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2010年レギュレーション解説 PART1

JUGEMテーマ:スポーツ

 いよいよ2010年シーズンが間近に迫ってきました。 シーズン開幕を迎えるにあたって、今シーズンの大きなレギュレーションの変更ポイントとその影響をまとめてみました。 ——————————- 1.燃料の途中給油禁止 今シーズン、昨年まで許可されていたレース中の給油が禁止される。 この燃料補給の禁止は、F1マシンのデザインや戦略に最も大きく影響を及ぼすことになる。 給油が禁止されることにより当然だが、燃料タンクの容量が大幅に増える。 燃料タンク容量の増加分が、そのままホイールベースの延長に繋がるわけではない。 しかし各デザイナーともホイールベースの延長を最小限度にするべく努力したが、それでも全般的にホイールベースは延長されている。 シャシーが延長されて一番困るのは、重量増と剛性の低下である。 何も工夫をしないでシャシーを延長すれば、剛性が低下する。 剛性を上げようとすれば、重量が増える。 重量が増えれば、搭載するバラストの量が減り、セットアップの幅が狭まる。 いかにして重量を増やさないようにして、剛性を上げるか。 そこが一番のポイントになる。

 一般的にホイールベースが延長されると運動性能が低下し、直進安定性が向上するといわれているが、F1マシンの場合、重量物をマシンの中心近くに集中させているので、運動性能はほとんど犠牲にされないだろう。 途中給油が禁止されると一番問題になるのは、レースをフィニッシュできるだけの燃料を積んでスタートしなければならないことだ。 300kmのレース距離を想定すると、一般的には160~170kg(230L)程度の燃料を搭載してスタートする。 これは昨年の倍以上の重量である。 現時点で最も燃費のいいエンジンと悪いエンジンを比較すると、スタート時の燃料搭載量で10kg程度の差があると見られている。 これは1ラップ当たり約0.3秒程度の差になる。 この重量差は、レース終盤に向けて減少していくが、スタート時点では大きなアドバンテージとなる。 だが0.3秒ほどの差であれば、抜くことは難しい。 だから、燃費の悪いマシンは予選で前に行くことが必要になる。 燃費のいいマシンに前に行かれるとかなり苦しいレース展開になる。 また燃料満載状態のスタート時と空タンクのフィニッシュ直前では、マシンの状態が全く異なる。 まず満タン時にはブレーキがきかなくなる。 しかし、スタート直後にはブレーキング競争をして一つでも前のポジションに行きたいはずだ。 よってスタート直後にはブレーキをロックさせて飛び出すマシン、止まりきれず衝突するマシンが増えることが予想される。 その為、序盤の追い抜きは昨年より増えるだろう。 重たい燃料はブレーキの耐久性にも悪影響を与える。 ハードブレーキングポイントの多いサーキット(例えばバーレーンやカナダGP)では、ブレーキが厳しいマシンがでるだろう。 また満タン状態と空タンク状態では、マシンの挙動も変化する。 今年のマシン開発は、燃料満載時と空の場合のマシン挙動をできるだけ変化させないことが重要になる。 エンジン自体の基本構造は2012年末まで変更が許されない。 だがエンジンのマッピング・プログラムは変更が可能。 各チームはこのプログラムに工夫を凝らして、燃費を向上させようとしてくるだろう。 2.タイヤ 燃料搭載量が増え、重量が増えるため、ブリヂストンはタイヤの構造を変更した。 持ち込まれるタイヤの種類は、昨シーズンと同じ4種類。 柔らかい方からスーパーソフト、ソフト、ミディアム、ハードとなる。 だがコンパウンドは変更され、グリップレベルや動作温度領域の差は小さくなる。 トレッド面の形状が丸くなり、発熱しやすい形状になった。 その為、昨年のブラウンGPのように、タイヤの温度が上昇せずに苦しむチームは減るだろう。 最大の変化はフロントタイヤの幅が、270mmから245mmに変更される。 これは、昨年ブリヂストンが導入したかったフロントタイヤのサイズである。 溝付きタイヤ時代にフロントタイヤのグリップを上げたかったブリヂストンは、フロントタイヤの幅を広げて落ちたグリップを補った。 スリックタイヤに変わった2009年、それを元のサイズに戻したかったが、その時には既に2009年シーズン用のマシン開発が進んでいて、チームから反対されて見送った経緯がある。 その為、タイヤから見ると、2010年のマシンは2009年のオーバーステア傾向から、アンダーステア傾向になる。 だがこれには各チーム上手く対応できているようだ。 元々F1マシンはオーバーステア傾向であり、重量バランスもリアヘビーであるので、このフロントタイヤのサイズ減少には、一部を除き上手く対応できているようだ。 タイヤも重い燃料の影響を大きく受ける。 スタート時とフィニッシュ直前では、タイヤにかかる負荷も、また大きな違いがある。 重い状態の時に、無理にペースを上げるとタイヤを痛めてラップタイムが大きく落ちる。 その為、特にスタート直後ではタイヤに優しくドライブしなければならない。 スタートで無理をしてペースを上げすぎると、その後急激にタイムが落ちて苦しむことになる。 今年は、昨年以上にタイヤ・マネージメントが重要になってくる。 3.ホモロゲーション・パーツ 今年、ホモロゲーション・パーツという概念が導入される。 これは特定のパーツをシーズン前に登録し、シーズン中の変更を、安全性に関わることを除いては、禁止する規則。 これにより過度の開発を抑制し、予算の削減をするためのルールだ。 具体的には、フロントの衝撃吸収構造、モノコック、リアの衝撃吸収構造である。 これにより昨年、BMWが実施したようにシーズン中にモノコック形状を変更することができない。 開発が規制されることにより、シーズン前に設計したデザインが的外れだと、シーズン中に改良してキャッチアップすることが難しくなる。 その為、昨シーズン以上に最初のマシン・コンセプトを間違えると厳しいシーズンになる。 4.エンジン 今年も基本的に開発は禁止されているが、今年は燃費が非常に重要になってくる。 昨年のレースを分析すると燃費が一番いいのは、ルノーだと見られている。 彼らは300kmのレースを完走するに当たり、160Kgの燃料で大丈夫。 次はメルセデスエンジンで165kg。 一番燃費が悪いのはフェラーリで170Kgと見られている。 そうするとルノー・エンジンとフェラーリ・エンジンでは10Kg の差があり、これは約0.3秒の差を生みだし、大きなアドバンテージとなる。 ただし、エンジンのマッピングは修正することが可能なので、その部分で各チーム工夫を凝らしてくるだろう。

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