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2013 Rd11 ベルギーGP観戦記

▽混乱の予選と正しい判断
今回のドラマは予選から始まっていた。Q3は開始直前に雨が降り始め、状況は悪化されると予想されたので1台を除いた9台が開始直後にドライタイヤでアタックを開始。ところが雨は既にドライで走るには厳しいレベルで9台はアウトラップしただけで戻ってくる。その状況を確認した残り1台のディ・レスタは他の9台が戻ってくるのを尻目に素早くピットアウトしていく。当然彼は最もいいコンディションでアタックしトップタイムをマーク。他のドライバーはコンディションが悪化する中、彼のタイムを上回れない。彼はポールポジションを獲得できたはずだった。ところがここでコンディションは急回復。ラップタイムが急激に回復していく。ここで燃料を多く積んでいたハミルトン、ベッテル、ウェバーが最も状況のいい状態の最後にアタックし、逆転で予選上位3位に滑り込んだ。ロズベルグ、アロンソ、バトン、ロータスの二台は路面状態のいい最後に燃料切れでアウト。Q3最初は1周アタック分の燃料しか積んでいなかった各車が、タイヤ交換する際に燃料を搭載した時の判断に左右された。コンディションが悪化するのであれば、燃料搭載量を少なくすればピットアウトまでの時間が短縮される。そしてその方がコンディションが悪化する前にいいタイムを記録できる。だが上位の三台はそうは考えなかった。状況の変化が読めないならできるだけコース上にとどまっておくべきという掟に従い、最後まで走れる燃料を搭載する判断をした。これはあの混乱する状況の中ではなかなかできる判断ではない。ちょい濡れの状態であれば燃料搭載量の多少はラップタイムに与える影響は限られる。これは平時であれば鉄則なのだが、あの混乱する状況の中で正しい判断をするのは我々が考えるよりはるかに難しい。
 ▽1ストップ狙ったバトン
レースの戦略はほとんどがパフォーマンスのいいミディアムでスタートし2ストップを選択。上位ではバトンとグロージャン が1ストップを狙うが、バトンは3位走行中の残り10周で左フロントタイヤがダメになり急遽ピットイン。彼の最初のタイヤ交換は17周目であり、これはワ ンストップを考えるとかなり早いタイミングである。ちなみにワンストップのグロージャンは22周目であり、ワンストップを狙うのであれば、もう少し最初の タイヤ交換を引っ張るべきであった。残り10周でタイヤ交換したために挽回するための周回数も残されておらず、6位になるのが精一杯であった。

▽歯が立たなかったハミルトン
ス タートではトップをキープしたハミルトンだったが、オウルージュの先でラインを外すミスを犯してしまう。ここはラインが一本しかなく、そこを外すとアクセ ルを戻さざるを得なくなる。ここはきつい上り坂で、その後には長いケメルストレートが待っており、ここでスピードを落とすと後に控えるストレートでのス ピードが伸びない。その為ハミルトンはベッテルに為す術なく追い越されてしまった。その後のペースも全くベッテルには歯が立たず、なんとか3位になるのが 精一杯であった。今回勝利すれば逆転チャンピオンの可能性もあると予想していたのだが、この結果でベッテルとの差は58ポイント差になり、タイヤの心配が なくなったとはいえ、自力で逆転するには難しい状況になった。

▽ベッテル 予想外の大勝
そして1周目にトップにたったベッテルは2位以下を全く寄せ付けずに圧勝した。
レース後半2位を走るアロンソが攻め続けるが、ベッテルは時にはセクター2だけでアロンソに1秒の差をつけることもあるほどの速さ。アロンソには雨乞いをするしか勝利への道は残されていなかった。

