レッドブル昇格の道を断たれた日本人ドライバーの次なる一手
F1におけるシート争いは熾烈を極める。特にレッドブルの育成プログラムに属するドライバーにとって、トップチームへの昇格は狭き門だ。そんな状況下で、角田裕毅は2025年のレッドブル昇格のチャンスを失い、難しい立場に追い込まれている。彼のF1キャリアは今後どうなるのか? そして、2026年以降のシート確保に向けて何が求められるのか?

角田裕毅、F1残留に立ちはだかる壁
ここ数シーズン、角田は高いパフォーマンスを発揮してきた。パドック内でそれを疑う者はほとんどいない。角田は2024年シーズンを通じて、レーシングブルズで安定したパフォーマンスを発揮し、チームメイトのニック・デ・フリースやダニエル・リカルドとの比較でも、彼の速さと成長は明らかで、彼の市場価値は比較的高いものとなっている。
それにも関わらず、レッドブルは2025年のドライバーとしてリアム・ローソンを選択。これにより、角田のトップチーム昇格の道は断たれ、さらに他チームへの移籍の可能性も封じられることとなった。
実際、昨シーズンにはハースやアウディが彼の獲得に興味を示していたとされている。しかし、レッドブルが角田の契約オプションを行使したことで、2025年に向けて彼が他の選択肢を検討することはできなくなった。
この決定は、24歳の角田を非常に難しい立場に追い込んでいる。現在のF1ドライバーのほとんどは複数年契約を結んでおり、2026年に向けて空席となるシートはごくわずかだ。
レッドブルが彼の昇格に関心を示していないように見える現状では、彼のF1での将来は不透明なものとなっている。クリスチャン・ホーナーは、角田がもう1年セカンドチーム(レーシングブルズ)に留まるのは非論理的だと示唆している。
「ホンダの支援は期待できない」― 渡辺康治氏のコメント
これまで角田がF1の舞台に立ち続けるうえで、ホンダの存在は大きな支えとなってきた。しかし、2026年からホンダはアストンマーティンと提携することが決まっており、レーシングブルズとの関係は途絶えることになる。
HRCの渡辺康治社氏は、角田の将来について次のように語っている。
「彼はF1で5年目を迎えます。もう経験豊富なドライバーですし、彼は自力でやらなければならない。自分にとって最善の決断をしてほしいですね。」
「その意味では、今年は非常に重要なシーズンだと思います。そして来年のシートは、おそらくすぐに決まるでしょう。だからこそ、彼にはチャンスとタイミングをしっかり掴み、次のステップに進んでほしい。彼ならそれができると信じています。」
「彼自身が行動を起こす必要がある。F1の世界をよく理解しているし、実力もある。我々ができることは、ほとんどありません。」
この発言は、角田が今後のF1キャリアを切り開くには、ホンダのサポートに頼るのではなく、自らの実力で市場価値を示す必要があることを意味している。

2026年に向けたシート確保の可能性
現時点で2026年のドライバー市場を見渡すと、多くのチャンスがあるわけではない。もし2024年のように今年のドライバー市場が活発であれば、角田が移籍できるチームはいくつもあっただろう。しかし、現状の市場は非常に限られている。仮に来年のF1グリッドに残れなかったとしても、多くのドライバーが契約満了を迎える2026年には、新たなチャンスが巡ってくるかもしれない。
その時点で、中団チームには新たな空席が生まれる可能性もある。例えば、ハースやウィリアムズ、さらにはアウディ(現ザウバー)といったチームは、経験豊富なドライバーを求める可能性がある。
特にアウディは、F1参戦に向けて有力なドライバーをリストアップしており、角田もその選択肢の一人に挙がっている。過去には彼らが角田に興味を示したという報道もあり、2025年の市場動向次第では移籍の可能性もあるだろう。
レーシングブルズ残留は現実的な選択肢か?
もし他チームへの移籍が難航した場合、レーシングブルズにもう1年残るという選択肢も考えられる。しかし、レッドブルがどのように判断するかは、不透明だ。
一部の報道では、レッドブルが2026年にアービン・リンドブラッドをF1に昇格させる可能性が指摘されている。この場合、レーシングブルズはリンドブラッドの成長をサポートする体制を取る可能性が高く、安定したベンチマークとなるドライバーが必要とされる。ただその場合でも、残るのはバジャーになるだろう。
よってホンダがアストンマーチンとパートナーシップを組む2026年以降も、角田がレーシングブルズに残る可能性は極めて低いと言わざると得ない。

角田裕毅に求められる「結果」と「交渉力」
2026年のシート確保に向けて、角田には2つの課題がある。
まず、最初は圧倒的な結果を残すことである。どのチームも、契約するドライバーに「確実なポイント獲得能力」を求める。角田がレーシングブルズで安定して入賞を重ね、ライバルを圧倒する成績を収めることができれば、移籍市場での評価は一気に高まる。
次に積極的な交渉戦略が求められる。2025年の市場が開く前に、マネジメント側が動き、他チームとの接触を開始することが重要になる。特にホンダの支援がない以上、エージェントの手腕が問われる局面となるだろう。
しかしながら、この分野でも不安は残る。角田は最近、マネジメント体制を一新した。この決定は、彼の今後のシート争奪戦に向けた重要な一歩と見なされている。しかし、新たにマネジメントを担うことになったディエゴ・メンチャカは、まだ経験が浅く、有力ドライバーやチームとのつながりも乏しいとされており、彼が角田のシート確保にどれだけ貢献できるかは未知数である。
角田裕毅のF1キャリアは、現在大きな岐路に立たされている。レッドブル昇格の道を断たれ、ホンダのサポートも期待できない中、2026年のシート確保には自身の実力で結果を出すことが絶対条件となる。
また、交渉の場でも積極的なアプローチが必要となり、レーシングブルズ残留か他チームへの移籍かを含めて、2025年の市場動向を注視しながら最適な選択をする必要がある。
F1で生き残るためには、速さだけではなく、戦略的な決断力も求められる。角田にとって2025年は、F1キャリアの分岐点となる重要なシーズンとなるだろう。