ウィリアムズ 完全復活への試練 ボッタスは優勝できたのか?
オーストリアGPでメルセデスの方がペースが速く、最初からウィリアムズには勝ち目がなかったのであろうか?状況を見るとそうとも言えるし、そうでないとも言えそうである。
予選ではメルセデスの2台が自分達のミスでQ3の2度目のアタックをダメにした。ハミルトンはターン2で飛び出し、それが原因の黄旗が出て、ハミルトンの後でアタック中のロズベルグは諦めなければならなかった。これはモナコGPでの逆のパターンである。
そういう理由もあり、ウィリアムズがフロントロウを独占したのであるが、レースペースも決して悪くなかった。メルセデスより速いわけではないが、遅いわけでもない。レースの関して言えばほぼ互角のタイムを記録していた。しかも最高速はウィリアムズの方が高く、一度ウィリアムズに前に行かれると、メルセデスが彼らをかわすのはタイヤ交換時だけというのが日曜日の状況であった。
メルセデスの作戦担当者は、このレースの鍵になるのは積極性であると考えていた。つまりウィリアムズより早くタイヤ交換をして、スーパーソフトからソフトへ履き替えるのである。今年のウィリアムズはタイヤのタレが厳しく、長い距離を走る自信がなかった。実際、金曜日のロングランのタイムもそれを証明している。
ウィリアムズもそれは理解していたが、彼らはロズベルグが11周目にタイヤ交換する際に反応しなかった。最初のスティントで1-2だったウィリアムズは、最初のタイヤ交換が終わった後では、2位と4位に後退していた。
ただこれは理解できない事もない。彼らは自分達のデータから早くタイヤ交換して、長い距離を走った場合、レース終盤でタイヤがもたない危険性がある事を理解していたからである。
だがウィリアムズは2回目のタイヤ交換の時も、ハミルトンのピットインに反応しなかった。ハミルトンは39周目に2度目のタイヤ交換を実施した。
最初のタイヤ交換でメルセデスは素晴らしいアンダーカット成し遂げた。3位のロズベルグは11周目にタイヤ交換し、ハミルトンは13周目にタイヤ交換した。それに対してマッサは14周目、ボッタスは15周目にタイヤ交換。これでロズベルグは実質的な首位に、4位だったハミルトンは3位に上昇した。マッサは1位だったのに、アウトラップでタイヤのウォームアップに問題があり、4位にまで後退した。
その後、しばらくはソフトを履いてタイヤ交換を先延ばしにしていたペレスが首位だったが、彼がタイヤ交換してロズベルグの前が空いても、2位のボッタスとの差は縮まらない。2回目のタイヤ交換が迫ってきてもロズベルグとボッタスの差はわずかに2秒。これは今年のメルセデスの圧倒的なパフォーマンスを考えると、素晴らしい接近戦である。
39周目にハミルトンがボッタスをアンダーカットするためにピットへ向かう。だがこの時もボッタスは反応しなかった。この時点でボッタスはソフトタイヤで24周を周回。残りは32周である。ウィリアムズはこの時点でも最後までタイヤがもつ自信がなかった。
では本当にボッタスがハミルトンに反応した場合、最後までタイヤがもたなかっただろうか。答えは最後までもったである。48周目から最後までのボッタスのタイムを見ると、極端な落ち込みは見られない。彼の最終ラップのタイムは1分12秒8でこれは彼のベストラップからわずかに0.3秒おちである。これは彼が30周走ったソフトタイヤで記録したタイムである。
この数字を見るともう2周早くタイヤ交換してもボッタスのタイヤは最後までもっていた。つまり2位は可能だった。それにボッタスが2周早くタイヤ交換しても、失うものはほとんどなかった。後ろはチームメイトのマッサで、5位のアロンソを抑えていた。例えボッタスが2周早くタイヤ交換してタイヤがダメになっても、3位はほぼ確定で、さらに最悪のケースを考えても、マッサが3位になってボッタスが4位であり、ウィリアムズはチームとして何も失わなかった。
さらにいうとメルセデスの無線では、ロズベルグに先行するペレスと違うラインを走り、マシンを冷却するように指示が出ていたし、ハミルトンにもブレーキが厳しいと警告されていた。もしボッタスがハミルトンの前を走ることができていれば、ハミルトンのブレーキは更に厳しくなっていた。
メルセデス代表のトト・ウルフは、レース序盤から中盤は温度管理が難しかったと述べている。更に彼は2回目のタイヤ交換を済ませた後は、レース中で一番楽だったと話している。
ウィリアムズはマシン特性にあったコースにも助けられて、素晴らしい結果を残した。だがもう少し積極的にいけば、優勝も狙えたし、2位はほぼ確実に取れていた。
彼らが優勝を目指すのであれば、もっと積極的に動かなければならないし、他とは違う事をしなければならない。それには目の前にぶら下がっている表彰台や大量のポイントをリスクにさらすことになる。だがその勇気がなければ、勝利はつかみ取れない。
今後もスパやモンツァでウィリアムズは強い競争力を発揮するだろう。そこで彼らが今回の一件をどう分析し、どう行動してくるのかはとても興味深い。
彼らがその勇気を見せた時、ウィリアムズは真の復活を成し遂げるであろう。
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