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2013 Rd2 マレーシアGP観戦記

2013 Rd2 マレーシアGP観戦記
▽チームオーダーは是か非か!
なんとも後味の悪いマレーシアGPとなった。
事の発端はレースの終盤に起こった。
37周目2位のベッテルが先にピットイン、それをカバーするように続く38周目にウェバーもタイヤ交換。この最後のタイヤ交換でも順位は変わらず1位ウェバー、2位ベッテルとレッドブルの1-2。
この後二人のバトルが見られ、ベッテルが逆転で今シーズンの初勝利を得たわけだが、これがかなり問題のある勝利となった。

実は最後のタイヤ交換後、タイヤ(とエンジンも)を労るために、エンジンマッピングを最も負荷の少ない(つまり最もパワーの出ない)モードに切り替えるように指示が出ていた。
これはすなわちこれ以上レースをするなという、チームオーダーである。
ところがご存じのようにレースではベッテルがウェバーを抜いて勝利した。
ウェバーが会見で「マルチ21」と話していたのは、このマッピングモードの事であると思われる。
レッドブルは伝統的にチームオーダーを出さないことで知られている。
最も全く出さないわけではなく、過去にシーズン終盤、一度ウェバーに対して出したことがあったが、この時はウェバーが2位でベッテルがトップを走りチャンピオンを争っていたし、ウェバーのアシストがなくてもベッテルは勝てた状況だったので、大きな問題にはならなかった。

だが今日は違った。
シーズン第二戦であり、しかも一般的にエースドライバーはベッテルと認知されているレッドブルで、そのベッテルに2位をキープしろとオーダーが出されたことは驚きだった。
そしてベッテルが指示を無視して、ウェバーを追い抜き勝利したのが二番目の驚きだった。

完全にクルーズ状態だったウェバーにベッテルは差をつめてくる。
不意を突かれたウェバーはメインストレートでオーバーテイクを仕掛けるベッテルに対して、一台分のスペースを残してインを閉めるが、抜かれてしまう。

これで勝負が決まったわけだが、レース終了後レッドブルはこの問題をチームで話し合い、ベッテルはチームとウェバーに謝罪。表面的には、これで問題を終わりにするようだ。

しかしこのシーズン序盤でチームオーダーを出す必要があったのだろうか。
レッドブルとしてはタイヤの問題が一番大きかった。
今年のピレリタイヤは昨年より更に柔らかいコンパウンドを投入。
まだタイヤの特性とそれに対応するセットアップを見いだせてない状況で、レッドブルはタイヤのライフに関しては問題を抱えていた。
1-2の状況でバトルしてタイヤをダメにしてもう一度タイヤ交換する事だけは避けたい。
最後のタイヤ交換が36周と37周。残りは22周と21周。
その前の2スティントは15周と、13周なので路面状況は改善されているとは言え、かなり野心的な周回数だ。
だからチームとしての決断は理解できる。
もしピレリタイヤの寿命が問題なければ、これまでのように彼らはチームオーダーを出さなかっただろう。

これまでこの二人が衝突したイスタンブールのように、緊張が高まった場面は何度かあったが、今回はベッテルがチームオーダーを破ったということでまた違った状況である。
最後までクリーンなファイトを見せて欲しかったとは思うが、二人が激突してリタイヤすることも見たくはなかった。

ま たチームはチームオーダーを徹底したいのであれば、ベッテルがウェバーに迫りつつあった時に、ベッテルに対してもっとはっきりとした指示を出すべきだっ た。順位をキープしろと命令されているのに、あのペースで走っているのを見れば、ベッテルがタイヤを温存していないことは明らか。それとも彼らはベッテル がウェバーの後ろまで来たら、ペースを落とすと考えていたのだろうか。例えそうだとしても、マシンの後ろで走ることがいかにタイヤにダメージを与えるかを 考えると、もっと早く明確な指示を出すべきだった。

