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2011 Rd10 ドイツGP観戦記

 ▽今回もタイヤが勝負を分けた

レース前、ソフトでは30周、ハード(ミディアム)ではレースディスタンスを走りきれると予想されていた。
ハードタイヤはソフトより1.5~2秒程遅く、タイヤを作動温度にするのに3周以上必要でありその間はさらにタイムが遅くなるので、できるだけハードタイヤで走る距離を少なくしたいというのが各チームの思惑であった。
実際、ハードタイヤでの距離を少なくしたいと考えたレッドブルとフェラーリはベッテルとマッサを最終ラップでピットに戻し、ハードタイヤに交換している。

ところがレースが始まるとソフト側は15周前後しか持たなかった。
これはタイヤに厳しいマクラーレンにとっては幸運だった。
短い距離のスプリントレースとなれば、タイヤに優しいフェラーリとの差は少なくなる。

こうなればハミルトンの勝ちパターンである。
いつでもどこでも全開で、速く走ることしか考えていないハミルトンにとって、全力で走りタイヤがダメになったらピットに戻ってタイヤ交換するというのは、彼がもっとも得意とするスタイル。

ハミルトンはアロンソより常に先にタイヤ交換をして、レースをリード。
もっともこの作戦をマクラーレンが最初から意図していたかは、怪しい。
マクラーレンはフェラーリよりタイヤに厳しく、ハミルトンがアロンソより早くタイヤ交換するのは、予想の範囲内であり、マクラーレンの作戦とは考えにくい。
彼らに選択肢はなく、ハミルトンの頑張りに期待するしかなかったというのが、真実だろう。

 一方、アロンソの方はハミルトンよりタイヤが持つので、タイヤ交換時期の自由度は大きかった。ただハードの方がタイムが悪く、フェラーリは特に温度の立ち上がりも悪いことから、ソフトタイヤを引っ張って、ハードタイヤへの交換をできるだけ遅らせて、最後に逆転するというのが彼らのシナリオだったと思う。

ところがタイヤの寿命が思った以上に短かったので、アロンソの作戦は実現しなかった。確かにアロンソはハミルトンより後にタイヤ交換しているのだが、その差が1周~2周程度であり、アドバンテージの幅が予想したよりも少なかった。

ハードタイヤの温まりが、予想以上に早く立ち上がり、ハミルトンはアウトラップの第三セクターで自己ベストを出せるレベルにまでタイヤが温まったのも、誤算だった。

アロンソはハミルトンより遅くタイヤ交換しているのだが、アロンソがタイヤ交換する前のラップタイムはそれまでより0.5秒ほど遅いので、フェラーリはタイヤが長持ちすると自信を持っていたようだが、ソフトタイヤの持ちが悪かったので、結果的にマクラーレンと大差がない状況になり、フェラーリは自分たちの長所を生かせなかった。

今回、ハードタイヤとソフトタイヤのタイム差は大きかったが、ソフトタイヤのタレが予想より早く、しかも大きかったのでタレたソフトタイヤと新品のハードタイヤではタイム差が付かなかった。

これはレース前には予想でず、ハードタイヤへの交換を遅らせて、最後に逆転するという、フェラーリの目論見は崩れ去った。

結果的に長く引っ張ろうとしたフェラーリは負け、タイヤの状況に合わせてタイヤ交換したマクラーレンは勝った。
だがこれはどちらの作戦が良かった悪かったと言うことではなく、今回はマクラーレンの作戦が、タイヤとコンディションにあったということである。

マクラーレンとハミルトンに他の選択肢があったとは思えない。

ソフトタイヤの持ちがもう少しでも良ければ、アロンソにもチャンスはあった。
ゴムは生ものと言うが、今年のピレリタイヤは最後の最後まで予想できないタイヤであり、それがレースに面白さをもたらしていることは否定できない。


▽マクラーレンとフェラーリは追いついた

ことレースペースに限って言えば、もはやレッドブルは最速ではない。
彼らが遅いわけではないが、レッドブルは最速ではなく、最速の中の一台にすぎない。
イギリスではフェラーリが、ドイツではフェラーリとマクラーレンがレッドブルと同等かそれ以上のタイムを出し続けた。
予選でのレッドブルはまだ、アドバンテージを持っているが、タイヤの寿命が短いことや、DRSがあることを考えると、そのアドバンテージはあまりにも心許ない。

これまでマシンのパフォーマンスに不満がなかった二人のドライバーも、ついに進歩が必要であると述べるようになってきた。
彼らの尻にも火がついてきたようだ。

これはブロウンディヒューザー規制が問題であるというレベルの話ではなく、純粋にマシンのパフォーマンスで追いつかれていることである。
彼らの開発優先事項がブロウンディヒューザー対策に向かっていたのかもしれない。
過去2年間、これほどまでにレッドブルが他のチームに迫られたことはない。
もっともレッドブルがこのまま遅くなるとは考えにくいが、奇才ニューウェイの真価が問われていくのは間違いない。


▽消えたベッテル

マッサとの激しいバトルはあったものの、今回のベッテルはトップ争いをすることなく、まるで存在しないかのように見えた。
ここまで冴えないベッテルを見るのは久しぶりである。

コースサイドの濡れた人工芝に乗り上げて、スピンしたり、彼らしくない走りを見せ、途中リアブレーキのトラブルもあったの一因であろうが、マッサを抜ききれなかった。

幸いなことに最終ラップに同時にピットへ向かった二台だったが、レッドブルの仕事が素晴らしく逆転の4位はチャンピオンシップを考えれば、よい結果だと言えよう。
彼のポケットにはまだ多くのポイントが残っている。

だがレッドブルのマジックが消えつつある中、ここからがベッテルの真価が問われる。

マシンの調子が良いときに勝つのはトップドライバーであれば当たり前である。
問題はマシンの調子が上がらないときにいかに走って勝つのか。
そこが今、彼に問われようとしている。
そしてそれを克服したときに、彼は偉大なチャンピオン達に肩を並べることになる。

▽可夢偉は本当に素晴らしい

可夢偉は日本人でないとしても、素晴らしい。
予選はトラフィックに巻き込まれたこともあり18位。
ただトラフィックがなくてもQ3進出は不可能で、スピード不足は明らか。
雨でも降らない限り入賞は無理なはずだった。

ところが可夢偉はスタートで5台抜くと、他のドライバー達より1回少ないタイヤ交換で9位入賞。
今シーズン、ほぼ毎回入賞している可夢偉だが彼のマシンはそんな事ができるほど速くはない。
それはチームメイトのペレスの成績を見ればわかる。
もちろん彼はルーキーなので、直接比較するのは無理があるが、それでも彼の成績はマシンの性能を見る一つの目安にはなる。

彼がザウバーでできることはすでに証明された。
次のステップに進んで欲しいのだが、トップチームのシートに空きはでない模様である。
彼に今必要なのは表彰台というインパクトだろう。
それさえあれば、トップチームは獲得に動くだろう。
2012年は無理でも2013年に向けて彼のマネージメントチームには頑張って欲しい。

 

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