ライコネンのフェラーリ加入が発表されてから二週間が過ぎた。ドライバー移籍というはタイミングが非常に重要で、ほんの少しでもタイミングが合わないと成立しない。今回、ライコネンのフェラーリ移籍は絶妙なタイミングで合意に至った。
まずはフェラーリサイドから見ると、アロンソに対抗できるドライバーが欲しかった。
最近になってアロンソの言動がチームに対して攻撃的になっている。もっともその内容を見るともっともなものが多い。
だがフェラーリにおいてチーム批判は厳禁である。
フェラーリにおいてチーム批判をしたドライバーの居場所はない。
ところが今アロンソがいなくなれば、フェラーリがやっていけないのは明白である。
その為、クビにすることもできない。
スポンサーであるサンタンデールとの関係もある。
そうであるならば、彼に対抗できる速さを持ったドライバーを向かい入れ、アロンソに大きな口を叩かせないようにするのが最善の策である。
ライコネン側から見ると、ロータスの資金難は明白であり、今年のサラリーも払われていなかった。
昨年のサラリーもシーズン中には支払われずに、年末に支払われた。
資金難から開発も進まず、主要なスタッフが流出する状況のなかで、ライコネンも移籍を考えるようになった。
まず最初に考えたのはウェバーがF1から引退するレッドブル。
だがレッドブルはライコネンの優れた能力に魅力を感じつつも、ベッテルのNo.1体制を築きたいのと、若手のレッドブル養成ドライバーにチャンスを与えたい考えが強く、契約には至らなかった。
そこに降ってわいたアロンソのチーム批判。
アロンソを牽制したいフェラーリと安定したチームで走りたいライコネンの思惑が一致し、短期間での契約となった。
もし昨年のようにこの時点でアロンソがチャンピオンシップをリードしていれば、ライコネンの移籍は実現しなかっただろう。
この時点でアロンソがチームを批判しなければ、ライコネンの移籍はなかった。
またロータスが資金を準備できていればまたライコネンは移籍しなかっただろう。
彼はロータスチームに居心地の良さを感じていたから。
そう考えるとドライバーの移籍に関しては本当にタイミングが重要である。
もっともこのライコネンのフェラーリ加入は危険な賭でもある。
これによりアロンソはフェラーリ離脱を考え始めるだろう。
ライコネンは優れたドライバーであるのは間違いないが、アロンソのようにリーダシップは取れない。
そしてそれが必要だからこそ、ライコネンを切ってアロンソを迎え入れたはずなのだが、人間は都合の悪い出来事は忘れ去る動物のようである。
過去3年間、フェラーリはアロンソに最高のマシンを提供したことがなかった。
にもかかわらずアロンソは二回チャンピオンに肉薄している。
これはアロンソ以外の誰も成し遂げられないことだ。
それを考えるとフェラーリの賭は失敗に終わる可能性が高い。
人間は感情の生き物である。アロンソはスペイン人ではあるが、非常に落ち着いていて感情をコントロールしている。だが彼も感情を持つ1人の人間である。
アロンソが2015年シーズンに移籍しても、驚かない。
それほどこの移籍はチームに大きな影響を及ぼすだろう。
来年一年であれば、この2人の関係は全く問題がないだろう
それが長期的にチームにどのような影響を及ぼすか、考えられた形跡は見られない。
それはチームが絶対であるフェラーリというチームの宿命なのかもしれないが。