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ルクレール 進撃の2連勝 イタリアGP観戦記

▽ハミルトンの猛追をかわしルクレール連勝
ルクレールが悲喜交々の初勝利から1週間後にまたもメルセデスのハミルトンのアタックを退けて連勝。
 
そして今回も前回同様、チームとしてのフェラーリも見事な判断をした。
 
コーナー数も少ないモンツァは例年ワンストップレースになることが多く、今年も上位陣に関してはワンストップが定番の作戦であった。ただ第二スティントで履いたタイヤが明暗を分けた。
 
ポールポジションは2戦連続のルクレール。ただ予選Q3で不思議な現象が見られた。誰も先頭を走りたがらないのである。セッション最後にほぼ全員が飛び出したのはいいのだが先頭を走るマシンがシケインを不通過したり、スピードダウンしたりして、他車の後ろを走りたがった。
 
これは当然、みんなスリップストリームを使いたいからなのだが、昨年レギュレーションが改定されダウンフォース量が増えたことによって、それに伴い抵抗も増えたことに起因する。
 
だから一時期はモンツァでも、リアウイングを立てて走るマシンも見られたが、今年は大小の差はあれ、ほとんどのマシンが薄い特別なモンツァ仕様のリアウイングを持ち込んでいた。
 
抵抗が多いから、スリップストリームを利用した時のゲインが大きいので、こういう珍現象が発生した。ただ全車がアウトラップでスローダウンした結果、アウトラップでスタートラインをタイムアップ後に通過して最後のアタックをできないマシンが続出。結果的にルクレールとサインツの2台だけがアタックできることになった。
 
この時点でポールポジションほぼ確実なルクレールはアタックしなかったので、なんとも盛り上がりの欠ける予選となってしまった。それでも地元イタリア人はフェラーリがポールポジションとったので大満足だったのだろうが。
 
ポールからスタートしたルクレールは、スタートでリードを維持したままレースをコントロールする。だが2位のハミルトンも離れない。1.7秒差の19周目にハミルトンがアンダーカットを仕掛けるためにピットインしてミディアムに交換。そしてルクレールもその動きをカバーするためにその翌周タイヤ交換する。ただここでルクレールはハードにタイヤ交換して、二台の選択は別れた。これがレース終盤に明暗を分けることになる。
 
アンダーカットを仕掛けたハミルトンだがルクレールを抜くことはできなかった。ハミルトンは1.3秒は詰めたのだが、ルクレールはかろうじて0.4秒のリードを保ったままコースに戻った。
 
ここからタイヤのウォームアップ性に優れ、温まりやすいミディアムを履くハミルトンはルクレールに猛攻撃を仕掛ける。まるで先週のリプレイを見ている展開になった。
 
そして23周目のロッジアシケインでハミルトンがアウトから仕掛けるが、インを抑えていたルクレールがシケインでのアプローチでアウト側に寄ってくる。接触を避けたいハミルトンはシケインを不通過してコースに戻り、ここはルクレールが順位を守った。しかしこの時、ルクレールには際どいブロックにより、次に同様の行為をした場合ペナルティになると警告を受けて、さらにプレッシャーを受けた。
 
堪えきれなかったルクレールは   34周目のターン1のシケインでショートカットしてしまうが、ハミルトンの前でコースに復帰する。ここでもカナダのベッテルのようにペナルティを受けなかった。これはルクレールがベッテルとは違い、コースに復帰するときにハミルトンの進路を防がなかったからであろう。
 

 
だが猛攻撃を続けるハミルトンに異変が起こる。徐々にペースが落ちてきたのだ。彼のミディアムタイヤはグリップを失ってきた。
 
ここでルクレールがハードタイヤを選択したことが成功することになった。
 
だがこれでルクレールが楽勝できたわけではなかった。ルクレールより17周遅れでミディアムに交換したボッタスが迫ってきた。だが残念ながらボッタスのアタックはハミルトンほど激しくはない。
 
後ろに迫ることはできたボッタスだったが、このレースでもフェラーリのストレートスピードは速かった。ボッタスはオーバーテイクを仕掛けるとはできなかった。そしてフェラーリ1年目の若いドライバーは、なんとフェラーリの地元モンツァで2連勝を飾った。
 
もちろんレース後の表彰式はお祭り騒ぎであった。イタリア国家を歌うイタリア人を見てると、ほんと羨ましい限りである。
 
我々日本人が日本GPで君が代を歌う日が生きている間に来るかどうかはわからないが、その時には大声で君が代を歌いものである。
 
そして今回、ソフトからハードのワンストップしたのはルクレール一人であった。そう意味ではベルギーに引き続きフェラーリもまたいい仕事をしたと言えるだろう。
 
それにしてもこのルクレールは本当にすごいドライバーである。F1の未来がルクレールとフェルスタッペンにあることがはっきりとしたイタリアGPであった。
 
 
▽内容的には悪くないレッドブル・ホンダ
スペック4を全車に投入したホンダだったが、残念ながらアルボンの6位が最高位で、この前にルノーの二台がいることを考えるとあまり喜べない結果となった。例えこの日のルノーが速かったとしてもである。
 
スペック4をこのレースで搭載したフェルスタッペンは19位スタートから上位を狙ったが、スタート直後のシケインで前のマシンに追突しそうになり、なんとかクラッシュは避けられたが、フロントウイングを破損して、早々にピットインを強いられてしまう。この日はセーフティーカーの登場もなかったので、追い上げたもののフェルスタッペンは8位まで追い上げのがやっとだった。
 
そしてスペック4を搭載したクビアトのマシンがパワーユニットのトラブルと思わしい状況でコース上にストップしてしまった。この前のPUのトラブルがいつだったか、もう思い出せないくらい久しぶりのトラブルであった。
 
というわけでホンダにとってのイタリアGPはあまり実りのないレースとなった。だが昨年まではこのコースで全く競争力がなかったことを考えると、フェルスタッペンのレース中のラップタイムは悪くなかったし、確実にスペック4の進化を感じられたレースとなった。あとはクビアトのトラブルの原因が深刻でないことを願いたい