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2010 Rd.18 ブラジルGP観戦記

▽三人のレースとアロンソの凄み チャンピオンシップがかかった重要なレースとなったブラジルGPだが、優勝を争う上位3台に関しては、波乱なく終わった。 だがこれは十分に予想されていたことである。 優勝を争う3人にとってリタイヤでノーポイントだけは避けたいので、ペース配分に関しては3人とも慎重に慎重を重ねての走りとなった。 特に土曜日に雨が降り、それまで路面にのっていたラバーが流れて、ソフトタイヤのタレが早いことが予想されたので、レース序盤ではタイヤをいたわって走っていた。 ベッテルはウェバーとの差を見つつ、レースペースをコントロール。 差が2秒を切ってくるとペースを上げるが、それ以上ある時はペースを落としてタイヤとエンジンをいたわって走っていた。 その為、ベッテルのソフトタイヤはまったく問題がなく、ライバル達がタイヤ交換した後にピットへ向かう余裕の展開。 SCが入った時点でもウェバーとの差を不必要にあけていなかったので、ダメージは少なかったし、その時に8台が連なる周回遅れをラップするタイミングで、後ろからはウェバーから迫っており、ベッテルのとってはこのレースで唯一緊張感が高まったポイントだった。 それがSCで前がクリアになったのだから、幸運だったとも言える。

