミルトンがアウトラップでプッシュして差を19秒までに縮めます。これでフェルスタッペンは次の周にタイヤ交換すれば、ハミルトンに逆転される為、タイヤ交換できない状況となりました。
 
そこからのハミルトンはすごかった。ベストラップを連覇しながらフェルスタッペンとの差を見る見るうちに縮めます。
 
一方のフェルスタッペンは残り10周を切ったあたりから、もうタイヤが終わっていて、マシンをコースに残すだけで精一杯な状態。これではフェルスタッペンもなすすべもなくハミルトンに抜かれてしまいます。
 
もしフェルスタッペンが第一スティントでハミルトンに2秒以上差をつけていられれば、先に入る必要もなくタイヤがフィニッシュ前に終わることもなかったでしょう。
 

GP UNGHERIA F1/2019 – SABATO 03/08/2019
credit: @Scuderia Ferrari Press Office

さらにフェラーリがあまりにも遅くて、ハミルトンがフリーストップできなければ、ハミルトンはツーストップをしなかったでしょう。フェラーリは結局、ハミルトンより約1分も離されてフィニッシュします。
 
ただフェラーリがPUやタイヤを温存する為に意図的にペースを落としたわけではなさそうです。ベッテルは全力でプッシュしたが、今日はペースがなかったと話しています。確かにここはフェラーリの得意なサーキットとは言えませんが、1分も差をつけられると、このレースに限って言うとメルセデスとレッドブルの二強でしたね。
 
予選ではメルセデスより速かったレッドブルホンダでしたが、レースコンディションではメルセデスの方が速かったのは間違いなく、破れたとはいえ、できることは全てやり尽くした感じはあります。
 
それにしても久しぶりにハミルトンとメルセデスが本気を出したのを見ました。追いついたと思ったら、まだポケットにマージンを持っていたメルセデス。さすがとしか言いようがありません。
 

2019 Hungarian Grand Prix, Sunday – LAT Images

 
もっとも彼らとてこの作戦がここまでうまくいくかどうか、わからなかったでしょう。メルセデスのレース前の作戦会議で、作戦担当者からツーストップはないとハミルトンは聞いています。だからハミルトンも2回目のタイヤ交換を指示された時には、この作戦がうまくいくかどうか、信じられなかったと話しています。実際、メルセデス陣営は計算上最終ラップにフェルスタッペンに追いつくと計算しており、その時ハミルトンのタイヤが残っている保証はなかったのですから。
 
破れたとはいえ、フェルスタッペンの態度も素晴らしかったと思います。日曜日はハミルトンの方が速かった事を認めて、素直に負けを認めてました。まだ21歳とは思えない成熟です。彼の成長に限界はないように思えます。
 
この若きオランダ人ドライバーはとてつもないモンスターになりそうな予感がしてきた。