▽予選から見えてきたマシンの速さ バーレーンGPがキャンセルされ、延期になった開幕戦がオーストラリアで開催。ついに始まった2011年のF1 GP。 テスト中ははっきりしなかった、各マシーンの実力が予選で初めて披露された。 テスト中の評価のまま実力を発揮したチームもあれば、予想外の苦戦を強いられたチームもあった。 予選を振り返りながら、各マシーンの実力を見ていこう。 予選ではベッテルが他を圧倒した。 2位のハミルトンに0.8秒差。 しかもこれはターン15で大きなミスをしてのタイムである。 それがなければ1秒以上の大差を付けていただろう。 しかもレッドブルはKERSを使用していなかった。 彼らがKERSを使用して、ベッテルがミスしていなければ、どれほどのタイムが出たのか想像するのも困難である。 そしてチームメイトであるウェバーとベッテルとの差は更に開いて0.9秒差。 これは予選3位のウェバーにとって、大きなショックだろう。 全く同じマシンにのって、大きなミスもないドライビングでこの差は苦しい。 予選後の記者会見でも、彼の表情から動揺していることがわかった。
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現状ではベッテルが完全に優位に立っており、昨年の様な確執が生まれる可能性は低い。
だが昨年も序盤はウェバーが劣勢だったのを、スペインGP以降急激に盛り返した過去もあるので、まだまだ侮ることはできない。
予選2位にはハミルトンがつけた。
マクラーレンはテスト期間中、スピード不足に加えて信頼性不足と良いところがなく、開幕戦では中団に埋もれるのではないかと懸念されていた。
しかしさすがは名門マクラーレンである。
レッドブルと同じコンセプトのブロウン・ディヒューザーを2週間という短期間で製作して持ち込み、タイム短縮という結果に結びつけるのは、簡単なことではない。
彼らはテストの時のよりも1秒近いタイム短縮を実現し、ルイスが予選2位を獲得。
チームメイトのバトンも予選4位につけた。
ハミルトンはベッテルに0.8秒差付けられたが、これはマシンの差と諦めるしかないだろう。
それよりもこのマシンでウェバーを上回ったのは、さすがはハミルトンと言うしかない。
通常であればレッドブルが1位2位で、マクラーレンは3位4位と言うのがマシン本来の性能を表していると思う。
それをひっくり返すのであるから、これこそがハミルトンの実力だ。
マクラーレンが急激にタイムアップしたので、フェラーリはアロンソの5位が最上位となってしまった。
テスト中、マシンの性能はレッドブルに劣るが、2番手につけていると思われていたフェラーリだが、急激に進化したマクラーレンに逆転された。
フェラーリはマクラーレンに前に入られると、レッドブルにプレッシャーを掛けるのが難しく、レース展開が厳しい。
可夢偉はQ3に進出。
Q3に新品タイヤが残っていなかったので予選8位となったが、新品タイヤが残っていれば予選6位も可能だった。
ザウバーのマシンは、昨年と比べてドライビングしやすく、戦闘力のあるマシンは期待を持たせてくれる。
予選で最大の驚きはペトロフの6位である。
テスト中からルノーはいいと言われていたが、これほどまでとは思わなかった。
さすがは元チャンピオンチームである。
惜しいのはクビサの不在である。
昨年、予選で一度もペトロフに負けたことのないクビサがいればさらに上位も狙えたはずだ。
▽決勝レースでのタイヤの寿命は
レースでの注目ポイントは、タイヤの寿命だった。
フリー走行や予選を通じて、予想以上に持つことがわかっていたが、決勝当日の天気は晴天で、それまでの曇り空とは条件が違っていたからだ。
レース前には2ストップが標準と予想されていたが、1ストップも可能とも思われていたので、レース展開が全く読めない中のスタートとなった。
スタートでは奇数列のベッテルとウェバーが好スタート。
ところがハミルトンの伸びが素晴らしく、ウェバーをかわして2位で1コーナーを抜ける。
レース後に判明したのだがレッドブルは、このレースでKERS搭載を見送っていた。
理由は冷却不足により信頼性を確保できなかった為らしい。
このサーキットはスタートから1コーナーまでの距離が比較的短いのと、長い直線がないので、信頼性を優先したのだろう。
だがスタート直後の1コーナー手前まではウェバーがハミルトンに先行していたが、ハミルトンがKERSを使い距離を縮めて、1コーナー直前のブレーキングでウェバーをかわすことに成功した。
ウェバーはKERSを搭載しなかったデメリットが出てしまった。
スタートで先行した、ベッテルとハミルトンはタイヤの具合を探りながらの走りになったが、バランスが良くなかったベッテルのマシンの方が若干早くリアタイヤが厳しくなり先にピットイン。
ハミルトンはその2周後にタイヤ交換するが、ベッテルを抜くことはできなかった。
ベッテルはタイヤ交換後にコース上でタイヤ交換前でペースの上がらないバトンを抜いた事により、タイムを失うことがなく、ハミルトンがコースに戻る時も順位を失うことがなかった。
二人ともオプションからオプションへタイヤ交換。
上位陣ではウェバーだけがオプションからプライムへ交換する。
最終的に上位3台は2ストップ。
4位のアロンソは3ストップ。
結果的に、ハードタイヤのタイムはソフトタイヤと遜色なく、アロンソに至ってはソフトよりも速かった。
