Großer Preis von Europa 2016, Freitag
金曜日と土曜日午前中までは、ダントツに速かったハミルトンはなぜレースで勝てなかったのだろう。
その理由はセッティングにあった。金曜日の夜、メルセデスはあるセッティングの変更をおこなった。セッティングを微調整することは、何も特別なことではなく、ごく普通のことである。だがこの内容がハミルトンには問題だった。
この時、メルセデスはMGU-Kの設定を変更した。詳しくはハミルトンも言えないと話しているが、どうやらMUG-Kのエネルギー回収量を増やしたようである。
アゼルバイジャンのバクーサーキットは直線が長いので、できるだけたくさんの電気を発電して、モーターからのアシストを得たい。だがビッグブレーキングが必要なコーナーも少なく、回収するのが難しいサーキットである。
そこで金曜日に走らせてみた結果、メルセデスはMUG-Kの回生量を増やすことにした。当然、後輪に接続されているMUG-Kの抵抗が増えるので、前後のブレーキバランスも変更した。だがこれがハミルトンにとっては問題だった。
ハミルトンはコーナー飛び込みのブレーキングが素晴らしいドライバーである。当然、ブレーキのバランスには人一倍神経質である。それまで満足していたブレーキバランスが変わったことにより、ほんの僅かだがフィーリングとは違うブレーキタッチになったのだろう。
F1はブレーキで曲がるといっても過言ではないほどに、ブレーキングのフィーリングは重要である。これはドライバーによっても違うし、ブレーキのマテリアルメーカーによっても違う。
だから同じチームの同じマシンに乗るドライバーのブレーキのマテリアルが違うこともある。それくらい神経を細かく使うパーツなのである。
そこのバランスが崩れたことにより、ハミルトンは予選で何回もコースを飛び出しそうになり、最後はクラッシュして予選を終えた。
今のF1はとても複雑で差が小さいので、ほんの少しバランスが崩れただけでも、このような結果になるのである。