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幸運が味方したベッテル実力の勝利 バーレーンGP観戦記

11敗で迎えた第3戦 バーレーンGP。ベッテルとハミルトンにとって大きな意味を持つレースになった。

レース前、ベッテルは不利な戦いが予想されていた。彼は今年初めてフロントロウを逃した。3位スタートのベッテルの前には2台のシルバーアロー。

レースはツーストップが予想されたので、スタートでベッテルが2台のメルセデスのうち1台を抜かないと2度のタイヤ交換のタイミングで1台づつメルセデスを抜かなければならない。

これはかなり難易度の高い作戦である。メルセデスは一台を先に入れ、もう一台をベッテルの前で走り続けさせてベッテルの頭を抑えることもでき、こうなってはベッテルにできることは限られる。

だがベッテルはメルセデスの1台ハミルトンをスタートしてかわすことに成功。これは勝利に向けて大きなステップになった。

そしてベッテルの勝利にはほんの少しの幸運も味方した。

トップを走るボッタスを抜けないベッテルは、10周目にタイヤ交換をして仕掛ける。前回同様先に動いたフェラーリだが、なんとその直後にストロールがコース上で立往生してセーフティカーが登場。前回同様ベッテルには不利なタイミングでのセーフティカー登場である。

当然、ペースを落とさなければならないベッテルはタイムが落ちる。その間にボッタスがタイヤ交換に入る。ベッテル絶体絶命のピンチだったのだが、ボッタスがタイヤ交換してコース上に戻った時にトップを走っていたのは、なんとベッテルだった。

これは同時に2台のタイヤ交換をしなければならないメルセデスの状況がベッテルに味方した。ハミルトンの前を走るボッタスにロスタイムはないはずだったのだが、後ろから来るハミルトンは自分の停車位置の直前で止まることを嫌い、ピットレーン入り口でスローダウン。ボッタスがタイヤ交換する時間を稼ごうとした。

ところがメルセデスにしては珍しくボッタスのタイヤ交換に時間がかかった。そしてボッタスがタイヤ交換を終えて動き出す瞬間にハミルトンの後ろで急減速を強いられたリカルドがメルセデスのピットの前を通過。これでボッタスはすぐに飛び出せず、1秒ほど止まっていた時間が長くなり、合計で6.2秒もタイムをロス。これは通常の倍のタイムである。そしてボッタスはピットレーン出口でベッテルにかわされてしまった。

もしこの時メルセデスがいつも通りの速さでタイヤ交換ができて入れば、もしハミルトンがピットレーン入り口でスローダウンしなければ、ボッタスはベッテルの前で戻れていただろう。ハミルトンが普通のスピードでピットに入ってくれば、リカルドはもっと早いタイミングでメルセデスのピット横を通過していた。

しかもハミルトンはこのスローダウンで5秒ストップのペナルティーまで受けて、レース後半ベッテルを追いかける際の大きな障害となった。

もっともこの後のベッテルの走りは素晴らしく、この時にボッタスをかわさなくても優勝できていたかもしれない。だがボッタスに前を抑えられてハミルトンが後方から追い上げて来る状況は、ベッテルのレースをはるかに難しくしただろう。

一見するといいアイディアに見えたハミルトンのスローダウンがメルセデスにとっては大きな痛手になってしまった。