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テクノロジー オブ ザ イヤー 2010 <br> technology of the year 2010

 今年F1業界で登場したテクノロジーの中で最も優れた技術に与えられる賞を創設。 勝手に表彰したいと思う。 ちなみに(表彰していないけれど)2009年のテクノロジー オブ ザ イヤーは「マルチ・ディフューザー」。 大賞 Fダクト この技術、理解してしまえばなんともローテクな技術なのだが、そのアイディアが素晴らしい。 原理は簡単で、リアウィングの後ろは空気が薄くなっている(負圧)。 その為、ダウンフォースが生まれるのだが同時に抵抗(ドラッグ)も生んでいる。 ダウンフォースは欲しいが抵抗はいらない。 ところがそううまい話はなく、この二つは不可分と考えられていた。 基本的にウィングを立てるとダウンフォースと抵抗が増え、寝かせるとダウンフォースと抵抗が減る。 その為、サーキットによって抵抗よりもダウンフォースが欲しい場合は、ウィングを立て(モナコGPなど)、ダウンフォースより抵抗を少なくしたい場合はウィングを寝かせて(イタリアGPなど)やり繰りしてきた。 どこに妥協点を見いだすかエンジニアやドライバーにとって、難しい判断を求められた。 しかし、Fダクトはこの矛盾する二つの条件を見事に解決した。 まず基本は、リアウィングは立てておいてダウンフォースを得る。 そして直線ではリアウィングの後ろから空気を排出し、ダウンフォースを減らし同時に抵抗も減らす。 それにより直線速度が増す。 これは理屈としては可変ウィングとほぼ同じ効果をもたらした。

 仕組みは図表抜きで説明するのは難しいので、他のサイトや雑誌を参照していただくとして、簡単に説明しよう。 細かい部分ではチーム毎で違うのだが、原理は以下の通り。 前から空気を入れて、リアウィングに向かうダクトとリア・ウィングとディフューザーの間へ空気を逃がすバイパスのダクトを設置する。 コーナー部分では、バイパスのダクトに空気を逃がし、リアウィングのダウンフォースと抵抗は大きいままである。 直線になりドライバーが手や足でコクピット内のダクトふさぐと、空気はリアウィングに導かれ、リアウィング後ろへ空気を流し、気圧を上げてダウンフォースを削減し抵抗も減らす。 ちなみに、最初にこのシステムを導入したマクラーレンは、膝でダクトを押さえる方式をとっていたため、F(Foot)ダクトと呼ばれるようになった。 他のチームが手でダクトを押さえる方式にしたのは、モノコックを変更することがレギュレーションで禁止されているため、モノコックに穴を開けるのが不可能なので、仕方なく手で押さえる方式を用いた。 もしマクラーレンが手で押さえる方式を用いたなら、H(Hand)ダクトと呼ばれていたかもしれない。 理屈自体はシンプルなのだが、実装して効率的に運用するのはなかなか難しい。 どのチームもある程度はリア・ウィング周りの空気の流れを把握しているが、完全に解明されているわけではない。 その為、Fダクトを投入しても上手く動作しない場合もあった。 うまくいかないとコーナーリング中に、リアウィング後方から空気が漏れて、ダウンフォース量が減るマシンもあり、そうなりと危険ですらある。 シーズン中のテスト禁止も、追いかけるマクラーレン以外のチームには痛かった。 このF1ダクトには大きく分けると二つの方式があった。 メインエレメントに空気を導く方法とフラップ部分に空気を導く方法である。 リア・ウィングはレギュレーションにより二枚の羽根で構成することが定められている。 下の羽根をメイン・エレメント、上の立っている羽根をフラップと呼ぶ。 当初、元祖Fダクトのマクラーレンは、フラップに空気を導いていたが、その後ルノーがメインエレメントに空気を導くFダクトを装着。 その後、レッドブルも追随し、シーズン終盤には本家のマクラーレンもメインエレメント式のFダクトを実装。 マクラーレンもこの新型のFダクトを、うまく使いこなせていなかったが、最終戦でものにしてチャンピオン争いに大きな影響を及ぼしたのは記憶に新しい。 関係者の話を総合すると、メインエレメントに空気を流した方がダクトを塞いだ場合、抵抗の減り幅が多く、ダクトを開いた場合、短時間でダウンフォースが復帰するようだ。 2010年1年限りで消え去るテクノロジーとなってしまったが、私こういう技術が大好きである。 人間が知恵の限りを尽くして、繰り出すテクノロジーこそF1の魅力の一つである。 しかも低コストである。 ドライバーが手の離すのは危険と言うこともあるが、それは最初から実装すればマクラーレンのようにできる。 もっとも来年は可変リア・ウィングの導入もあるので、不必要となったのであろう。 次点 ブロウン・ディフューザー これは新しい技術と言うよりは、リバイバルしたツール。 かつてはディフューザー下に直接、排気ガスを吹き付けて、ディフューザー下面を流れる空気を加速し、ダウンフォースを増加させていた時期もあった。 だがこの技術は一つ問題があった。 ドライバーがアクセルを開けると、排気ガスがたくさん勢いよく出るので、ダウンフォースが増加するが、アクセルと閉じると排気ガスも出なくなり、ダウンフォースが減少する。 結果としてマシンのダウンフォース量の増減が激しく、ドライバーはドライビングが難しくなり、廃れてしまった技術である。 最終的にダウンフォースの絶対量が重要ではなく、安定したダウンフォースを発生させた方が、ドライバーは思いきって走ることができ、タイムはいいと判断したのだ。 今年、レッドブルがその技術をリバイバルした。 だが彼らはただ単純に昔の技術を持ち込んだわけではない。 彼らはメリットはそのままに、デメリットを打ち消すような仕組みを持ち込んだ。 それがエンジンのマップを変更し、ドライバーがアクセルを閉じてもある程度の排気ガスを排出するようにした。 それによりアクセルを閉じた状態でも排気ガスが出続けるので、ダウンフォース量増減の上下の幅を狭くすることに成功。 ドライビングしやすくすることによって、タイムの向上を図った。 これも理屈は簡単なのだが、実装するは難しかった。 後から実装したレッドブル以外のチームでは、高温の排気ガスをサスペンション・アームやフロアに吹き出すので、パーツが燃えたり解けたりする問題が多発。 また排気ガスの放出する場所も、各チームで違っていた興味深かった。 アッパー・ディフューザーへ流すチームあり、リア・タイヤの後ろに導入するチームありで、バラエティがあり、各チームの個性が表れていた。 ただこのブロウン・ディフューザーは常に排気ガスを吐き出すので、エンジンの温度が上がりやすく一説では予選のみ使われたと言われている。 彼らが予選ではダントツの速さを見せ、決勝レースではライバルチームとの差が縮まっていたことを考えると、この見方は信憑性が高い。

特別賞 ブリヂストンのタイヤ ワンメークのタイヤ供給メーカーとして品質が高いタイヤを供給した。 ワンメークなのでスポットライトが当たりにくいのだが、素晴らしいタイヤを供給し続けた。 とかくチームやドライバーは自分達が遅いとタイヤのせいにして、速ければ自分達の手柄にするのだが、それにめげずに高品質のタイヤを供給し続けた。 撤退は本当に残念な事だった。

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