2014 Rd.14 シンガポールGP観戦記 勝てるチャンスのあったベッテル
シンガポールGPは非常にオーバーテイクが難しいサーキットである。だからスタートで前に出られれば、追い抜くのは極めて難しい。普通であれば、スタートでハミルトンを抜けなかったベッテルは、2時間の長いレースの間、ハミルトンの後ろで走るしかなかったはずだった。
だがオーバーテイクが難しいサーキットであるシンガポールGPではあるが、同時にセーフティカー(以下SCと略)が100%の確率で入るサーキットでもある。そして今回もまたSCが登場し、ドラマは動き出した。
ベッテルが第2スティントで履いたタイヤはすでに土曜日に3周以上周回しており、ペースが上がらない。今回スーパーソフトのタレは平均で一周0.25秒。4周古いタイヤを履けば、約1秒を失う計算である。その為、ベッテルは予定より早く25周目に2回目のタイヤ交換を実行。彼らはソフトタイヤに交換した。しかし、いくらソフトタイヤを履いていても、残り36周を最後まで走りきるには厳しかった。
今回、スーパーソフトとソフトタイヤのタイム差は新品時で2秒以上もあった。その為、多くのドライバーができるだけ多くの周回数をスーパーソフトで走る作戦にしてきた。最初の三つのスティントをスーパーソフトを履いて、最後にソフトを履く作戦である。これは勝ったハミルトンが実行した作戦である。
だがレッドブルは第3スティントでソフトタイヤを履いた。彼らはシンガポールではSCが入る確率が高く、しかもSCがコース上にとどまる周回数が長いことを理解していた。今回、7周もSCは展開して、チームの作戦に大きな影響を与えた。
当然、その7周の間はタイヤを労ることができるわけで、もしベッテルがレースの最後まで、ソフトタイヤで走ることができれば、ハミルトンに挑戦するチャンスがあると考えていた。そして実際にSCは予想通りに登場し、長くコース上に留まった。
ベッテルには勝利のチャンスが目の前にあった。
つづく
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