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ボッタスの初優勝とメルセデスの憂鬱

今シーズンからメルセデスをドライブするボッタスが初優勝を飾った。いつの時代も初優勝のドライバーを見るのは楽しいことである。F1に乗るドライバーで才能がないドライバーはいない。F1は誰でも簡単にドライブできるマシンではない。

だがそれでもF1で勝つには、マシンの能力と少しの幸運も必要である。それだけにロシアGPでのボッタスの初優勝は価値がある。外部から見ればメルセデスに乗っているのであるから、ボッタスが勝つのは当たり前と思われてしまうが、それでも簡単にF1で勝つことできない。たとえメルセデスに乗っていたとしてもである。

なぜなら彼のチームメイトのハミルトンはフェラーリの2台に全く歯が立たず4位に終わっている。二人は同じマシンとパワーユニットを使っている。しかもハミルトンは3回のワールドチャンピオンである。実力に疑いはない。それだけに今回のボッタスの優勝は大きな価値がある。

ハミルトンの失速の原因はタイヤの温度管理がうまくできなかったからである。簡単にいうとタイヤのオーバーヒートである。ピレリタイヤは適切な温度領域が狭い。だからその温度領域にある限りはいいグリップを発揮できるが、それを外れると途端にグリップが失われる。

今年のメルセデスのマシンは、このタイヤの温度管理がうまくできない。予選でフェラーリの2台に敗れたのもそれが大きな原因である。ハミルトンはセクター3だけで0.5秒も失っている。普通の走りができていればひとつのセクターだけでこれだけ大きなタイムを失うことは考えにくい。

本来ストーレートの長いソチのサーキットはメルセデスが有利なはずだった。だがその有利なサーキットでフェラーリにフロントロウを独占されたことは、メルセデスにとってはショックな出来事である。

ではボッタスはどうして、優勝できたのであろうか。まず一番の勝因はスタートでベッテルをかわしたことである。完璧なスタートを決めたボッタスはターン2でベッテルをかわした。これによりボッタスはクリーンエアの中で走ることができた。

これはタイヤマネージメントの面から見ると理想的である。今年のメルセデスは他のマシンの後ろを走ると、その空気の乱れの影響を大きく受けて、ドライビングが難しくなる。もちろんどのマシンも、前にクルマが走っている時は、その乱流の影響を受ける。だがメルセデスは特に大きな影響を受けている。

逆にフェラーリはタイヤの温度管理面でもセットアップの幅が広く、長い距離をいいタイムで走ることができる。さらに乱流の影響を受けにくく、オーバーテイクをするのも他のマシンよりは容易である。

つまりメルセデスが勝つには予選で前に出て、スタートを決めてトップでレースを展開する必要がある。逆転で勝つのはかなり難しい。

だからメルセデスはロシアで勝てたのだが、全然安心できる状況ではない。逆にフェラーリは敗れたものの、自分達のパフォーマンスにさらに自信を深めている。

だから開幕から4戦してフェラーリに2勝、メルセデス2勝であるが、互角という印象ではなくフェラーリの方が有利であると考えられる。