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移籍を巡るヒュルケンベルグとロータス それぞれの事情

▽ヒュルケンベルグがロータスとの交渉期限を10月末に設定 最近、めざましい活躍を見せているザウバーのニコ・ヒュルケンベルグが、ロータスとの交渉期限を10月末に設定するとの報道があった。だがこれでロータスは10月末までに結論を出すのだろうか。私は彼らが10月末になっても結論を出さないと思う。いや出せないと言った方が正確かもしれない。 関連記事:2013 Rd14 韓国GP 光り輝くヒュルケンベルグ   ▽ロータスがドライバー選びを急がない理由と急げない理由 そもそもロータスがドライバー選定に時間がかかるのはお金がないからである。だから現在、投資家と出資の協議を続けているようだが、少し考えれば投資家から入手した資金は、投資に回るか借入金の返済に回るのが普通であることが理解できる。会社の株式を譲り渡すのであるから、それを活動資金にしていたらタコが自分の足を食べるように、いつかは会社を乗っ取られる。だから万が一投資家との話がまとまったとしても、来年の活動資金のメドは相変わらずたたない。今回、調達する資金は借入金の返済に回るか、ジニキャピタル自身の投資を回収するために使われるだろう。そもそも投資家は出資する以上は1/3以上の出資(会社の決定に対して拒否権が持てる)か50%以上の出資がしたいだろう。だがチーム側はチームの決定に関わられると、何の決定をするにも時間がとられて活動に支障が出てくるし、最悪会社を乗っ取られる可能性がある。 最初は意気投合していた投資家との関係が、事業に問題がでることにより悪化することもよくある。 そのような複雑な出資の交渉が長く続けられているようだが、それが10月末までにまとまるとも思えない。 そしてなによりその投資交渉先がよくわからない。 インフィニティ・レーシングという名前の投資家グループとの取り引きが今年、報道されたことをご記憶の読者の方もいるだろう。名前がインフィニティ・レーシングなので、誤解してしまいそうになるが、日産と関係のある会社ではない。 中東の投資グループや王族関係を含む投資家から構成されていると説明されているが、実態がつかめない。 もっとも個人の資産家のお金を扱う投資会社は、多くの情報を公開する必要がないので、詳細がわからなくても不思議ではないのは確かである。しかし、それにしても実態が不明である。 過去に実態の不明な投資家やスポンサーの話はF1の世界ではありふれていて驚きもしない。その代表的な存在が、スーパーアグリのSS UNITEDであり、トヨタ撤退時のステファンGPである。 関連記事:謎のスーパーアグリF1 新スポンサー SS UNITED ただお金がなくて困っていると、そのような投資家でも断るわけにはいかないのも現実である。他の選択肢があれば、とっくに他と交渉しているだろう。それがないから成功の見通しが少なくても、交渉を続けるしかない。 だからそもそもこの投資話がまとまる可能性は少ないと思っているし、ましてや10月中に契約締結になる可能性はゼロに近く、もし結ばれたならそれは大きな驚きである。となるとニコ・ヒュルケンベルグは別の道を探さなければならない。しかし彼に残された道はフォースインディアへの復帰か、ザウバーへの残留であるが、ザウバーへの残留は厳しそうだ。というのもザウバーも生き残りに必死でお金のないドライバーを乗せる余裕がない。 ニコ・ヒュルケンベルグはここ数戦で、その実力を証明した。だが彼はまた、その結果がシート交渉には影響を与えないことを示唆している。つまり速いドライバーでも資金を求められるというのが、実態なのである。これは昨年の小林可夢偉と同じ状況である。 ロータスは、持参金の額とドライバーの実績、ネームバリューを考慮して、市場の中からベストのドライバーを選定するだろう。そういう意味ではマッサは最有力である。実績はあるし、元フェラーリドライバーという肩書きは、F1のなんたるかをよく知らない投資家にアピールするには、絶好の存在である。残念ながらヒュルケンベルグには才能という宝石をもっているが、それはまだ結果になって表れていない(この場合の結果とは優勝などというわかりやすい結果のことをさす)。つまり彼は一般的には無名の存在である。そしてマッサにはブラジルマネーもあるようである。となるとロータスは10月末までにヒュルケンベルグと契約する必要がない。 だから10月末までに期限を切っても実質、あまり意味がなく、シーズン終了後も話し合いが続くと思われる。当然、他のチームとの交渉も続けられるが、フォースインディアもお金がない以上、ドライバー選定には時間がかかるだろう。 10月末までに期限を設けたのは、契約がまとまらない中で焦りがでている彼のマネージメント側の駆け引きなのだろうが、ロータスに10月末までに契約を結ぶ動機がないので、契約がまとまる可能性は極めて低い。そして今、ロータスの門を多くのドライバーが叩いていて、彼らは焦る必要がない。今、手に入れられる中でベストのマシンをもつのがロータスであるのは誰もが知っているのだから。 彼の様な才能のあるドライバーがお金がないという理由で、シートが獲得できないことがないように願いたい。ただそれもまたF1世界の厳しい現実なのである。去年の可夢偉のように。 関連記事:小林可夢偉 2014年のシート獲得は困難 関連記事:現代移籍事情 なぜ可夢偉は3位になってもシートがないのか?  

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