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2010 Rd16 日本GP観戦記

 ▽ベッテルとウェバーの光と影

ベッテルの速さは手がつけられなかった。 レッドブルが鈴鹿で最速なのは事前に予想されてはいた。 彼らのマシンは優れたエアロダイナミクスをもっており、鈴鹿のような中高速コーナーの多いサーキットにはおあつらえ向きである。 それでもここまで差があると、他のチームは絶望的になる。 ベッテルは予選ですら100%の走りをしていなかった。 スタートを成功させた彼はそのままゴールまでひとり旅。 ウェバーとの差はそれほど開いてはいなかったが、それは彼がギャップをコントロールしていたからであり、その気になれば10秒や20秒は簡単に差を付けられただろう。 彼は残り数周の時点でファステスト・ラップを記録する余裕すらあった。 最速マシンと最速ドライバーの共演。 ベッテルによる、ベッテルのための日本GP。 このレースを一言で表すとそう言うことだろう。

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 一方、ベッテルに差を付けられたウェバーはつらい立場だ。 ライバルチームは、スピード不足をマシンの責任にできるが、彼はできない。 ベッテルと同じマシンにのり一方的に、やられるドライバーの立場はつらい。 彼はフリー走行中から、ベッテルを上回るタイムを記録できなかった。 予選でもベッテルに及ばず2位スタート。 最終的に2位になれたが、これはウェバーにとっては幸運であった。 ウェバーのスタートは悪くはなかったが奇数グリッドのクビサが路面状況を活かして、ウェバーの前に出たにもかかわらず、レース序盤でリタイヤ。 この週末、強力な走りを見せていたクビサが走り続けていれば、最速レッドブルにのるウェバーと言えども、リスクをかけてオーバーテイクするのは難しかっただろう。 このレースの結果、ランキングトップのウェバーと2位に浮上したベッテルとアロンソの差は14ポイント。 これは追う二人が残り3レースを勝てば、ウェバーの順位に関係なく逆転できる得点差である。 ウェバーはリスクを冒してでも勝ちに行かざるを得ないが、それでリタイヤしては元も子もない、難しい状況だ。 彼はこれまでタイトル争いをしたことがない。 本当のプレッシャーが襲いかかるのはこれからだ。 彼はキャリアが長く、プレッシャーをコントロールできるという意見もあるが、それは少々疑問である。 タイトル争いはものすごく大きなプレッシャーがかかり、それは他のどのプレッシャーとも別物である。 長い下積み期間を経て、このチャンスをつかんだウェバーとしては、絶対に逃したくないチャンス。 ライバルのベッテルは速くまだ若く今後もチャンスはあるし、追う立場だから気分的には楽である。 彼には勝ち続けるしかタイトルへの道は残されていない。 だから彼は攻め続けるだけである。 アロンソは2度のタイトル獲得経験があり、どうすればタイトルが取れるかよく分かっている。 この二人を相手にチャンピオン争いを制するのは並大抵のことではない。 もちろん彼はランキングトップであり、残り3レースで一つ勝てば、タイトルが取れる可能性が高く、有利な立場であることは間違いない。 だが歴史は追われる者が弱いと言うことを証明している。 彼がチャンピオンになれるかどうか、真の実力が残り3レースで試される。 ▽アロンソ プロフェッショナル・ドライバー レース前からアロンソは、このレースでレッドブルのスピードに対抗するのは難しいのは分かっていたはずだ。 ただ彼はレッドブルの後ろで指をくわえて見ている男ではない。 彼の目標は予選3位からスタートして、奇数グリッドを生かしてスタートでウェバーを抜き、そのまま2位でフィニッシュ。 これが彼の日本GPにおける望みうる最高の成果だった。 ところがタイトルを争うアロンソの前に立ちふさがったのは、レッドブルではなく、クビサだった。 後半戦に入り改良されたルノーをドライブするクビサは、この難攻不落のコースを見事に攻略し、予選で3位を得る。 そしてスタートでは奇数グリッドを活かして、スタートでウェバーの前に出る。 ウェバーとアロンソにとっては最悪の展開である。 とろこがスタート直後のクラッシュでSC展開中に、クビサは突然ストップ。 なんとタイヤが外れてしまってリタイヤとなった。 表彰台を狙える位置にいただけに、この単純なミスはあまりにも痛かった。 