Großer Preis von Malaysia 2016, Freitag
ハミルトンはマレーシアGPの前、ロズベルグにポイントをリードされていたとしてもまったく焦るところはなかった。彼は自分の実力さえ出せれば勝てると信じており、実際レースはその通りに進んでいた。
一番の心配だったスタートも乗り切り、完全に勝ちペースになっていたハミルトン。しかも都合のいいことに最大のライバルであるロズベルグはスタート直後のターン1でベッテルと接触。最後尾近くまで落ちてしまった。
これでハミルトンはポイント差を逆転できるはずだった。ハミルトンがリタイヤしなければロズベルグは4位であり、レース前に8ポイント差だった二人の順位は入れ替わっていたはずだった。
逆にロズベルグはこの接触で大きく順位を落としたが、リタイヤしなかったのは幸運だった。ベッテルの左フロントのサスペンションアームは大きく曲がっていて、これでロズベルグが最後まで走り切れたのは奇跡的な幸運である。
40周目にハミルトンのPUは白煙と炎をあげてストップした。これで逆にハミルトンはロズベルグに差を広げられた。
さすがのハミルトンもマシンが減速したときに「No, No」と叫んでいた。彼の痛みはよくわかる。彼はレースをリードして、それほどプッシュもしていなかった。
それでも8台走っていたメルセデス製PUの中でハミルトンだけが火を噴いて止まった。これはなかなか信じがたい出来事である。
これでさすがのさすがのハミルトンも少し追い詰められた。だがこれで絶望的かというとそうでもない。まだ二人の差は23ポイント差である。これはロズベルグがリタイヤし、ハミルトンが優勝すれば1レースでひっくり返る差である。
現代F1のPUの製造品質の高さから考えて、1台のPUが壊れて、もう一台が壊れないと考える方が難しい。
ハミルトンが4連勝すればロズベルグが4連続2位でもひっくり返せる。自力での逆転がまだ可能である。
だがこれ以上差を広げられるとハミルトンも苦しい。残りレースの数が減ってくるからである。そしてハミルトンが次にやらなければならないのは日本GPで優勝することである。
そこからしか奇跡の逆転劇は起こりえないのである。