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2010 Rd9 ヨーロッパGP観戦記

 ▽スーパーオーバーテイク 可夢偉 本当に素晴らしい可夢偉のオーバーテイクだった。 セーフティー・カーが出た時の判断も素晴らしかった。 今回、ザウバーは二台のタイヤ選択を分けてきた。 デ・ラ・ロサはソフトスタート、可夢偉はハードスタートを選択。 だから可夢偉はSCが出ても、ステイアウトすることに迷いはなかった。 ウェバーのクラッシュでSCが出たときに、ほとんどのマシンがピットに向かう中、可夢偉はステイアウトを選択し3位に上がる。 今回、このサーキットではタイヤのタレが少なく、燃料が少なくなるに従いラップタイムがどんどん向上する事も可夢偉の判断の理由にあった。 つまり極端なロングスティントをしてもタイヤのタレは全く問題がなかった。 ただいくらオーバーテイクが難しいこのサーキットでも、後ろからくるバトンとのマシンの性能差は大きく、彼に抜かれるのは仕方がないと諦めていた。 そころがそこからの可夢偉のラップタイムは驚くべきものだった。 トップ2よりは遅いものの遜色のないタイムを連発。 バトンの方が速いラップタイムを出せたと思うが、その差はコンマ数秒レベル。 これ位の差であれば、このサーキットではFダクトを持つマクラーレンでも抜くのは難しい。 正直言ってザウバーとマクラーレンのタイム差はコンマ数秒レベルではなく秒単位である。 予選での可夢偉とバトンとの差は1秒。 それを考えると可夢偉の走りは見事としかいいようがない走りだった。 しかも可夢偉はこれだけ速いラップタイムで走りつつ、タイヤを痛めないような走りを心がけていた。 後ろからバトンに追い立てられれば、焦ってアクセルをあけ、リアを滑らせてタイヤの消耗が早く進んでもおかしくはない。 だが冷静な可夢偉は、低速コーナーの出口だけきちんと立ち上げれば抜かれないことを理解した上で、タイヤをいたわって走った。 これは誰にでもできることではない。 こうして可夢偉は3位をキープしたまま、レース終盤に突入する。

