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2010 Rd14 イタリアGP観戦記

JUGEMテーマ:スポーツ

 ▽緊張感あふれる超高速バトル 息詰まるアロンソとバトンの攻防だった。 のバトンは、大きなリアウィングを付けて、ダウンフォース重視のセッティング。 直線スピードは自慢のFダクトで稼ぐ目論見だが、バトンの予選での直線スピードは22位(これより下の二台は資金不足で軽いウィングを持ち込めなかったHRTの二台なので、これは実質最下位)でしかなく、今回Fダクト搭載を見送ったチームメイトのハミルトンよりトップスピードは14Kmも劣っていた。 バトンはトップスピードは犠牲にしても、ダウンフォース量を多くしブレーキングの安定性やコーナーリング速度、立ち上がりのトラクションでタイムを稼ぐ作戦を採用。 これは超高速サーキットのモンツァとしては異例のセッティングである。 マシンが安定するので、スライドが少なくタイヤのパフォーマンスを長距離持続できる効果も見込んでいる。 ただトップスピードが不足する分、レースで前のクルマを追い越すのはかなり困難な仕事となる。 その為、バトンがこのレースを制するにはスタートでアロンソの前に出ることが条件だった。 そしてバトンは決して悪くないスタートをきったアロンソを、最高のスタートでかわし、レースをリードする。 トップスピードに勝るアロンソは、バトンに近づけるのだが、直線前のコーナーでバトンに近づくとバトンのマシンが巻き起こす乱気流で、マシンの挙動が乱れるので、コーナーリング中は距離をとらざるを得ず、直線で抜くことができない。 バトンがダウンフォース量が多く、コーナーで速いのもアロンソを苦しめる。 バトンとアロンソは共に全体ベストのラップタイムを交互に記録しながら、互いに牽制する心理戦を繰り広げていた。 時にはプッシュし、時にはタイヤをいたわり、時には燃料をセーブしながら、勝負時を探る二台。 派手なオーバーテイクシーンこそないが、非常に緊迫感あふれるレースとなった。

 ブリヂストンタイヤの浜島さんはレース前、ソフトタイヤ、ハードタイヤともレース距離を走りきれるだけの耐久性があるので、ピット戦略にはかなり幅があると予想していた。 実際、ソフト・タイヤでスタートした上位3台はレース半ばを過ぎてもタイヤ交換をせずに走り続ける。 だが、これはバトンにとってはあまりありがたくなかった。 彼としてはダウンフォースを付けている自分の方がタイヤの持ちがいいので、タイヤがたれてくれた方が都合が良かったのだが、これで彼のアドバンテージの一つがなくなってしまった。 そして迎えた36周目、バトンが上位三台のトップを切ってピットへ向かう。 だがこれには疑問が残る。 確かにタイムは伸びなくなってきてはいたが、極端に落ち込んでいるわけでもなく、タイヤの寿命としては、まだまだいけたはず。 実際ベッテルは残り1周までタイヤ交換せずに、逆転で4位を得ている。 他のドライバーのタイムを見ても、タイヤ交換直後にペースが極端に上がっていなかったので、フェラーリが動くまで我慢する方が良かったのではないだろうか。 ハードタイヤが暖まるのに2~3周かかることも懸念されていた。 マクラーレンにとってベストのシナリオは、フェラーリとの同時ピットインだったはずだ。 マクラーレンが先に動かなければ、前に出たいフェラーリは必ず先に動かざるを得ない。 フェラーリはピットインのタイミングをずらして、そのギャップを利用して逆転するしかない状況だった。 勝負の主導権はマクラーレンが握っていた。 だが我慢しきれなかったのはマクラーレンで、バトンを先にピットに向かわせる。 マクラーレンとしては他のマシンのアウトラップ後のタイムを見て、これなら順位をキープできると見込んだのだろう。 実際、アロンソはコース上のタイムだけでは、バトンを抜くのはできなかった。 