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フェラーリの逆襲:技術革新でSF-24を復活させた道のり

フェラーリがSF-24を再びタイトル争いに戻すまでの道のりは、まさに試練と革新の連続だった。2024年シーズンを通じて、技術的な壁に何度もぶつかりながらも、そのたびに乗り越え、新たな道を切り開いてきた。今回は、そのフェラーリの技術的な挑戦と成長について振り返り、シーズンを通じてチームがどのようにしてSF-24を競争力のあるマシンに仕上げたのかを見ていこう。

シーズン序盤、フェラーリはイモラでのアップデートを成功させ、SF-24に一歩前進をもたらした。しかし、バルセロナでのアップデートは予想外の結果に終わった。高速コーナーでのバウンシングの復活、そしてハンドリングの悪化により、チームはマシンの根本的な問題に直面することとなった。バウンシングがパフォーマンスに悪影響を与えることはよく知られており、タイヤ管理やドライバーの自信にも悪影響を及ぼす。

バスールは、この問題の原因を分析するために3戦分のレースを犠牲にするという苦渋の決断を下し、トラックとファクトリー間の相関性の問題を解決するための取り組みを開始した。バスールは「進歩するために後退する必要があった」と語り、この決断が後の成功への布石となった。

こうして、ハンガリーでの試験的なフロアの導入に向けた開発プログラムが本格化した。夏休み前に導入された、この「進化版」フロアは、風洞実験を行わずにCFD(計算流体力学)を活用して設計された。この試験的なフロアは、バルセロナでの失敗を修正するための正しい方向性を確認するためのものであり、フェラーリはこれによって開発費や時間を大幅に節約することができた。

この成果を受け、オースティンGPに向けたアップデートパッケージの準備が始まった。エンリコ・カルディレの退任後、ディエゴ・トンディとバスールに率いられたチームは、SF-24に安定性を取り戻し、より安定した空力プラットフォームを提供するために完全に新しいフロアに焦点を当てた。

マラネロで風洞での作業が続く中、夏休み前にはもう一つの重要なアップグレードも実施され、ベルギーGPで新しいリアのアンチロールバーが装着された。即効性は見られなかったものの、SF-24はオランダGPで驚くべきタイヤ管理の強さを見せ、これが後に重要な改善となった。

さらに、開発を加速させたフェラーリは、モンツァで「オースティンパッケージ」を早期投入し、完全に再設計されたフロア、改良されたサイドポッド、そして低ダウンフォース仕様のパッケージがSF-24に新たな生命を吹き込んだ。この技術的な大改修により、マシン全体で生成されるダウンフォースが増加し、セットアップの幅も広がった。また、シンガポールでは新しいフロントウィングのプロトタイプが投入され、その空力哲学の研究が進められた。このフロントウィングは、次戦以降のさらなる開発に向けた重要な一歩となった。

フェラーリの開発は、見えない部分でも進んでいた。バスールは以前から、すべての開発が公開されるわけではないと強調してきた。「FIAの文書には、形状が変更された空力パーツのみが記載されている」と彼は述べている。つまり、いくつかの変更は公表する必要がない場合もあり、特に機械的なアップデートがその対象である。例えば、スパでフェラーリが投入したアップデートや、モンツァで投入されたFIAの規定内で許可されたソフトウェアの更新などが該当する。

さらに、レッドブルの抗議を受け、マクラーレンやメルセデスのフロントウィングの柔軟性に関するFIAとの議論の末、フェラーリも柔軟性を向上させるための開発を始めた。シンガポールでは新しいウィングの空力哲学の研究に集中し、予算制限の中でもコストを惜しまず、オースティンではさらに攻めたバージョンを投入した。このバージョンには特定の素材の特性が取り入れられており、来季のフロントウィングでも同様の特性が活用される予定だ。実際、フェラーリは2つのレースで視覚的には同じだが根本的に異なる2種類のフロントウィングを投入し、バスールが「見えない」アップデートと表現した一例となっている。

スペインGPでの失敗から学び、フェラーリはその後のリソースと時間をうまく活用し、再び競争力を持つマシンを作り上げることに成功した。バスールのチームは危機的な状況を乗り越え、シーズン終盤に差し掛かる中でマクラーレンとコンストラクターズタイトルを争える位置にまで回復した。しかし、すべての課題が解決されたわけではなく、2025年プロジェクトに向けたさらなる改良が必要であることも事実だ。

フェラーリのSF-24が再び競争力を取り戻した背景には、バスールのリーダーシップとチーム全体の努力があった。技術的な問題に直面しても諦めず、改善を続ける姿勢が、今シーズンのフェラーリの物語を形作っている。残り3戦で140ポイントが残る中、フェラーリはマクラーレンと36ポイント差でコンストラクターズタイトルを争う位置にいる。今シーズンのフェラーリの挑戦は、チームの技術力と粘り強さがいかに重要であるかを示す好例であり、彼らがどのようにして逆境を乗り越えてきたかを物語っている。