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 ウェバーもこのレースでベッテルを抜くのが困難な事は理解していたし、無理にチャレンジしてタイヤやエンジンに負荷を掛けて3位のアロンソに逆転を許すリスクは犯せなかったので、ベッテルの後ろでチームメイトのミスを待つ走りとなった。 アロンソはレース序盤にヒュルケンベルグを抜くのに、少し手間取りレッドブルの2台に差を広げられた。 その為、チャンスがあればウェバーにプレッシャーを掛けるが、基本的には3位をキープしたい彼もまたタイヤとエンジンをいたわって走った。 この3台の間隔はレース中多少の伸縮はあったが、3台とも無理はせずタイヤが問題ないとわかった時期だけ、少しプッシュしたがそれでもエンジンには負荷を掛けないようにしていたはずだ。 最終結果は、1位ベッテル、2位ウェバー、3位アロンソ。 この上位3人はみんなこの結果にある程度満足しているだろう。 優勝したベッテルはもちろん大満足である。 だがチャンピオンシップを争う二人のライバルが2位と3位であるから、その喜びも半減である。 2位のウェバーは優勝こそできなかったが、アロンソとの差を8ポイント差に縮めることができた。 これは最終戦でウェバー・ベッテルの順で1-2フィニッシュすれば、3位にアロンソが入っても逆転できる得点差。 完全な自力での逆転の可能性はないが、現在のマシンの戦闘能力を考えると、これは十分に可能なシナリオだ。 そしてアロンソは3位になりチャンピオンシップのリードを維持した。 もちろんポイント差に関しては2位のウェバーとは8ポイント差、3位のベッテルは15ポイント差とギャップは縮まった。 だがレッドブルとの戦闘力の差が歴然としている以上、彼らがミスをしない限りフェラーリでは3位で満足せざるを得ない。 そしてアロンソの凄みを感じさせるシーンがレース後に見られた。 レース終了後のトップ3インタビューで、アロンソは最終戦で自分がチャンピオンになれる条件について話し始めた。 通常、レース終了直後に話せる話ではない。 アロンソは自分でドライビング中か、レース終了後に計算したのだろう。 普通のドライバーはレース中はもちろん、レース終了直後にそんなことを計算する余裕などない。 このアロンソの冷静さと頭脳明晰な部分が他のドライバーとアロンソを隔てる大きな壁になっている。 最終戦を三つどもえで向かえると通常、追う立場のドライバーが強い。 追うドライバーの方が勝つしかないので、攻められる。 一方、追われる立場のドライバーは苦しい。 ポイントの計算をしながら走れるだけに、不要なことを考えてしまう。 そうして過去には何度も逆転劇が繰り広げられてきた。 だがポイントランキングのトップにアロンソがいるというのは、ライバルの二人にとっては難しい状況である。 通常のドライバーであれば、ポイントを考えながら走るのは苦手である。 ドライバーという人間はいつでも速く走りたい人間である。 それが一度ポイント差などを考え出すと、とたんにリズムを崩してしまう。 しかも一度崩したリズムを戻すのは簡単にはできない。 だが、フェルナンド・アロンソというドライバーは考えながら走れるドライバーである。 アロンソは最終戦をウェバーのポジションによって走りを変えてくるだろう。 ウェバーがトップであれば、全力をかけて2位を目指す。 そしてウェバーが2位であれば確実に3位を目指す。 これができるドライバーだからこそ2度チャンピオンになり、3回目を目指せるのだ。 レッドブルとしてはマクラーレンにもう少し頑張ってアロンソの前でフィニッシュして欲しいところであるが、後述するようにマクラーレンは完全に競争力を失っており、この点でもアロンソに有利である。 フェラーリは韓国とブラジルでディヒューザーを改良してきており、これが効果を出している。 それでもレッドブルとの差はあるが、マクラーレンとの差は確実に広げており、これはアロンソのチャンピオンシップをおおいに助けている。 ▽絶望的なマクラーレン このレースでもレッドブルの2台とアロンソにはまったく太刀打ちができなかったマクラーレン。 ハミルトンを持ってしてもアロンソを抑えられない。 韓国GPに引き続き4コーナーでワイドにはらんで、天候を味方に付けてせっかく予選で4位を獲得してアロンソの前でスタートできたにもかかわらず、フイにしてしまった。 だがこれも今のマクラーレンのパフォーマンスを見ると仕方がないだろ。 フェラーリのアロンソに対してまったくスピードが不足しており、頑張ってなんとかなるレベルではない。 しかもタイヤに厳しいマクラーレンは2回のピットインを強いられては、1回のピットストップであったアロンソに勝てるはずもない。 予選11位からスタートして5位に入ったバトンも健闘したが、これで彼の二年連続チャンピオンのチャンスは潰えた。 彼の今年の課題は、最初から最後まで予選でのスピードだった。 このレースでも予選11位からスタートしては、彼にできることは限られている。 その為、彼が勝った2レースは共に雨がらみ。 2勝は絶妙のタイミングでタイヤ交換して、あげたものである。 だがやはりチャンピオンを目指すなら、ドライコンディションで勝たなければならない。 予選ポジションというバトンの課題は、来年に持ち越しのようである。 日本GP以降、マクラーレンも空力パーツをアップデートしてきているがレッドブルやフェラーリに比べてその効果が限定的である。 レース毎に差を付けられてもはやフェラーリにも完全に差を付けられた。 ハミルトンのチャンピオンへのチャンスは、計算上残されているが24ポイント差を付けられてしまっては、逆転は難しい。 アロンソがリタイヤするのはメカニカルトラブルを除けば考えにくいし、現在のマクラーレンのパフォーマンスを考えると、ハミルトンが優勝するのはもっと考えにくい。 ▽殊勲のPP ヒュルケンベルグ 今回ポール・ポジションを獲得したのは、ニコはニコでも驚きのヒュルケンベルグ。 彼がPPを獲得できたのは、タイヤの発熱状態がよく、他のマシンよりグリップが良かったのが原因だろう。 ウィリアムズはタイヤの発熱がいい特性を持ち、それが彼を助けた。 確かに路面コンディションはQ3で、毎ラップ改善されていた。 ヒュルケンベルグはライバルに比べて最後にアタックしていた有利さはあった。 だが彼は最後から1回前のアタックでもPP獲得に充分なタイムだった。 だから彼のPPは路面コンディションだけでは説明がつかない。 もっともタイヤが暖まっていたとはいえ、特にセクター3では滑りやすいコンディションに変わりはなく、その意味では彼のPPは彼の優れたドライビング能力を示しており、素晴らしいPPだったと思う。 だが、そのヒュルケンベルグも決勝がドライになっては為す術がない。 彼のスタートは良かったのだが、ベッテルがそれを上回るスタートを決めて1コーナーでかわされてしまった。 さらに4コーナーで少しはらんでしまい、ウェバーにも先に行かれた。 これは燃料が重い上に、土曜日に雨が降り路面のラバーが流されて、彼が思っていた以上にグリップしなかったからだろう。 このミスがなくても、ヒュルケンベルグがウェバーを長時間にわたって抑え込めるはずもなく、アロンソに対しては多少の抵抗はしたが、4位に落ちて以降はズルズルと順位を落とした。 それでもなんとか8位フィニッシュ。 最終的には、指定席とも思えるポジションに落ち着いた。 これもマシンの能力を考えると仕方がないだろう。 ▽可夢偉 連続入賞 予選Q2で脱落し、得意のハードタイヤでのスタートを選択した可夢偉。 だがラバーが落ちた路面はタイヤに厳しく、それはソフトだけでなくハードタイヤもまた例外ではなかった。 ペースは他のドライバーと大差がなく、なかなか後続を引き離せない。 これまでのレースでは可夢偉と後続の壁になる遅いマシンがいて、可夢偉はギャップを作れていたのだが、今回はそれがなく多くのマシンが数秒差で激しいバトルを繰り広げていた。 その為、可夢偉がピットアウトしたときは8台が連なる渋滞の最後尾に出てしまう理想的とはとても言えない展開だった。 ところがここでSCが出動。 タイヤが厳しいライバルのマシンが続々とピットへ向かい、可夢偉は12位に上昇。 残りのレースをタイヤを完全に使い切ったトロ・ロッソ勢を、フレッシュなタイヤを履く可夢偉が追う展開。 1台をかわすことはできたが、トップスピードのない可夢偉のザウバーは、仕掛けることはできても、オーバーテイクすることができない状況だった。 それでもなんとかトロ・ロッソの二台を追い抜いて、10位入賞して1ポイントを獲得。 苦しいレースだったがSC出動という幸運にも恵まれて、3レース連続ポイント獲得となった。

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