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ベッテルは幸運でアロンソは不運なのか?

_N7T2278-s 今年フェラーリへ移籍したばかりのベッテルが2戦目のマレーシアGPで無敵のメルセデスを破って優勝した。一方フェラーリからマクラーレンへ移ったアロンソはリタイヤ。両者の明暗は分かれる結果となった。 もしアロンソがフェラーリへ残留していた場合、彼が勝っていた可能性もあったわけである。ではベッテルは幸運でアロンソは不運なのだろうか。 アロンソはF1キャリアの中でマシンの戦闘能力にあまり恵まれていない。彼はチャンピオンを獲得した年でさえ、決して最強マシンに乗っていたわけではない。そしてみなさんご存じのフェラーリ時代は一度も最強マシンに恵まれず、チャンピオンになっていない。 一方のベッテルはF1キャリアの2年目から戦闘力のあるマシンを与えられて、3年目以降は最強マシンをドライブしていた。 通常F1では最強マシンを持つトップチームはトップドライバーを欲しがり、トップドライバーは最強マシンを持つチームを求める。だからいいドライバーはいいマシンに乗るという構図ができあがる。だがこの数年はそうではない。いいドライバーが多く存在するからである。 これまでのF1では時代を代表するようなドライバーが1人か2人いて、彼らを中心に勝負は回っていく。ところがここ数年はチャンピオンドライバーが4・5人いて、いいドライバーが供給過剰な状況である。優れたドライバー同士を組ませるのは、チームとしたらうれしい半面、難しい。 それは歴史上必ずトップ5には入る2人を組ませて勝ちまくったマクラーレンが、その後プロストと袂を分かち合ったことでもよくわかる。チャンピオンドライバーは強烈なプライドを持っている。勝者が1人しかいないF1で2人の英雄を並び立たせることはできないのである。 だから今のF1チームは本当にトップクラスの実力をもったドライバーを組ますようなことはしない。だからハミルトンがいる限りアロンソはメルセデスへ行けないのである。 本来アロンソくらい実力のあるドライバーであれば、メルセデスが欲しがってもおかしくはないのであるが、そうはならないのである。 またF1の移籍ではタイミングも重要である。ドライバーが契約が切れるタイミングで、どのシートが空くのかは誰にもコントロールできない。 アロンソがベッテル加入前にレッドブルと契約交渉をしていたのは事実であるが、その時点でのレッドブルはまだ中堅チームであり常勝チームとはほど遠い状態であったのだから、契約しなかったアロンソを責めることはできない。 そう考えるとドライバーとマシンの巡り合わせに多少の運が存在することは間違いない。だがベッテルが幸運で、アロンソが不運とも思わない。 なぜならベッテルはマレーシアで状況が味方して勝ったが、彼がチャンピオンを獲得する可能性は限りなく低い。今年チャンピオンになるのはメルセデスの2人のうち1人だろう。 今年ベッテルがこの好調を維持してもランキングの3位が精一杯となる。それで彼が満足するとは思えない。 アロンソが今年勝つのも難しい。だが来年以降のマクラーレンがどうなるかは、まだわからない。そしてフェラーリが来年以降もどうなるかはわからない。 アロンソは2010年フェラーリ移籍直後の開幕戦に勝利したが、その後フェラーリで彼がチャンピオンになれなかったことを忘れてはいけない。恐らくアロンソがフェラーリへ移籍した2010年開幕戦の勝利直後にアロンソは幸運だと言えば、それは正しいと思われたかもしれない。 だが歴史はそうでないことを語っている。だから、この時点でベッテルが幸運で、アロンソが不運と決めつけることはできない。それは数年後に数字が物語るのである。