
フェラーリやメルセデスから移籍のオファーがあると噂されたレッドブルのテクニカルディレクターであるエイドリアン・ニューウェイが契約の延長に合意したと発表された。だが彼の役割は変わり、限定的になるようである。これからレッドブルはどうなるのであろうか。
新しい契約でニューウェイは「助言と指導」という役割になる。これはつまり、これまでのように自分が主導して技術部門に関与しないことを意味している。また彼はF1以外の新しい技術プロジェクトに取り組むと発表されたが、その詳細な内容は後日、発表されるとされた。
今後数ヶ月間、ニューウェイは今の仕事に関与するが、その後は少し離れた立場で助言や指導をすることになる。
「彼らは質問することができるし、アドバイスが欲しければ、それを与える事ができる」とニューウェイは述べている。ただこれまでのように、彼が主導的な立場で仕事をするのではなく、あくまでも助言する立場になれば、仕事の進め方は大きく変わる。
この立場の変更に関してニューウェイはF1のレギュレーションがとても制限されており、創造性を発揮する余地が少なくなっていることをあげている。
「今のレギュレーションはとても制限的だと感じている。残念だ」
「自分の能力が他の領域で適用できるかみてみたい」
ニューウェイはフェラーリからはオファーがあったことを認め、それを断ったことを明らかにした。
「フェラーリに関しては多くの話が合ったが、重要なのは私は初期からレッドブルに参加し、深く関与して、チームを発展させてきた」
「そこから逃げることは、妻を見捨てるようなものだ」
だがニューウェイはF1のレギュレーションが、興奮できるものに変更されれば、完全に関与する立場に戻ることはできると述べた。
「それは可能だ。他のことに挑戦し、異なる領域に挑みたい時期に来ている。新しい刺激になるが、それらは一時的だ」
「私はまだ55歳であり、ビーチに行く準備はできていない。新しいことをやって、その後どうなるのか見てみよう」
今後数ヶ月は今までと同じように、完全にコミットするということは、来年のマシンはニューウェイのマシンと言うことである。だがフェラーリがロリー・バーンがアドバイザーになってから、競争力を失ったようにレッドブルにも大きな影響がある事は間違いがない。
これはニューウェイが新しいプロジェクトに挑戦するという意味もあるが、部下達に新しい役割を与える目的もあると見られる。最近、レッドブルからは上級エンジニアがライバルチームへ移籍するケースが多発していた。レッドブルでは、ニューウェイの代わりに技術部門のトップになることは、事実上不可能で、それ以上の役割を求めれば、他のチームに行かざるを得ない。初期からレッドブルの技術部門を率いてきたニューウェイはそこまで考えていると思う。
今後、ニューウェイはどの程度、仕事から離れるのか、どの場所で新しいプロジェクトを進めるのかにより、影響の大きさは変わってくると思われる。だが少なくとも今後、数年間で徐々にその影響が現れてくる。そしてニューウェイが仕事を離れることは、ベッテルの今後のキャリアにも大きな影響を与えるであろう。
そういう意味では、フェラーリは今回、ニューウェイの獲得はならなかったが、彼が主導的な立場を離れることで、レッドブルの競争力が落ちれば、半分はその目的を達成できたことになるかもしれない。
ニューウェイはレイトンハウスでチーフデザイナーのキャリアを始め、その後ウィリアムズとマクラーレンでタイトルを獲得したマシンを開発。2006年シーズン序盤にレッドブルにチーフテクニカルオフィサーとして加入。数年は新しいチームで苦労したものの、チーム力がアップした2009年から競争力を持ち始め、2010年にドライバーチャンピオンとコンストラクターズチャンピオンのダブルタイトルを獲得。それから昨年まで4年連続でダブルタイトルを連覇している。
ニューウェイがレッドブルで4連覇した時代はニューウェイ時代として歴史に残るだろうし、今後はニューウェイ後時代として記憶に残るだろう。