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GMの新規参戦が認められた理由:キャデラック、新たな挑戦者

2026年からフォーミュラ・ワンに、ゼネラルモーターズのキャデラックブランドが新たに参戦する。この計画は当初「アンドレッティ・キャデラック」としてグリッドに加わることを目指していたが、その実現が困難となり、最終的にGMが主導する「キャデラックF1」として実現する運びとなった。GMはこの新規参戦を通じて、フォーミュラ・ワンにおける新たな時代を築くことを目指している。これはアメリカの巨大企業がF1に本格的に参入することを意味しており、ドライバーの選定やチームの構築といった多くの課題に挑むことになる。

ドライバーの選定: コルトン・ハータは期待の星となるか

新しいキャデラックチームのドライバー選定は、現在最も注目されているテーマの一つだ。特にコルトン・ハータは、アメリカ人ドライバーとして大きな期待を集めている。現在、このプロジェクトを率いるダン・トウリスもハータを支持しているとされる。ハータはインディカーで成功を収めた経験を持ち、その実力は疑いようがないが、F1参戦に必要なスーパーライセンスをまだ取得していない点が課題となっている。この問題を解決することが、ハータのF1参戦に向けた最大の障壁となっている。

ハータ以外にも、アメリカ人ドライバーとしてローガン・サージェントやジャック・クロフォードが候補に挙がっている。サージェントは過去にウィリアムズでF1に参戦した経験があるが、成績が振るわず、クラッシュも多かったためにシートを失っている。一方、クロフォードはアストンマーティンのジュニアドライバーであり、現在F2で健闘している。彼はアンドレッティのフォーミュラEチームでリザーブ兼開発ドライバーも務めており、その成長が期待されている。しかし、キャデラックとしては、経験豊富なドライバーと若手ドライバーのどちらに重点を置くべきか、まだ明確にはなっていない。

一般的に、新しいF1チームは少なくとも一人の経験豊富なドライバーを起用し、もう一人は若手から選ぶ傾向がある。このバランスにより、チームとしての安定性と将来の発展の両方を図ることができる。2026年に向けて、バルテリ・ボッタスや角田裕毅といった経験豊富なドライバー、あるいはフェリペ・ドルゴビッチのような若手が候補として挙がる可能性もある。

GMとアンドレッティの路線: 誰が主体となるのか

このプロジェクトの特徴は、当初「アンドレッティ・キャデラック」として進められていたことにある。しかし、最初の計画は実現が困難となり、アンドレッティの名前は「キャデラックF1」から消えることとなった。かつて、マイケル・アンドレッティはこのプロジェクトを「アメリカのチーム」として位置づけ、アメリカ人ドライバーを積極的に起用する方針を打ち出していた。ただGMの完全な支配下に入ったことで、チームの運営方針やドライバー選定に大きな変化が生じる可能性がある。

GMは、キャデラックブランドを通じて完全に独自のチームを築く意向を持っており、そのためにTWGグローバルとのパートナーシップを結んでいる。このパートナーシップにより、チームの運営はGMの技術とキャデラックのレース経験が融合した形で行われる予定だ。マリオ・アンドレッティ(1978年のF1ワールドチャンピオン)はアンバサダーとして理事会に加わるが、マイケル・アンドレッティは日々の運営には関与せず、顧問的な立場に留まっている。

エンジン供給とワークス化への道筋

キャデラックF1は2026年の初年度にはフェラーリ製エンジンを使用する可能性が高い。フェラーリは顧客チームへのエンジン供給の経験が豊富であり、新規参入チームにとっては理にかなった選択肢となる。恐らくこれには、ギアボックスの供給も含まれた契約になるはずだ。残念ながらホンダはパワーユニットは供給できるが、ギアボックスは開発しておらず、これがGMの決定に大きな影響を与えたことが推測される。2026年の開幕までに、マシンを開発するとなると、時間はいくらあっても足りず、ギアボックスも(恐らくリアサスペンションも)供給を受けると見られる。

さらに、GMは2028年以降に自社製エンジンを開発し、完全なワークスチームとして活動する意向を示している。これにより、キャデラックは単なるスポンサーではなく、自社の技術を全面的に投入した「本格的なワークスチーム」としての地位を確立しようとしている。この動きは、GMがF1において独自の存在感を示す重要な一歩であり、将来的にはF1における技術面でも貢献することが期待されている。

チームの構造と運営: キャデラック・レーシングのイメージ

キャデラックF1チームは、完全にキャデラックブランドに特化したチームとして構築される予定であり、その運営モデルはキャデラックのスポーツカーレース参戦と類似している。具体的には、特定の専門機関が(この場合、TWGグローバル)が製造・開発を担当し、GMが全体のバックアップを行う形でチームを運営する。このモデルは、キャデラック・レーシングのブランドイメージを前面に押し出し、F1の舞台でもそのアイデンティティを強く打ち出すことを目指している。

2026年からの参入初年度は、フェラーリ製エンジンを使用するカスタマーチームとしてスタートし、2028年にはGM/キャデラック製エンジンが完成し、完全なワークスチームへと移行する計画だ。発表されたリバリーは、青と白を基調とし、キャデラック・レーシングのアクセントが加えられたデザインで、アメリカの伝統と先進技術の融合を象徴している。

F1参戦の背景と今後の展望

キャデラックのF1参戦が実現した背景には、アメリカの巨大企業であるGMをF1から締め出す形になれば法的な問題が生じる可能性があったことも一因とされている。しかし、それ以上に、F1側がGMのような大手企業からの本格的な投資を歓迎していたことが大きな要因である。F1のグローバルな市場において、アメリカの存在感を高めることは、商業的な側面でも非常に価値が高い。

新たに加わる11番目のチームであるキャデラックF1は、F1のグリッドに新たな風を吹き込むことが期待されている。現時点でF1は10チーム体制で運営されるが、将来的にさらに多くのチームが参入する可能性についても議論されている。ルール上は最大12チームがエントリー可能だ。例えば、トヨタがハースとの技術パートナーシップを深化させ、本格的にF1へ再参入する可能性なども考慮されており、F1は常に新しい可能性を模索している。

キャデラックの参入は、単なるチーム数の増加に留まらず、F1の多様性と競争力をさらに高める要素となるだろう。GMの支援を受けたキャデラックF1が、F1の舞台でどのように成長し、他のワークスチームに対抗していくのか、その過程は非常に興味深いものとなるだろう。新たな技術開発、アメリカ市場の拡大、そしてF1全体の発展にどのように貢献するのか、今後のキャデラックF1の動向に注目していきたい。