それにしても今日のウェバーは素晴らしい走りだった。スタートで5位から3位に上がり、アロンソのリタイヤで2位になり、インターミディエイトからドライへの交換をベッテルより2周遅らせた素晴らしい判断でトップに立った。この日のウェバーはウィナーにふさわしかった。

▽メルセデスのチームオーダー
メルセデスも3位のハミルトンと4位のロズベルグにチームオーダーを出した。
こちらは燃料が最後まで持たなくなり、省エネモードで走らざるを得なかった。
二人とも燃料は厳しかったが、ハミルトンの方がより深刻でロズベルグの方が速かった。
だがチームは順位を保つようにオーダーを出す。
ロズベルグは自分の方が速いことをアピールし何度か抗議したが、最終的にはそれを受け入れた。

これには元々メルセデスのエンジンが燃費に厳しいことが理由の一つで、もう一つの理由はメルセデスも今年からレッドブルが活用し、大きなアドバンテージを得ている、オフスロットルブローを積極的に使おうとしている為である。
これはスロットルオフ時にも燃料を噴射して、軽い爆発を起こし排気ガスを吹き付けて、ダウンフォースを増やす技術なのだが、当然ながらオフスロットル(アクセルペダルを全閉)時にもガソリンを吹き付けるので、燃料消費量が多くなる。
そのあたりのノウハウはルノーは豊富で、巧みである。

ほぼ完成の域に達しているV8 2.4Lエンジンの信頼性はかなり高く、何か新しいトライをしなければ、トラブルの発生は少ない。オフシーズンのテスト時にメルセデスエンジンがトラブルを抱えていたのは、この技術をテストしていたからだと思われる。

それにしても、ハミルトンがマクラーレンのピットに入ったのは爆笑だった。
た だF1ドライバーはピット走行中でも、セットアップを変えるためにダイヤルを触ったりして忙しいことは覚えておいて欲しい。ピット走行中でもF1ドライ バーは気を抜くことができないのだ。何年も過ごしたチームだし。もっともビデオを見る限り、ハミルトンは何もダイヤルを触っていない様に見えるので、単純 に勘違いしただけかもしれないが。

▽フェラーリの判断は適切だったのか
アロンソは非常に惜しいレースを失った。
彼は最後まで走れていれば、少なくとも優勝を狙える位置にいただろう。
それを失ったのはほんの少しの接触だった。

スタートで2位のマッサをかわしたアロンソは、トップのベッテルに迫る。
2コーナー侵入時にスピードを落としたベッテルにほんの少し接触したが、それでフロントウィングの右側が脱落し、コースにすってしまう。
濡れていて路面状態が不明瞭な中でトップのベッテルは慎重に2コーナーに入っていったのだろう。かなり2コーナー直前で極端にスピードを落としている。

だ が接触後も攻めてくるウェバーのアタックを防いでいたアロンソを見て、チームはステイアウトを選択した。5周くらいすればドライタイヤに履き替える予想を していた彼らは、多少ペースが落ちてもこのまま走らせて、タイヤ交換時にフロントウィング交換する事を選んだ。これは一周目のペースが良かったので合理的 な判断だと思う。もし一周目に3台とか5台とかに抜かれていたらアロンソもピットインしたと思うが、幸か不幸かウェバーとバトルできていたので、こう言う 判断になった。
危険という批判があるのは承知の上で、今回のフェラーリの判断は適切だったと思う。

▽今週のピレリタイヤ
今回、雨絡みで路面状況の変化が大きかったのでまだピレリタイヤを見極めるのは難しい。
ただ今回に限って言えばミディアムとハードはライフはタイム的にも距離的にもあまり違いがなかった。コンパウンド的には隣り合う二つなので大きな差はないと思われたが、それを裏付ける形となった。

驚きなのがライコネンで34周目に最後のタイヤ交換を済ませると残り24周を走りきった。
ただ今回は濡れた状態でうまくタイヤが使えず、上位には入れなかった。
ドライだとラップタイムも安定していて自己ベストは残り3周で出しており、相変わらずタイヤを上手く使えていた。これは今後も上位陣に脅威を与えるだろう。

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