F1 ニュース&コラム Passion

ベッテルとレッドブル 驚速の秘密

166988025_PG_4292_76DBD44441B84781192767A32690F353-s のコピー シンガポールで勝ったことにより夏休み明けのベルギーGPから3連勝を飾ったベッテル。夏休み前も速かったことに間違いはないのだが、ここまでの大差は見られなかった。何がベッテルをここまで独走させたのだろうか。
夏休み期間中に彼らが開発し投入したアップデートに原因があることははっきりしている。当然、他のチームも新しいアップデートを持ち込んでいる。フェラーリもハンガリーGPまでよりは競争力が増しており、アロンソの獅子奮迅の活躍もあって3レース連続で2位になっている。だがベッテルとレッドブルはそれをも遙かに上回るパフォーマンスを見せている。 この3レース、レッドブルは異なる三つのエアロパッケージを持ち込んでいる。これはこの三つのサーキットが全く異なる性格を持っているからであり、それは他のチームも同様である。であればレッドブルは他のチームより効率のいい空力のパッケージを投入したから3連勝したのであろうか。もちろんそれはベッテルの3連勝に貢献していることは間違いない。だが今日のF1でフロントウィングやリアウィング、ボディなどで得られるアドバンテージは限られており、この3レースで見せつけたベッテルのパフォーマンスを正当化する決定的要素としては考えづらい。 ここまでレッドブルが圧倒的なアドバンテージを得ている理由を考えると、やはりディフューザー領域であると推察するほかない。 現代のF1においてこのディフューザーエリアこそは勝負を決定づける要素であり、フロントウィングのマルチ化や複雑なデフレクターなどはこの領域をいかに 効率よくするかという目的で最適化されている。この部分でレッドブルが驚異的な進化を果たしたと考えなければ、この結果を理解することは難しい。 夏休み明けにレッドブルが新しいディフューザーを持ち込んでいることは確認されている。だが現在の厳しく制限されているディフューザーの形状を変えただけで圧倒的なパフォーマンスが実現するとも考えにくい。 となると最後に残るのは、エキゾーストブローとなる。 簡単に説明すると、これはエンジンから出る排気ガスをディフューザー周辺に吹き出し、ダウンフォースを得るテクノロジーである。古くは80年代のF1にも採 用されていた技術で、目新しいものではない。だが現代F1が過去の技術をそのまま採用するはずもない。かつてのF1ではアクセルをオンにして、エンジンの 気筒内で爆発が起こって出る排気ガスを利用していたのに比べ、今はスロットを閉じた状態でも排気ガスを吹きつけ、あらゆる速度領域で利用しようとしてい る。だがこれは昨年シーズン途中で制限され、今年禁止されたのだが、完全に使えないわけではない。 ある制限内ではスロットがオフの場合でも、排気を出すこ とが許されている。またオフスロットルの場合は厳しく制限されている排気も、逆に解釈するとオンスロットルの場合は自由に排気してもいいことになる。オンスロットル状態なら排気を出すことは合法である(ただし状況にあわせてトルク変動をある一定制限以上に変化させることは禁じられている。これはトラクション・コントロールのプログラムへとつながるからである)。
ただこれを言葉で書くと簡単そうに見えるプログラムなのだが、実際これを緻密にコントロールすることは難しい。どの回転領域でどの程度の排気を放出するか、またどこへ放出するか等考えるべき事は山積している。だから理屈では他の チームもわかっているのだが、なかなか実装することが難しかったり、実装しても理論通りの結果が出ないことも多い。 それをレッドブルとル ノーは成し遂げたからこそ、2011年のチャンピオンシップで圧勝することができた。過去3年間のチャンピオンシップを考えてみると2010年と2012 年はアロンソがチャンピオンになっていてもおかしくはなかった。圧勝した2011年はレッドブルがエキゾーストブローを本格的に使用した年である。 2012年はシーズン途中で厳しく制限がかけられて苦戦を強いられている。記憶のいい方は憶えているかもしれないが、昔のレッドブルは中高速サーキットで は滅法速かったが、低速サーキットでは競争力を失っていた。その彼らがオールラウンダーになったのは2011年で、それにはエキゾーストブローが関係している。なぜならエキゾーストブローは速度領域に関わらず、効果を発揮するからである。 こう考えるとジャンカルロ・ミナルディが指摘してい るベッテルの変わった排気音は興味深い。現在のF1は統一ECUを使用しており、トラクション・コントロールを秘密裏に仕込むことは難しい。であるならば ベッテルの異音はエキゾーストブローであると考えるのが適切である。ただ彼らがどの領域でどのように排気を利用しているのかは、不明である。
だが彼らがエキゾーストブローを効果的に使用しているとすれば、メルセデスGPのトト・ウルフが述べているように、残りレース全てをベッテルが勝っても何の 不思議もない。なぜならエキゾーストブローは全ての速度領域で効果的であり、全てのサーキットで威力を発揮するからである。そしてベッテルはそれを完全に使いこなしている。 ただ今シーズンはブローイングのエンジンマッピングは規制されており、この抜け道を探すのは容易ではない。しかしレッドブルは、この抜け道を見つけ出したと解釈しない限り、理解できないほどのスピードを実現している。 今週末の韓国GPでベッテルとレッドブルがどの程度のスピードを見せつけるか、とても興味深い。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください