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18インチタイヤはお好き?丸くて黒い部品の不思議な物語

ONZ4438 先週、イギリスGP後にシルバーストーンで開催されたシーズン中のテストで、ピレリが見慣れないタイヤを持ち込んだ。それは18インチのサイズのタイヤである。 見慣れないというは、少し奇妙かもしれない。なぜならば、私たちはそれを街のいたるところで目撃することができるからである。昨今は少し高級で、速い市販車であれば18インチタイヤも珍しくはない。 では今、なぜF1で18インチタイヤなのであろうか?誤解されるといけないので、一つ確認しておきたいのであるが、タイヤの扁平率(※)が下がると、性能が上がると思われているかもしれないが、それは間違いである。 ※扁平率=タイヤの高さ÷タイヤの幅×100(%) ※今回の18インチタイヤは、現行の13インチタイヤと同じタイヤ幅(フロント:245mm、リア:325mm)である。直径は30mm大きくなっている。直径は大きくなっているものの、ホイールのサイズも大きくなっており、サイドウォールが薄くなっているため、タイヤ重量は、13インチタイヤとほぼ同じ。リムを含む総重量は、13インチやタイヤより約4kg重い。 タイヤはゴムでできていると言われるが、それも厳密に言えば間違っている。正確にはタイヤはゴムと空気でできていると言わなければならない。タイヤは空気がなければ、ただの不燃ゴミである。空気がなければ、クルマの部品としての機能を発揮しない。だから市販車でも推奨する空気圧が指定されているし、モータースポーツでは、より厳密に空気圧を規定されている。 さらにタイヤはサスペンションとしての役割も、好むと好まざるとに関わらず持たされている。大きな衝撃が路面から入れば、通常のサスペンションが動いて処理出来るが、小さな振動はサスペンションが吸収するのが難しい。 その為、市販車ではブッシュというゴム部品をサスペンションの取り付け部に装着して、細かい振動を吸収しようとしている。だがブッシュを使用すると当然ダイレクト感がなくなるので、F1では使用されない。 今のF1ではサスペンションは、あまり動かない。特にフロントサスペンションは顕著である。その代わりタイヤが路面からの入力を吸収している。 18_01 左側が現行のタイヤで、右側が話題の18インチタイヤである では扁平率が下がるとどうなるのであろうか?写真を見ていただければわかるように、タイヤの扁平率が下がると、サイドウォールの高さが低くなる。サイドウォールが狭くなると当然、その中にある空気の量は減る。タイヤの重要な要素である、空気の量が減るのであるから、タイヤにいい影響はない。 さらにサイドウォールが狭くて空気の量が少なくなると、タイヤにかかる荷重を空気が受け止められなくなるので、サイドウォールを強くしなければならなくなり、(同じサイズならば)重くなる。 そういう理由もあり、F1では扁平率の高い、サイドウォールの高いタイヤが採用されてきた。その方がF1が求める強力なGに対する安全性の確保と性能を高い次元で両立させやすかったからである。だが技術の進化により、サイドウォールが狭くて空気の量が少なくても、信頼性と性能のバランスが取れるようになった。 さらにいうと市販車や市販タイヤでは、扁平率の低いタイヤは見た目がかっこいいので、高く売れる。そういうわけで市販車では薄っぺらいタイヤが流行っているのである。もし扁平率の低いタイヤが、いいタイヤであるならば、全てのタイヤが薄くならないとおかしいのだが、そうならないのは理由があるのである。 もちろんタイヤは求める性能によりやサイズや強度、剛性等を考えなければならない非常に複雑な製品であり、部品である。しかもクルマの安全性にも密接に関連しており、信頼性を確実に確保しなければならない。このようにタイヤの開発は一筋縄ではいかないのであるが、以上に述べた側面がある事は確かである。 では今なぜF1で18インチなのであろうか?それは扁平率の低いタイヤが高い性能を持っていると、世間にアピールしたいからである。扁平率が高いタイヤの方が安くて性能がいいとなれば、誰も高いタイヤを買ってくれなくなる。ミシュランがF1に参入する条件として、扁平率の高いタイヤを望んでいたのも、マーケティング上の問題である。 もちろん今の技術を持ってすれば18インチのF1タイヤも可能であろう。だがサスペンションとしての機能は落ちるし、よりダイレクトに反応する。サイドウォールを強化するのであるから、それは当然である。これはテストドライブをしたピックもそう述べている。 今回のタイヤはテスト用と言うよりもプロトタイプに近いので、各セットで数周ずつ、最高速度は制限され、縁石の使用は禁止、速く走らず、攻めず、合計で14周しか走っていないので、タイヤとして評価することはできない。 ピレリは今回、あくまでもショーケースとして18インチを持ち込んだだけであり、この反応をみてFIAとタイヤサイズの変更について議論していきたいのであろう。世間がこのタイヤに対して反応してくれれば、今回のピレリの目的は達成されたといえる。 ただタイヤサイズを変更し、特性が変わるとマシンの空力に影響があるので、タイヤサイズを変える場合は、遅くとも1年前にはタイヤのスペックを確定させなければならない。 そう考えるとタイヤサイズが変更されるにしても、先の長い話である。みなさんは、この18インチタイヤをお気に召しましたか?  

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