タレもそれほど激しくなかったので、3ストップの作戦は結果的に失敗だった。
今回のピレリタイヤは、ソフト-ソフト-ハードの2ストップが正解だったようだ。
ベッテルはピットインのタイミングで、微調整してバランスを修正。
その後はタイヤの寿命も問題なくなり、そのままゴールして開幕戦に勝利した。
2位のハミルトンもレッドブルとのマシンの性能差を考えると満足の結果だろう。
決勝でのペースは予選ほどレッドブルに引き離されていない。
それを考えると今後のレースに期待が持てる。
最大の驚きはペトロフの3位。
スタート前に入賞は可能だと思ったが、表彰台はサプライズ。
終盤アロンソに迫られても、安定したペースで走行を続け、アロンソの追撃から逃げ切った走りはお見事。
本人やチームの予想も上回る結果は素晴らしい。
4位のアロンソはスタート直後の1コーナーでアウト側に押し出されてしまい、順位を大きく落としたことが痛かった。
それさえなければ表彰台は十分可能であり、それを考えると4位は決して悪い順位ではない。
ザウバーは新人のペレスが1ストップで7位、可夢偉は2ストップで8位とダブル入賞。
ペレスのタイムは1ストップにもかかわらず、可夢偉と遜色がなかった。
これは今後のピレリタイヤの選択を考えると興味深い。
そしてルーキーであるペレスがミスもなく、1ストップを成功させたのは、注目に値する。
だが残念な事にザウバーはレース後の車検で、リアウィングの規定違反を指摘されて失格処分となった。
実はザウバーはこのレースに3セットのリアウィングを持ち込んでいたのだが、レースに使用したウィングだけ、規定違反だった。
その為、レース前の車検では別のセットのウィングを搭載してパスして、レース後の車検で失格となってしまった。
これはパフォーマンスを狙った物ではなく、単純に製作する際のミスだろう。
リアウィングのフラップの曲率はレギュレーションで決まっているのだが、今回ザウバーはわずか3mm隙間があったことにより失格となってしまった。
結果は残念だったが、ザウバーが相対的にいいポジションにいることは間違いがなく、今後のレースが楽しみだ。
▽チーム別予想
さて開幕戦恒例の各チームの今シーズンを占ってみましょう。
当たるも八卦当たらぬも八卦ですが。
【レッドブル】
最速マシンの称号は今年も健在。
チャンピオン ベッテルは風格を漂わせ始めて、昨年までの自滅を期待できない。
ウェバーの不調が心配だが、ドライバーズ・チャンピオンだけを考えると死角はない。
KERSの冷却問題だけが心配の種か。
【マクラーレン】
短期間でここまで開発を進めてきたのはさすが名門チーム。
シーズン中の伸びしろが一番大きなチームである。
たがレッドブルのコピーでは、彼らを追い抜くことはできない。
それを考えると今年もハミルトンのスピードに頼らざるを得ないのが現実か。
【フェラーリ】
タイヤに優しい特性は健在だが、オーストラリアのように気温が低いと特にマッサが苦しい。
もう少しスピードを付けないと、レッドブルやマクラーレンにプレッシャーも掛けられない。
だがアロンソは絶対に諦めないので、決してチャンピオン争いから外すことはできない。
【メルセデスGP】
最後のテストで大幅なジャンプアップをしたが、それでも上位との差は大きい。
ミハエルは相変わらずニコに勝てないし、問題は山積み。
ルノーが速さを見せているので、早急に対策しないと、上位を狙うより、下からの追い上げを防ぐのに精一杯になってしまう。
【ルノー】
テスト中からいいと言われていたが、ここまでの結果を残すとは予想できなかった。
さすがはシューマッハーとアロンソをチャンピオンに導いたチームである。
ペトロフは急成長しているが、やはりドライバーラインアップに不安がある。
クビサ不在の穴は大きい。
【ザウバー】
昨年に比べると速さもあり、ドライブしやすそうである。
新人のセルジオ・ペレスもなかなかいい。
彼が可夢偉に刺激を与えると、好循環になりそうである。
マシンの開発を昨年同様進めていくことができれば、好結果を残せそうである。
【ウィリアムズ】
低いギアボックスが功を奏してか、スピードはある。
ただ予想通りギアボックストラブルも出ており、早期の信頼性確保が必要。
マルドナドの実力はまだまだ未知数である。
【トロ・ロッソ】
テストの好調をそのまま持ち込み、ブエミがQ3に進出し10位に入賞した。
ただ資金が乏しいので、前半でポイントを稼ぎたい。
二人のドライバーは少し実力不足か。
【ロータス】
もう少し速さを見せると思ったが、位置的には去年と同じで、新興チームのトップである。
やはり既存チームを上回るのは難しい。
【バージン】
昨年とほぼ同じ位置でレースをしそう。
大きなジャンプアップもないし、落ち込みもない。
HRTがいるからまだ目立たないが、彼らがいなくなるとその競争力のなさが顕著になるだろう。
【HRT】
去年と同じでフリー走行中にマシンの組み立てをおこなっていた。
昨年と違うのは、今年は107%ルールが施行され、ほぼシェークダウン状態のマシンでは、それをクリアすることはできなかった。
フリー走行中二台で合計3周できなかった彼らは、特例措置を申請しても認められるはずもない。
資金的に厳しい状況は続くので、シーズン終了まで活動できれば、素晴らしい結果と言えよう。