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2012 Rd19 アメリカGP観戦記<br>2位でもアンハッピーなベッテル

▽素晴らしい二人のバトル
新しいこのサーキット(サーキット・オブ・ジ・アメリカ略称COTA)は波乱で幕を開けた。最初の走行となるP1では、埃と路面にしみ出たオイルのせいで全くグリッドが得られなかった。その後、P2、P3、予選を経る毎にグリップは増してきたが、そんなスリッピーな路面コンディションで滅法速いのがルイス・ハミルトン。性能的には劣るマシンに乗りながらも予選でベッテルに0.1秒差につける2位グリッドを確保。これはハミルトンのマシンコントロール能力の高さを証明している。

グリップの悪い偶数列グリッドだったが、スタートでのポジション・ロスを一つにとどめて3位でレースを開始する。その後、いいペースで周回を重ね17周目にウェバーをパス。今回の勝負の鍵はタイヤとそして少しの幸運だった。これまでのレースではタイヤがどこまで持つのかはっきりせずハミルトンは思いきって攻めることができなかった。だが今回はタイヤは1ストップで乗り切れることが、最初のスティントのタイヤの状態を見て確信できた。その為、ルイスは渾身のアタックを繰り返した。そして独走状態だったベッテルを追いかけ、ついには追いついてしまう。レースペースはほぼ互角。

このサーキットでは前後のタイヤの温度を揃えるのに苦労したチームが多かった。言うまでもなくリヤはフロントタイヤよりも温めやすく、フロントタイヤが温まらなければ、バランスが極端に悪くなる。
上位陣で言えばレッドブルはマクラーレンよりタイヤの温度をあげやすかった。だからスタート直後やタイヤ交換後にベッテルはハミルトンとの差を広げている。そしてタイヤが温まればハミルトンのペースは素晴らしかった。
さらにマクラーレンはハードタイヤでのペースが良かった。
そして勝負を分けたのは周回遅れのカーティケアンだった。
42周目のセクター1でカーティケアンに追いついたベッテルだったが、このセクターは走 行ラインが一つしかなく、そこを外すとグリップが極端に落ちる。その為、カーティケアンに譲る気持ちはあってもラインを外すのが難しい。結果としてベッテ ルはタイムをロス。すぐ後ろに迫っていたハミルトンはバックストレートでDRSを駆使してベッテルをオーバーテイクした。たった一つのチャンスをものにし たハミルトン。この所、トラブル続きで不運だったハミルトンだったが、今回は運も味方に付けての勝利。

ただ、アメリカGPはハミルトンとベッテルのどちらが勝ってもおかしくはなかった。それくらい二人の差は無かった。それだけに性能が低いマシンに乗るハミルトンの能力の高さが際立ったレースとなった。

▽それほどハッピーでないベッテル
ベッテルはいつもの通りポールポジションを取り、そのまま逃げ切る作戦。だから一度ハミルトンに前に出られると 苦しい。速いタイムは出せるのだが、トップスピードがない(レッドブルはマクラーレンより最高速が10km遅く、DRSを使われると更に10km遅かっ た)ので追い抜くことができない。もっともそのお陰で抜かれる前には第一セクターでハミルトンを引き離し、バックストレートで抜かれなかったのだから、仕 方がない。今回は運がなかったと思うしかない。

予選1位と9位(グロージャンがギアボックス交換で実際は8位グリッド)。予選終了後の ベッテルとアロンソの順位だ。これだけをみるとアメリカGPでチャンピオンが決まってもおかしくない状況だったが、終わってみればベッテルはアロンソとの 差をわずか3ポイントしか引き離せなかった。これはマシンの能力を正当に表しているとはいえない。
ただウェバーがまたもオルターネータのトラブルでリタイヤし、不安の中での走りだっただけに完走して15ポイント稼げたのは朗報である。
これでベッテルとアロンソとの差は13ポイント。ベッテルがブラジルGPで3位以上に入ればアロンソの結果に左右されずに、チャンピオンとなる。
そしてインテルラゴスもまたレッドブル向きのサーキットとなる。ただこれでベッテルが絶対有利かというと、そうでもない。

▽底力を見せたアロンソ
な りふり構っていられないフェラーリはなんと予選6位のマッサのギアボックスの封印を解くという際どい作戦をしてきた。これは8番手スタートだったアロンソ を7位にして、奇数グリッドにするためのものだ。それまでのフリー走行後のスタート練習で、新しいサーキットであるCOTAは、偶数グリッドは奇数列グ リッドよりスタートから1コーナーまでの間に約1秒ロスし、ポジションを二つ失うと予想されていた。そこで後のないフェラーリ陣営はアロンソのスタートを 助ける為に、マッサを5番手降格させることにした。これで7番スタートを得たアロンソは素晴らしいスタートを見せ1コーナーで4位までに上昇。チームの目 論見通りの結果を得る。価値のあるスタートダッシュだった。フェラーリはレースペースはいいので、レース序盤のポジションさえ良ければ、上位進出が望め る。
この作戦には賛否両論あるようだ。ただフェラーリのマシンのポテンシャルがレッドブルに比べて(特に予選で)劣ることを考えると、こうでもし なければ勝負にならない。もっとも5グリッド降格で11位からスタートしたマッサが4位に入賞していることを考えると、普通に走っていても3位になれた可 能性はある。ただその場合、アロンソの仕事がより困難になったことは間違いないが。

そして次はブラジルGP。ここは荒れるレースが多いことでも知られる。しかも天気予報も荒れ模様。そうなればアロンソの出番だ。チャンピオン争いは混沌としてくる可能性がある。

▽苦しいレースの可夢偉
1 ストップのレースを16位からスタートすると厳しい。作戦面では差を付けにくい。そしてタイヤのウォームアップの問題があった。滑りやすい路面のCOTA ではタイヤがなかなか温まりにくく、予選などでも6周の連続アタックなどが行われていた。ザウバーはさらに酷くタイヤを温めるのに時間がかかった。スティ ントの後半になりやっと温まる程ひどく、ベストラップは最終ラップで、その時点でもまだタイヤは残っていた。これでは戦えない。今回、メルセデスの二台も 入賞を逃し、最終戦にコンストラクターズ・ランキング逆転の望みはつながった。デビューした思い出の地、ブラジルでの活躍を期待しよう。

▽今日のピレリタイヤ
今 回、ピレリが持ち込んだミディアムとハードはかなり保守的な選択だった。これは昨年、同じ時期に視察した際の気温が高かったことと、初めての未知のサー キットだったことと、極端なタイヤを持ち込んでチャンピオン争いに影響を与えるのを配慮したからだろう。タイヤのタレはミディアムでも0.02秒、ハード では0.01秒。タイヤ的には全く問題が無く、今回はどのドライバーも全力アタックできたレースになった。さらに新しい路面でグリップがないことと、気温 がピレリの予想よりも低かったことで、さらに問題を複雑にした。タイヤが全くグリップしないのである。特に金曜日の午前中は酷く、まるで雨の中を走ってい るようだった。マシンが走行を重ねる毎にグリップレベルは向上し、決勝では金曜日に比べて10%もグリップが増えた。ただし、それはレーシングライン上だ けのこと。それ以外の部分では状況は金曜日も日曜日の変わらなかった。これがフェラーリのマッサ降格作戦を生み、カーティキアンがラインを守って結果的に ベッテルの邪魔をすることにつながる。

そして最終戦でも同じ組み合わせのタイヤをピレリは持ち込む。同じようなドラマはまた生まれるのだろうか。

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