信じられない展開だったが、タイトルを争うウェバーとアロンソには幸運だったし、ベッテルとクビサにとっては不運だった。 アロンソは狙っていた2位は取れなかったが、それでも3位でフィニッシュ。 フォーミュラ・レッドブル以外のクラスではトップだったのだから、それなりに満足だっただろう。 勝てないレースでは確実にポイントを取る。 チャンピオンを取るための道を彼は知っている。 ▽ハミルトン 最高でない週末 ハミルトンにとっては悪循環の週末となった。 最初のつまずきはフリー走行1回目。 デグナー一つめをオーバースピードで飛び込んだ彼は、今回低められた外側の縁石に乗り上げ、コントロールを乱し、デグナー二個目を飛び出しクラッシュ。 結局、今回持ち込んだ新しいFダクトの比較テストもタイヤのロングランテストもできずじまい。 さすがの彼もクラッシュ直後は、少し落ち込んだ様子だった。 クラッシュして壊した新型Fダクトは急遽イギリスから緊急空輸。 にもかかわらず金曜日にテストができず比較データがなく、チームはリスクがあるということで、予選決勝での投入を見送るという状況に陥ってしまった。 そしてフリー走行3回目、彼のギアボックスの油圧が下がり、ギアボックス交換せざるを得なくなってしまった。 これで彼はスターティング・グリッドで5番手降格が決定。 ほとんどフリー走行を走れない状況の中、レッドブル二台の後ろの3番手タイムを記録する素晴らしい走りを見せていただけに、悔やみきれないギアボックス交換となった。 8位からスタートとなったハミルトンはスタート直後に5位まで順位を上げるが、その後3速が使えない事態に陥り、完走も危ぶまれたが、なんとかフィニッシュ。 さらにマクラーレンは予選で判断ミスをした。 ハードタイヤを履いてバトンをQ3最後のアタックに出したのはいい。 これまでもバトンは、ソフトタイヤの感触を嫌いハードタイヤを選択したこともあった。 問題はこの時、バトンのマシンに3回アタックできる燃料を積んで出したことだ。 この時バトンのマシンは他のマシンより7Kgから8Kg重かったと思う。 確かにハードタイヤは3回アタックできるくらいの耐久性はあるが、それでも一番性能が高いのは1周目だ。 その1周目に重い燃料を積んでアタックすればベストタイムが出せるわけがない。 恐らく彼は1周目に重い燃料で0.2秒から0.3秒は失ったはずだ。 それを考えると彼は予選3位か4位の可能性は高かった。 鈴鹿はフューエル・エフェクトが大きいコースの一つである。 その鈴鹿でマクラーレンが2周分も重い燃料を積んでジェンソンを出した理由がよくわからない。 バトンは予選6位からスタートしたことで、難しいレースとなってしまった。 クビサのリタイヤにより順位をあげたが、見所を作れずそのまま4位でフィニッシュ。 ハミルトンとバトンは、ランキングトップのウェバーとの差をそれぞれ28点と31点差に広げられ、残り3レースで全て勝たなければならなくなった。 これは最速とは言えないマシンを持つマクラーレンにとってはかなり難しい目標である。 ▽オーバーテイクキング 可夢偉 FIAのHP上でオーバーテイクキングと称された可夢偉。 母国日本ファンの期待を上回る走りを見せた。 予選Q2ではシケイン手前までQ3進出確実の走りだったが、シケイン手前で攻めすぎてブレーキングでミス。 大きくタイムロスして14位スタートとなる。 だが、ただでは転ばないのが可夢偉である。 タイヤを自由に選択できることを活用し、上位陣とは異なりハードタイヤでスタートする。 そして38周目まで引っ張り、ソフトタイヤへ交換。 この時点ではまだ入賞圏外の12位だった。 そこから抜くは抜くは結局、4台を抜いて7位でフィニッシュ。 もう数周あればミハエルも抜きかねない勢いだった。 それにしてもヘアピンであんなに抜くことができることが驚きだった。 彼の素晴らしいところは、ヘアピンで仕掛けてもミスが少ないこと。 ヘアピンでブレーキングを遅らせても普通は止まりきれなくて、立ち上がりでクロスして抜き返されるのが通常である。 それをいくら新しいタイヤを履いているとはいえ、あれだけ抜くのはなかなかできることではない。 フレッシュタイヤを履いたミハエルは、ニコ・ロズベルグを抜けずにずっと後ろに張り付いていた。 それだけに可夢偉の走りは見事としか言いようがない。 鈴鹿がオーバーテイクが難しいと言ったのは誰だ。 これでまた評価を上げた可夢偉。 今後の活躍が楽しみである。

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