ラスベガスGPの再訪を控え、アストンマーチンのパフォーマンス・ディレクターであるトム・マカローは、その独特な挑戦と展望について語っている。彼のコメントからは、ラスベガスの市街地サーキットがいかにドライバーとチームにとって特異な挑戦であるかが浮かび上がる。
昨年の初開催では、ラスベガスGPはまさに新しい領域への挑戦だった。特に、ラスベガス・ストリップ・サーキットの性質は、通常のサーキットとは一線を画すものであり、トム・マカローはその「標準的なサーキットとは違うトラック」を好むと語っている。低速コーナーが多く、直線区間が長いこのサーキットは、バクー市街地コースに似ており、ダウンフォースとドラッグのバランスが非常に重要となる。
「ラスベガスのようなトラックは、運用面で差をつけるチャンスがある」とトムは語る。このコメントは、彼がこのサーキットに対する戦略的アプローチを重視していることを示している。タイヤのパフォーマンスを引き出すことや予選のトラフィック管理、さらにはセーフティーカーの可能性など、数多くの不確定要素が存在することがラスベガスGPの魅力をさらに増している。
昨年の経験から、チームはサーキットに対する理解を深め、今シーズンはさらに良い結果を期待している。「新しいトラックに行くのは楽しい」とトムは言い、ラスベガスの市街地コースを楽しんだと振り返る。事前のシミュレーションと分析により、初開催ながらチームはサーキットをすぐに攻略することができたという。今年は路面の熟成により、昨年よりもグリップが向上していることが期待されており、さらに挑戦的なレースになるだろう。
特にこのコースでの大きな課題は、直線での速さを追求する一方で、低速コーナーでの安定性を確保することだ。トムは、「ストレートで速くするためにドラッグを減らすと、低速コーナーでの走行が難しくなる」と語り、そのバランスがチームにとっての鍵となることを強調する。また、時速300kmを超えるスピードからのブレーキングも非常に重要で、ドライバーが自信を持ってブレーキングできるよう、十分なダウンフォースが必要だ。
さらに、ラスベガスGPは特異な時間帯に開催されることも大きな特徴だ。現地時間の夜10時にFP2、予選、決勝が始まるというスケジュールは、チームにとっても体力的な挑戦となる。イギリスとの時差は8時間あり、体内時計を調整することが求められる。「これはチャレンジだが、僕たちは慣れている」とトムは語り、週末のセッション開始に合わせてチーム全体のリズムを調整することが重要だと説明する。
トム自身は、レース週末の忙しさが疲労を感じさせないと述べている。セッション、ミーティング、分析、レポート作成など、すべてが詰まった週末はあっという間に過ぎていく。ラスベガスという非日常的な舞台で、日常のように忙しい日々を過ごす彼らの姿勢には、プロフェッショナリズムと情熱が溢れている。
今年のラスベガスGPも、チームにとっては戦略とパフォーマンスのバランスを試される舞台となる。路面の変化やタイヤのグリップ、さらには深夜に及ぶセッションといった要素が絡み合い、挑戦的なレースが繰り広げられるだろう。トム・マカローの言葉からも分かるように、このサーキットでの成功は、一つの要素だけではなく、チーム全体の準備と対応力が鍵を握っている。ラスベガスの煌びやかな夜の下で、どのチームがその挑戦に応えられるのか、期待が高まる。