今 回、レッドブルはいつもとは違うアプローチで難攻不落のスパに臨んできた。彼らは通常、ダウンフォースを増やしギアレシオを低く設定し加速をよくし、トッ プスピードは犠牲にしてもトータル1周のタイムを狙うのが通常の彼らのスタンスだった。ところが今回、彼らはトップスピードを重視したパーツを持ち込ん だ。これは現在の2.4リッターのV8エンジンでは、セクター2を除くセクター1と3ではほとんどエンジン全開。テクニカルな部分はもちろん残されてはい るのだが、サーキットの性格は高速サーキットといってもおかしくないくらいである。実際にエンジン全開率は70%であり、これは次の超高速サーキット モンツァに次ぐ高さである。それでもレッドブルは昨年まではコーナーリング重視で臨んできたのだが、今回のアプローチは違った。

これには 複数の要因があるのだが、一つには彼らがポールポジションを得られなくなったことが考えられる。彼らがコーナー重視にできたのは、常にポールポジションを 獲得し、スタートで前に出て1秒以上のギャップを得てDRSを使えなくすることにより、直線スピードが最下位でもラップタイムが良ければ勝てたからだっ た。ところがご存じのように今年はメルセデスが予選で速い。ベルギーGPまで11戦の予選でベッテルがポールポジションを獲得したのはたったの”3回”。 残りの8回はメルセデスの二人が分け合っている。これは昨年までのポールポジションがレッドブルの指定席だった状況とは激変している。そして今回もメルセ デスのハミルトンがポールポジションを獲得している。この状況とコースが高速化したことを受け、レッドブルはセットアップを変更した。レース時のトップス ピードもウェバーとベッテルは306.1km/hで全く同じで2位。彼らの上は307.2km/mのマッサただ一人である。さらに予選Q3でもベッテルは ハミルトンに1.2秒もの大差をつけられている。これは昨年まででは考えられないことだ。

これらの要因によりベッテルは彼ら自身でさえ予 想もしなかった異次元の走りを見せつけた。2位との差が広がりすぎたのでピットからいつものようにペースを抑えるように言われていたベッテルだが、これま たいつものように無視して、ファステストラップを記録するおちゃめなベッテル。これでチャンピオンシップを争う2位のアロンソに46ポイント差をつけるこ とに成功した。これはほぼ2レース分のポイント差である。こうなるとベッテルが何らかのアクシデントに巻き込まれてリタイヤするしかライバルにはチャンス がない。

▽アロンソ 復活の狼煙
予選9位からスタートしたアロンソだったが見事な走りで2位になった。夏休み前は開発が思うよう に進まずフラストレーションのたまるレースが続いていたが、今回は今後に期待の持てるレースになった。特に良かったのは彼らのマシンはどんな状況(満タン でも空タンクに近い状態)でも速かった。最高速もありオーバーテイクにも時間をかけずに済んだので、後ろから追い上げるのも可能だった。得意のスタート ダッシュで9位から5位に順位を上げると最初のタイヤ交換を13周まで遅らせて、ハミルトンの直後の3位でコースに復帰するとすぐさま追い抜き2位にな り、そのままフィニッシュした。ただベッテルには全く歯が立たない状況であった。ベッテルが大差をつけて多少ペースを落とした状況でもラップタイムはほぼ 同じ。フェラーリにはまだまだ課題が多いようだ。

▽ライコネン 28レースぶりの無得点
27レース続いていた連続ポイント記録が 途絶えたライコネン。リタイヤの原因はブレーキトラブル。彼のマシンはレースの序盤からフロントブレーキから大量のカーボンダストを排出していた。最初の タイヤ交換時に確認したところ捨てバイザーが左フロントのブレーキダクトをふさいでおり、それを取りコースへ送り返したが、一度高温になったブレーキディ スクは元には戻らない。ついにはブレーキがきかなくなりライコネンはリタイヤを選ばなければならなかった。これで連続ポイント記録は途切れたが、それでも ロータスで復帰して以来、無得点のレースはこれを含めてもたったの2回しかない。今回はライコネンのミスではないのですごい記録であることは間違いがな い。

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