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2011 Rd18 アブダビGP観戦記

▽最も不幸な男ベッテル
ポールポジションから素晴らしいスタートを切ったベッテルのレースはターン2で終わった。
彼はターン1の立ち上がりでは、2位のハミルトンに3車身以上の差をつけていたのだが、ターン2であっさりとスピン。
ただなぜ彼の右後輪タイヤが突然、パンクしたのかは全く不明である。
今のF1はタイヤプレッシャーを常時監視しているので、スタート時に問題があればチームは伝えてるはずだが、それもない。そう考えるとベッテルはターン1でタイヤに異常をきたしたと考える他にはない。
ターン1からターン2という短い距離の中であれほど、急激な圧力低下に見舞われるという事は、かなり大きな傷がなければ起こりえない事なので、ターン1外側の縁石の角か、落下していたパーツを踏んだとしか考えられない。

※ちなみにこれを書き上げた時点で、ブロウン・ディヒューザーから吹き出る高温の排気ガスが、タイヤを溶かしたとの説が出てきた。ただそれが原因であれば、タイヤを見れば溶けたかどうかはわかると思うのだが、ピレリがそのような発表をしていないので、現時点はこの原因は考えにくい。
ベッテルは多少外側にはみ出してはいるが、同程度にはみ出しているドライバーは他にもいて、彼らは全く問題なかったので、縁石が原因である可能性は低い。また、縁石の角でそれほど大きな傷ができるとは考えにくいので、最有力候補はパーツを踏んだ事だろう。
今年のピレリタイヤはパンクしやすい構造である事も、ベッテルにとっては不運だった。

それにしてもここまで、ほぼ完璧なシーズンを過ごしてきたベッテルにとっては、避けようのないトラブルであり、諦めるしかないだろう。逆にチャンピオン決定後のトラブルであった事は幸いであった。

ただベッテルの素晴らしいところは、リタイアしたにも関わらず右のリアの部分をのぞき込み、エンジニアから説明を受けたり、パソコンでデータを確認したり (おそらく彼はタイヤプレッシャーのデータを確認していたはずだ)、コマンドポストに座り込んで、ウェバーのデータを見ながら、彼がどういうドライビング をしているか観察し、チームがどのようにしてデータを基に戦術を練っているのかを学習していた。しかも彼はレーシングスーツを着替えもせずにだ。極端な場 合、リタイヤしたら先に空港に向かうドライバーも珍しくない中で、この彼の学習をする能力こそが、彼のずば抜けた成績を生み出している。
不運なリタイヤをしたベッテルだが、また一つ彼の素晴らしさを見せられた。

昨年のアブダビGPでは、最も幸運な男だったベッテル。
今年は最も不幸な男となっても、文句は言えないだろう。

▽失った勝利を取り戻したハミルトン
2009年のアブダビGPでトップを快走しながらブレーキトラブルでリタイヤを余儀なくされたハミルトンは、その時失った勝利を今年取り返した。
ベッテルがそのまま走り続けた場合、ハミルトンが勝利したかどうかはわからない。
ただ彼のQ2のタイムはQ3のベッテルのタイムを上回っており、パフォーマンス的には勝利してもおかしくなかった。

また今回の勝利にはチームのピット作業に負うところが大きかった。
今回は2ストップが多かったのだが、マクラーレンはハミルトンのタイヤ交換で素早い作業を見せて、アロンソより2秒から3秒稼ぎ出していた。
もしこのマージンがなければ、2回目のストップでアロンソが前に出て、ハミルトンはもう少し難しいレースを強いられていたはずだ。

ここまで悪い流れできていたハミルトンだが、この勝利で彼は復活するはずだ。元々スピードだけを見ればF1の中でもNo1。つまらないミスさえ避けられれば、最終戦も連勝してもおかしくはない。

▽アロンソの真価
今回のアロンソも予選のスピードだけ見れば、2位はおろか表彰台も難しかった。それだけに優勝争いをしながら2位になった事は驚きである。毎回、アロンソ についてはマシンのパフォーマンス以上の結果を残しており、今のフェラーリは本当に彼に救われている。彼がいなければ今頃、フェラーリはいつものお家騒動 で空中分解寸前だっただろう。

ただ純粋にマシンパフォーマンスでマクラーレンに劣るフェラーリのアロンソが勝利するには、タイヤ交換のタイミングで逆転するしかなかった。
そのため、最初のタイヤ交換はハミルトンよりも早く交換して、逆転する計画だったが、マクラーレンが偶然か合わせ混んできたのかは不明だが、同じラップに タイヤ交換する不運。しかも作業はマクラーレンの方が速く、逆転できなかった。この時点でアロンソはハミルトンよりタイヤの状態がよかったので、同じ周回 でタイヤ交換するのであれば、もう数周伸ばしてレース後半に勝負をかけたかったのだが、この時はマクラーレンの方が上手だった。

その後も、差を広げるハミルトンに対してアロンソはじっくりとタイヤを温存しながら走り、最大で6秒ほどあった差をタイヤ交換直前には3秒以内に縮めて逆転可能な距離にまで追いつく。

そして予定通りハミルトンの方が先に2回目のタイヤ交換に向かう。ここでアロンソはラストスパートを見せて3周遅くピットへ向かう。タイミング的にはぎり ぎり交わせるかどうかというタイミングだったが、不運にもピットインのタイミングでHRTに前をふさがれ、そしてタイヤ交換にも若干手間取りタイムロス。 ハミルトンに先行されてしまった。こうなってしまえばハードをはいたハミルトンをコース上で抜き返すのは難しく、アロンソは2位を受け入れるしかなかっ た。
ただマシンの性能差を考えればアロンソの2位は不可能を可能にしたともいえ、彼も満足の表情だった。

▽可夢偉 1ポイントを獲得
ドイツGP以降ポイント獲得できていなかった可夢偉が久しぶりに1ポイントを獲得し、今回トラブルに見舞われノーポイントに終わったトロ・ロッソに1ポイントの差をつけてコンストラクターズ・ランキング8位に上昇した。

入賞の原因は、スタートで11位までジャンプアップできた事とプライムを先に使い5周目に捨てて、その後はオプションでいいペースで走り続けられたから だ。特にプライムを5周で交換した決断は見事だった。これまでのザウバーは事前に立てた作戦を頑なに変更しないケースが多かった。そのため、ズルズルと周 回数を重ねて、作戦変更したくても残り周回数が少なくできない事が多々あった。だが、今回、レース序盤はプライムでタイムが出ない事が判明すると、素早く ソフトへ交換。この判断は素晴らしかった。

次のブラジルも簡単なレースではないが、天候が荒れる事も多く、ザウバーにもチャンスがあるだろう。
 

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