
今シーズンから始まった、フェルスタッペン、レッドブル、ホンダとの協力がが見事な結果となった。
今回はレッドブルが誰のトラブルにも助けられず、本当の実力で勝った。
もちろんボッタスのエンジントラブルやフェラーリの同士討ちはあったが、フェルスタッペンの勝利には何の影響もなかった。彼に食い下がったのは唯一ハミルトンだけ。だが彼すらもフェルスタッペンを止めることは出来なかった。
予選では全セッショントップタイム。Q3最初のアタックでミスしたにも関わらず、トップタイムで危なげなくポールポジション獲得した。
スタートでもトップをキープし、最初のピットストップでハミルトンにアンダーカットされるが、タイヤ交換後に簡単にパス。ハミルトンはフェルスタッペンをアンダーカットする為に、バッテリー容量を使い切ってしまったので、フェルスタッペンが追いついてきても、なす術がなかった。
だがレースのハイライトはレース終盤に現れた。ボッタスがエンジントラブルでコース脇にマシンを止める。特に危険な場所でもなかったので、イエローフラッグでレースは続行されると思ったが、なんと予想外にセーフティカー登場した。実はこの時、ボッタスのマシンはランオフエリアで亀の子状態になっていて、押してもマシンが動かなくなっていた。つまり移動させるのにクレーンが必要だった。
ここでレッドブルが動いた。なんとトップを走るフェルスタッペンをピットに入れたのだ。この時点でフェルスタッペンはすでに2回タイヤ交換しており、最後まで走れる予定だった。
だが二位のハミルトンがフレッシュなソフトに交換した場合、守るのが難しいと判断したレッドブルの作戦担当(なんと女性である!)はタイヤ交換をコールした。トップを走るドライバーを先にタイヤ交換させると言うのはかなり勇気のいる判断である。順位を失うこと意味するからである。
メルセデスはハミルトンに、フェルスタッペンと逆の行動をするように指示した。つまりフェルスタッペンがピットインするなら、ステイアウトすると言うことである。この決断はあとでメルセデスとハミルトンに大きな犠牲を強いることになる。
これで順位を落としたフェルスタッペンだったが、この日のレッドブルホンダは最強だった。再スタート後すぐにハミルトンをオーバーテイクする。
そしてこの後、フェラーリの同士討ちで再びセーフティカーが登場した時にハミルトンはピットインする。これは結果的に間違った判断となった。先ほどのセーフティカーより時間を開けずに再度セーフティカーが出たことにより、前後のマシンの間隔は先ほどより狭くなっていた。つまり同じロスタイムでも多くの順位を落とすことなる。ハミルトンは4位まで順位を落とした。前はトロロッソのガスリーとレッドブルのアルボンである。そして更にメルセデスに誤算があった。予想より長くセーフティカーが登場していたので、残り周回数が二周でレース再開となった。ガスリーは簡単に抜いたハミルトンだったが、この時点で残り一周半。フェルスタッペンにアタックするなら、早くアルボンを抜かないといけなかった。
そしてアルボンのインに飛び込んだハミルトンは接触した。チャンピオンが決まる前ならこんな無茶はしなかったと思うが、勝ちに行くためにハミルトンはリスクを犯した。これでガスリーが二位に浮上した。
フロントウィングにダメージのあったハミルトンだったが、それでもガスリーを追う。最終ラップの最終コーナーで並びかかるハミルトンだったが、上りのストレートでの加速はほぼ互角でガスリーは二位をキープ。ホンダのパワーユニットがメルセデスと互角であることを見せつけたレースとなった。
この日はレッドブルだけでなく、トロロッソも好調で、ガスリーは常に上位3チーム以外では最上位を走り続けていた。だからボッタスとフェラーリがリタイヤした時に、このポジションを得ることができたので、決して偶然だけで獲得した2位ではない。
故本田宗一郎氏の誕生日にホンダのパワーユニットを搭載した二台がワンツーフィニッシュ。ホンダがブラジルGPで勝ったのはあのセナ以来のことである。
それにしても5年前の悲惨な状況から、ここまで来るなんて、本当にホンダの皆さんの努力の賜物である。
これは来年は本当に楽しみである。

▽自滅したフェラーリ
二台が接触する前の状況を確認してみる。ルクレールはPU交換でグリッド降格ペナルティを受けていて、優勝争いに絡めそうなのはベッテルのみという状況だった。だがセーフティカーが登場したことで、ルクレールとベッテルのバトルが始まった。
ルクレールはセーフティカー中に新品のソフトにタイヤ交換済み。ベッテルはフレッシュなタイヤが残っていなかったので中古のソフトを履いていて、しかもルクレールよりも5周も早くタイヤ交換していた。だからそもそもルクレールの方が速かった。実際、ルクレールはベッテルをターンワンで抜きにかかる。だがベッテルも踏ん張りバックストレートでは少しリードしていた。そこへベッテルがルクレールのいる左に少し進路変更。ルクレールもその動きを避けきれずに二台が接触した。
さてこれはベッテルが悪いのだろうか。確かに映像を見ていると、ベッテルがルクレールに寄せて接触している。だかよく見ると、ストレートに出てきた時点でルクレールは目一杯ベッテルに寄せていて、ベッテルの右側には全くスペースがない。ベッテルは白線を踏んでいる状況であった。つまりベッテルはギリギリコースの右側にいたので、スペースを作るために少し左側に動いるに過ぎない。
一方、ルクレールはベッテルが寄せているのに全く避けるそぶりをしていない。これはルクレールがベッテルにスペース与えるつもりがないことを表している。
ルクレールがベッテルにスペースを与えるべきだと言うつもりはないが、ベッテルの方が前にいたことを考えると、この接触を避けるためには、ルクレールが進路を変更するしかなかった。
実はルクレールはこのレースの序盤、マクラーレンのノリスに幅寄せしている。この時はノリスが避けたので接触しなかったことを考えれば、ルクレールが避けても良かったと思う。ルクレールの方がタイヤの状態が良かったのだから、この後でもベッテルを抜くことはできたと思うからである。結局、接触してしまえば、自分もベッテルも、そしてフェラーリも誰も得しないのだから。

▽アルボン無念の入賞圏外
アルボンも自身初の表彰台が見えていた。二回目のセーフティカーがはけた後で、アルボンは二位で残り二周。レッドブルの速さをもってすれば抑えることはできたと思う。
確かにハミルトンがアルボンのインをつき、後輪に接触したのだからハミルトンの責任であろう。ただアルボンもあのコーナーで後ろに誰もいないかのように、インを完全にオープンにしてコーナーにアプローチしている。これではまるでハミルトンにインに来てくださいと言っているようなものである。
もう少し慎重にインを閉めていれば、この様なインシデントに巻き込まれることはなかったと思う。
それにアルボンは勝てるマシンに乗っているのだから、セーフティカーが出なくても実力で表彰台に登って欲しい。
それができないと来シーズン、レッドブルホンダが競争力を持ったとしても、コンストラクターズタイトルを争うことは難しいだろう。