マクラーレンとホンダの実力
ホンダは中国GPで12位と13位でフィニッシュした。珍しくリタイヤがないレースでのこの順位は、残念ながら今のマクラーレン・ホンダの実力を表していると言わざるを得ない。
このレースでは、マクラーレンのタイヤ選択のミスがあったことも確かである。
この日のメインタイヤは明らかにソフトタイヤであった。ソフトはタイムもよく、タレも少なかった。
だが彼らは二台のマシン両方に第2スティントと第3スティントでミディアムを履かせた。この作戦はエリクソン以外には誰も選択していない。
この作戦は明らかに間違いだった。第1スティントのライバルのタイムを見れば2回目のタイヤ交換でもミディアムを履かせたのは理解に苦しむ。
マクラーレンは金曜日の時点で、タイヤのタレが大きくてソフトは持たないと判断した。だがこの判断は間違いであった。そもそも金曜日と日曜日決勝レースのコースコンディションは異なる。だから金曜日のデータだけで判断すると間違えることが多い。路面の改善具合を想定して作戦を組み立てる必要がある。
もちろん土曜日午前中のフリー走行が雨になり、ミディアムでのロングランができなかった不運はあった。また雨でラバーが流れたことも不利に働いたかもしれない。だが気象条件はどのチームも同じ条件である。
同様のことはバーレーンGPでもおこっている。金曜日2回目のフリー走行で3位のタイムを出したバトンのセットアップを変更。土曜日のコンディションにあわないで、彼はバンドーンより後ろのグリッドからスタートすることになった。
これらのことを考えると、どうも今のマクラーレンはかつての常勝マクラーレンとは違うのではないかという疑問が思う浮かぶ。
そしてマクラーレンの一番の悩みはレッドブルの躍進である。彼らはPUがダメでもフロントロウに並べることを証明したし、表彰台も可能である事も見せつけた。
これはマクラーレンにとっては不吉な兆候である。昨年、まるでホンダだけが戦犯であるかのようにバッシングされてきたが、ホンダのPUの実力が上がってくると、マシン側にも問題があることがわかってきた。
もちろん私も昨年のホンダに問題がなかったとは言わない。いまさら言うまでもないが、パワーはないは、信頼性が低かったのも事実である。
今のマクラーレンが、もはやかつての栄光があった時代のマクラーレンではないことも確かである。
そう考えるとロン・デニスがホンダのPUを他チームに使わせたくない理由がよくわかる。もしホンダ搭載の他チームのマシンがマクラーレンより上位に来たら、ロン・デニスは言い訳ができない。
ホンダはもうマクラーレン頼みでは厳しいことを気がつき始めているだろう。そしてホンダには追い風も吹いている。
昨年、F1のメインプレーヤーの1人であるレッドブルがPUの供給先を見つけられないという問題があった。そこでバーニー・エクレストンがメーカーに多くのPUを供給するように即している。F1において彼の声は神の声である。
特にホンダはマクラーレンだけに供給しており、余力がある。ホンダとしても複数チームに供給した方が、得られるデータが単純計算で2倍になるわけで、開発には有利であるし、多少なりとも代金が入れば開発にも活かすことができる。
そして複数チームに供給すれば、客観的な評価もできるし、マクラーレンとの交渉でも有利に立てる。
だからロン・デニスは複数チームへの供給を拒んでいる。
では来年、ホンダを搭載するのはどこになるのであろうか。それはまたの機会にお話ししよう。
- リカルドのスーパードライブ
- レッドブル・ホンダは実現するのか?