アロンソはインラップで0.6秒、タイヤ交換作業で0.8秒稼ぎ、1コーナーのギリギリの勝負で逆転に成功。 もしマクラーレンがタイヤ交換で0.1秒でも速く作業できていれば、アロンソの逆転はなかった。 そういう意味でマクラーレンの判断は間違ってはいなかったのであるが、結果的に逆転を許してしまった。 もし同時にピットインしていればインラップの差はなかったわけで、逆転はなかった。 バトンもタイヤ交換後、「どうして僕たちは先にピットインしたんだ?」とチームに尋ねている。 チームからの回答は、「新しいタイヤの方が速かった」。 これは確かにその通りなのだが、ピット作業で0.8秒も多くかかってしまっては、逆転を許しても仕方がないだろう。 ただ決してマクラーレンのピット作業が遅かったわけではなく、フェラーリの作業が速かったのだ。 アロンソはバトンの後ろを走る中で、当然タイヤをいたわりつつ、燃料をセーブして走っていた。 バトンがピットに入ったそのラップに、全てを全開にしての逆転勝利。 インラップの速さとチームのピット作業の速さの両方が要因となった、チーム全体の勝利だった。 彼にとって、フェラーリに乗ってイタリアGPで勝ったことも含めて、会心の勝利だっただろう。 3位のマッサも終始バトンとアロンソと同ペースで走れていたのだが、19周目に二度マシンをダートに出して、大幅にタイムロス。 結局、そのタイム差を最後まで埋めることができなかった。 ピット作業自体は、三台の中で最速だっただけに残念だった。 ▽痛すぎるハミルトンのリタイヤ ハミルトンにとっては痛恨のリタイヤとなった。 マクラーレンにとってモンツァは得意なサーキットであり、チャンピオンを狙うハミルトンとしては、絶対に勝ちたいレースだった。 ところが彼は予選で、セッティングを間違えてしまった。 トップスピードを稼ぎたい彼は、Fダクトの搭載を見送り、モンツァ・スペシャルの小さいウィングを搭載。 これは金曜日フリー走行でのタイムが良かったので、選択をしたのだろうが、土曜日午後の段階では、それは最速とは言えなかった。 彼のマシンはトップスピードは全体で4位の速さを見せるのだが、ダウンフォース量を減らしすぎた為、コーナーで安定せずタイムロスし、予選では5位に沈む。 これは、安定しないマシンでもコントロールできるハミルトンならではのセッティングなのだが、今回は極端にダウンフォースを削りすぎた。 今のレギュレーションでは土曜日のフリー走行前には、ギア比を申告してそれからは変更できない。 トップスピードで10km以上違うFダクト付きとFダクト抜きのマシンでは当然、ギア比も変わってくる。 ハミルトンがセットアップのミスに気づいたときには、既に手遅れであった。 それでもトップスピードの速い彼は、決勝では希望があった。 スタートもうまく決めてウェバーをかわし、マッサを攻め立てるが、ロッジアのシケインの一つめでマッサの左リアタイヤと彼の右フロンタイヤが接触。 ハミルトンの右トラック・ロッドが折れて、次のカーブを曲がりきれずにリタイヤとなる。 チャンピオンを争うドライバーがあそこで中途半端に飛び込むのは危険という声もあろうが、あの場面トップスピードで勝るハミルトンは、アロンソを急追して、マッサのイン側にいた。 ハミルトンはマッサを抜きに言っているようには見えず、逆に引いて接触を避けているように見える。 結果的にリタイヤとなったので、不注意と言えば不注意なのだが、ギリギリの勝負を挑んでいる以上、避けられない接触だったと思う。 実際スタート直後のシケインでも、バトンとアロンソが軽く接触して、バトンはディフューザーをアロンソはフロントノーズを破損している。 彼らのレースもオープニングラップで終わっていた可能性もあった。 今年はマシンの性能差が少なく、予選とオープニングラップに勝負を掛けなければならない。 結果的に不注意だったかもしれないが、攻めるのがハミルトンのスタイルであり、今回の接触も紙一重であったと思う。 勝たなければいけないレースを落としたハミルトンは、ピットに戻る際もヘルメットを脱がないほど、落胆していたが、それでも彼はリタイアしたにもかかわらず、ランキングではトップのウェバーに5ポイント差の2位である。 これは決して悪い位置ではない。 今後はレッドブル優位のサーキットが続くが、荒れるレースが続くと思わるのでまだまだ、チャンピオンへの道は大きく開かれている。 ▽明暗分かれたレッドブルのチームメイト このところ予選・決勝で上位を走るベッテルが終わってみればウェバーの後ろというレースが多かったのだが、今回はクレバーなレース展開でベッテルはウェバーを上回った。 予選でウェバーの後ろだったベッテルは1周目にウェバーをかわす。 だがベッテルは、20周目のアスカリシケインの立ち上がりで、スピードの伸びが鈍いと感じた。 これを彼はエンジントラブルと考えスピードダウン。 20周目、21周目に掛けて彼は4秒を失い、ウェバーに逆転を許す。 ところが22周目以降は何の問題もなくタイムが回復。 実に不思議な現象だったが、原因はエンジンではなく、ブレーキにあった。 コーナーで四つあるのブレーキの一つがディスクをリリースせず、コーナー立ち上がりでブレーキをかけ続ける状態になり、ベッテルはパワーロスを感じたわけだ。 エンジニアがデータを解析した結果、エンジンに異常がないことが判明し、その後ベッテルのペースは戻った。 結局、彼はタイヤ交換をファイナル・ラップ直前まで引っ張り、4位のポジションをキープしたまま、レースに復帰。 逆転で4位をものにした。 だがタイヤ交換したベッテルのフロントタイヤ イン側にはベルトコードがうっすらと見えており、ギリギリの状態だった。 そんな状況の中でもニコと遜色のないタイムを出していたベッテルの素晴らしい走りだった。 これは作戦面で、あまりうまくないレッドブルの久しぶりのクリーンヒットではないだろか。 チームメイトのウェバーは、フラストレーションのたまるレースとなった。 彼は終始、ヒュルケンベルグに抑え込まれていて、彼本来のペースで走れない。 ヒュルケンベルグは何回かシケインをショートカットするのだが、ペナルティは出ずに、ウェバーの前に居座る。 最終的にはコース上でヒュルケンベルグを抜いたのが、その前にもう一人ニコがいて彼のペースも上がらずに、ふたをされる格好となる。 ロズベルグの後ろを走るウェバーは結局、ベッテルがニコ・ロズベルグの前で戻ったことにより、6位でフィニッシュ。 モンツァはレッドブルにとって不得意なコースであり、いかに得点差を広げられないようにするのが、彼らにとってのポイントだったが、ハミルトンがリタイヤしたことでランキングトップに返り咲き悪い結果ではなかったのだが、ウェバーにとっては早く忘れたいレースの一つになっただろう。 ▽走る前に終わった可夢偉 苦手と見られていたモンツァでダウンフォースを極限にまで減らしトップスピードを稼いで、コーナーでは自分で頑張る走りで予選13位に付けた可夢偉だったが、彼のレースは走り出す前に終わってしまった。 ダミー・グリッドに向かうラップでギアチェンジができなくなり、そのままピットへ戻る。 ECUのトラブルからギアギアチェンジができなくなったのだが、ピットが閉まる前に修復できずに、ピットレーンスタートを選択。 ECUを交換しスタート直後にピットレーン出口に向かったのだが、そのままギアボックスが壊れ、1周も走れずにリタイヤ。 レースペース自体は悪くないと見られていただけに、残念な結果となってしまった。 だがここは決してザウバー向きのサーキットではなかっただけに、ここでトラブルがでて良かったのではないだろうか。 得意なサーキットで、上位を走っているときにトラブルが出るよりは、よほどましである。

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