これは空力的なメリットを追求しての変化だ。ところが開幕二戦を終わって彼らのマシンにはスピードが見られない。
これは昨年のフェラーリにも見られた現象である。最近はテスト走行が認められていないので、新しいコンセプトのマシンを持ち込んだ場合、それを実際のレースで使えるように修正するのに時間がかかる。GPウィークエンドの金曜日午前中にしかテストのための走行ができないからだ。
昨年のフェラーリもまさに同じで、シーズン開幕時は全く競争力がなく、ヨーロッパラウンドが始まる頃から競争力を取り戻し始めた。そして、その後も進化は続けたものの最終的にはレッドブルに敗れた。
シーズン開幕序盤にもう少し競争力があれば結果は全く違っていた。
そしてマクラーレンが今年、同じ様相を呈している。彼らの開発力をもってすれば、シーズン終わりまでには競争力を回復することは可能だろう。だがその時までにチャンピオンシップ争いで上位と離されていれば、タイトルのチャンスはなくなる。
だがどうしてマクラーレンは今年、全く新しいコンセプトのマシンを持ち込んだのだろうか。来年からF1のレギュレーションは大きく変化する。つまり今年のマシンは今年限りで来年以降は全く新しいマシンを持ち込まなければならないのがわかっているのに。
しかも、昨年の終盤にはマクラーレンは最速マシンであった。レッドブルよりもスピード面では勝っていたといってもいい。その彼らが新しいマシンを持ち込んだのはどうしてだろうか。
それには当然理由がある。
通常、翌年のマシン開発の基本コンセプトを決めるのは夏頃である。マクラーレンの場合、昨年の夏に今年のマシンの基本コンセプトを固めた。ところが昨年のマクラーレンはシーズン当初と終盤には競争力があったものの、シーズン中盤には競争力の落ち込みを見せた。彼らが新しいコンセプトのマシンを開発したのは、夏頃に彼らのマシンの競争力がなかったからである。
そう考えると最近の相次ぐ技術部門からの人材流出はマクラーレンの技術力深刻なダメージを与えているかもしれない。昨年の中盤の失速をマシンの基本コンセプトの問題なのか、単なる開発の問題なのか判断を間違えているからだ。
彼らが最終的に競争力を取り戻すのは間違いがない。ただいつ取り戻すのか?その時のポイント首位との差がいくらついているのか。それが問題である。