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 問題は他のドライバーはタイヤ交換義務を果たしていたが、可夢偉はタイヤ交換をしなければいけかったこと。 いつピットに入るか? それが一番のポイントとなった。 レース終盤のアロンソとのラップタイムは、ほぼ同じ。 可夢偉自身のタイムも伸び悩んでいた。 このまま最終ラップまで引っ張っても、差は広がらないとみたザウバーは、53周目にタイヤ交換を決断。 このタイヤ交換の時期については賛否両論あるようだが、これは絶妙のタイミングだったと思う。 というのもタイム差が広げられない状況だったので、引っ張っても意味がなかったからだ。 タイヤ交換が素早くできればブエミの前で戻れるし、アロンソの後ろで戻っても軽い燃料で、スーパーソフトをはいて走ることができ、タイム的にはライバル二人より速く走れる。 終了1周前にタイヤ交換すると、このスーパーソフトの美味しい部分を1周しか使えない。 それらを考えるとこのタイミングは絶妙だった。 そして、可夢偉がピットに向かう。 この時可夢偉が、ブエミとアロンソの前に出られるかは微妙な状況だった。 そして、可夢偉がピットアウトしたのは、アロンソの直後。 可夢偉のストップ時間は4秒前後で、悪くはないタイムだが、3秒前半で交換できていれば、ブエミの前に出ることができた。 残りは4周あったが、このサーキットはミスがない限り抜くのは難しい。 だから可夢偉がアロンソの直後まではいけても、抜くのは不可能であると思われた。 ところが、可夢偉は残り2周のヘアピンでアロンソを抜いた。 彼はアウトラップでタイヤを温め、次のラップでアロンソの速い部分、遅い部分を見極めた。 アロンソがヘアピンの入口でのブレーキングするのが早いのを確認すると、残り2周のヘアピンで、ズバッとインに飛び込んだ。 アロンソはレース終盤でブレーキが厳しかったのだろう。 アロンソが抵抗することさえ、できない鮮やかなオーバーテイクだった。 そして最終ラップの最終コーナーでブエミのインを突き、見事に追い抜き7位を獲得。 普通、いくらタイヤがフレッシュとはいえ最終コーナーではなかなか抜けない。 オーバーテイクの難しいこのサーキットで、フレッシュなスーパーソフトを履いていたとはいえ、連続のオーバーテイクは見事としか言いようがない。 昨年から見せてくれているが、可夢偉の勝負時に仕掛ける決断力とそれを実行する技術には目を見張らされる。 追い抜きを仕掛けるだけだと誰でもできるが、彼の場合ミスが少ないことが特筆される。 お世辞にもこのサーキットにあっていないザウバーでのこの走り。 今年後何回、我々を楽しませてくれるのか、楽しみである。 ▽ベッテル 不安の残る勝利 抜けないサーキットであるバレンシア。 当然予選の順位が重要となる。 その点、ポール・ポジションを獲得したベッテルが有利な状況。 しかも有利な奇数列グリッドということで、3位のハミルトンも優勝を狙う。 最終コーナーが左回りで、実質の1コーナーであるターン2が右回り。 その為、奇数列の有利さは、ほかのサーキットよりも少ないが、それでも普段レースのおこなわれない、このサーキットでは若干奇数列が有利な状況に代わりはない。 ベッテルは順調にスタートを切るが、ハミルトンが抜群のスタートダッシュを見せて、まずはウェバーを抜き、ベッテルに襲いかかる。 この時は抜けずにハミルトンとベッテルは接触。 多少のバイブレーションはあったようだが、ハミルトンは2位でレースを進める。 ウェバーはターン2に入口で少し早くブレーキを踏んだのか、失速。 フェラーリの二台にも抜かれてオープニングラップをなんと9位で通過する。 そしてそれがこの後の大きなクラッシュへとつながる。 遅いマシンに前をふさがれたウェバーは早々と7周目にタイヤ交換。 そしてピットアウト後にロータスのコバライネンを抜くときに接触。 1回転する大きなクラッシュだったが、ウェバーは無事。 F1の安全性の高さを証明するかたちとなった。 だがこれでウェバーは無得点に終わり、選手権ランキングを4位に落としてしまう。 このアクシデントは、同一ラップだったコバライネンがウェバーに抜かれまいと牽制したのだが、ブレーキング開始ポイントがロータスとレッドブルでは違いすぎ、コバライネンが早くブレーキを踏んだために、ウェバーがそこに突っ込んだのが原因。 確かに同一ラップなので、コバライネンの行動は問題ないのかもしれないが、この二台ではスピード差がありすぎ、抵抗するのに無理があったのではないだろうか。 これでレースは、ベッテルとハミルトンの一騎打ちとなるはずだったが、ハミルトンがSCを抜いてしまうという事件が発生。 ハミルトンの直後を走っていたフェラーリ二台はSCの後ろについて走り大きくタイムロス。 ピットインのタイミングで、アロンソとマッサは大きく順位を落とし、優勝戦線から脱落した。 結果的にこれでピットイン後に2位で復帰できたハミルトンだったが、ドライブスルーペナルティで大きく順位を落とすはずだった。 ところが、ペナルティが出るのに時間がかかり、その間にハミルトンは3位以下のマシンの差を付ける。 ハミルトンがドライブスルーペナルティを実行するときには、3位以下のマシンに差を付けて、2位のままレースに復帰。 ややペースの遅い可夢偉が3位にいたことも、ハミルトンにとっては有利に働いた。 これでハミルトンは、ベッテルから大きく離れて優勝は難しくなったが、順位的には一つもロスをすることがなかった。 これにアロンソが怒ったことは、チーム無線でも確認されている。 アロンソの怒りも当然である。 彼らはまじめにSCの後ろに入り大きく順位を落としたのに、SCの前に出たハミルトンは2位のままでは納得いかないだろう。 ではなぜFIAはハミルトンにペナルティを出すのが遅れたのか。 それはハミルトンがSCを追い抜くタイミングが微妙で、ハミルトンの車載カメラだけでは判断できず、ペナルティを課すにあたり、FIAはヘリコプターから撮影した上空から映像や、GPSのデータを取り出し解析していたからであり、一部の人が言っているような陰謀はなかった。 ハミルトンのペナルティでベッテルはペースを落として走ることができた。 これによりブレーキを労りながら、順調に周回をこなして危なげなくフィニッシュ。 ようやく遅すぎる今シーズン2勝目をマークした。 だが、レッドブルもこれで喜んでばかりもいられない。 というのも、このレースでマクラーレンは大きなアップデートを持ち込んでいない。 なのでマクラーレン自身はレースウィークエンド前はこのレースに関して悲観的であった。 ところが予選でこそレッドブルに差を付けられたが、これはハミルトンが最後のアタックでミスしたからであり実力的には、ここまで大きな差はなかっただろう。 さらにレースペースにおいてハミルトンはベッテルとほぼ同じペースで走ることができていた。 ベッテルの独走に見えたこのレースだが、ペナルティがなければどうなっていたかはわからない。 信頼性の不安を抱えるベッテルだけに、ハミルトンに圧力を掛けられていれば終盤にブレーキや駆動系にトラブルが出ていた可能性もある。 だからベッテルはレース中盤からプッシュしなくて済んだのは、大きな助けになった。 そしてマクラーレンは次のシルバーストーンで大きなアップデートを持ち込む予定だ。 レッドブル対マクラーレンの戦いがますますヒートアップするのは間違いがない。

 

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