ホンダは2チーム目のPU供給を検討しているのは間違いないだろう。バーニー・エクレストンもFIAも有力なチームがPUの供給を受けられなくて撤退するようなことだけは避けなければならない。
だからメーカーにはできるだけ多くのチームへPUを供給するように要請している。
マクラーレンは自分達の地位が脅かされるのを嫌い、ホンダが他のチームへ供給することを拒んでいるが、それを断り続けることは難しい状況になっている。
ホンダにとって製造能力だけを考えればあと1チーム供給先が増えても問題なく対応できる。問題はどのチームに供給するのかと言うことである。
日本人ドライバーを乗せたいのであれば、中堅チームに供給することは一つの選択肢である。ウィリアムズはスポンサーもあり、メルセデスのPUに満足しているので、この取り引きには興味を示さないだろう。
だが資金的に苦しいフォース・インディアやザウバーあたりは、取り引きを検討する。PUの費用は高騰しており、それが中堅チームの財政を圧迫しているからである。ホンダがPU費用をディスカウントすれば、興味を示すのは間違いない。
だがホンダの動向をもっとも注目し、ホンダも注目しているチームがある。それはレッドブルである。
レッドブルが中国GPでフロントロウと3位表彰台を獲得した。これは彼らが搭載しているルノーのPUの能力を考えると驚異的である。上海国際サーキットはF1カレンダー最長のストレートがあり、PUのパワーは即タイムに影響する。
この活躍によりメルセデスがレッドブルにPU供給する可能性は限りなく小さくなった。フェラーリも同様である。もしこの二つのメーカーがレッドブルにPUを供給すれば、自分達の順位を脅かされることは間違いないからである。
だがレッドブルもルノーの使用を継続しても、チャンピオンに返り咲くことが難しい事を理解している。そうなると彼らの選択肢はホンダしかないのである。
そしてホンダもまたレッドブルを必要としている。
昨年、マクラーレン・ホンダが低迷したとき、ホンダばかりが叩かれた。もちろんホンダの性能と信頼性は低く、叩かれるのもしかたのない面があった。だがマクラーレンの車体側にも問題があった。
それが今年、ホンダの性能が向上したので目立ってきた。今の状態であれば、ホンダがメルセデス並みのPUを供給してもマクラーレンが勝つことは難しいだろう。
そう考えるとホンダもまたレッドブルという金の卵を欲するのは当然である。
だがF1は魑魅魍魎が住む、一歩先は闇の世界である。契約書にサインしてもそれが反故にされるような世界である。
だからレッドブル・ホンダが実現するかどうかについては、まだわからない。だが水面下ではその交渉がおこなわれるのは間違いないだろう。
そしてその時、マクラーレンはどう反応するのか。今年はドライバー移籍だけでなく、PU交渉にも大きな注目が集まる。