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ジョージ・ラッセル、揺るぎなき完全勝利の裏側:カナダGP観戦記

2025年F1世界選手権第9戦、カナダGP。モントリオールにあるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、週末を通して熱気と興奮に包まれていた。詰めかけた数十万人の観客たちは、90分間にわたり繰り広げられたF1というスポーツの真髄を目の当たりにすることになった。戦略、駆け引き、そして極限のドライビングスキルが織りなすスペクタクル。その全てを制し、勝利のチェッカーフラッグを受けたのは、メルセデスのジョージ・ラッセルだった。彼にとって今季初勝利、そしてメルセデスにとっては、長く苦しんだシーズンにようやく差し込んだ光明となる、まさに象徴的な一戦だった。

■ 週末を支配したラッセルとメルセデスの研ぎ澄まされた戦略

カナダGPの週末、ジョージ・ラッセルとメルセデスの仕上がりは、予選から群を抜いていた。特にラッセルは、金曜日のフリー走行から一貫して速さを見せ、土曜日の予選ではそのパフォーマンスが最高潮に達する。彼が刻んだポールポジションラップは、コースの3セクター全てにおいて完璧な精度を誇り、強力な直線スピードを武器とするレッドブル勢を完全に抑え込んだ。

「このジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで完璧なラップを刻むには、マシンとドライバーのリズムが完全に噛み合う必要がある。今日はまさにそれを肌で感じることができた」と、ラッセルは予選後の記者会見で興奮を隠さずに語った。

メルセデスは、今回のカナダGPに向けてマシンに特別なセットアップを施していた。彼らは、モントリオールの高速レイアウトとタイトなシケインが混在する特性を見抜き、ダウンフォースをある程度維持しつつも、特にタイトコーナーからの立ち上がりで重要なトラクション性能を重視したセッティングを選択した。この狙いは、タイヤへの熱入れを最適化し、レース終盤まで安定したグリップを保つことにあった。彼らのこの緻密な戦略は、決勝でのタイヤマネジメントにおいて明確な優位性をもたらすことになる。

■ フェルスタッペンの猛攻を退けた冷静なドライビング

決勝スタートの瞬間、全ての視線がポールポジションのラッセルと、2番手グリッドのフェルスタッペンに注がれた。フェルスタッペンはスタートでラッセルを出し抜き、早々にレースの主導権を握りたいと目論んでいたはずだ。しかし、ラッセルは期待を上回る素晴らしい蹴り出しを見せ、ターン1までの短い距離も味方につけてトップを死守。フェルスタッペンの試みは失敗に終わった。

ラッセルとしては、このままリードを保ち、自身のペースでタイヤマネジメントに専念したかったはずだ。だが、マックス・フェルスタッペンはそんな悠長な時間を与えるつもりは毛頭なかった。彼はDRS圏内から決して逃さないよう、執拗なまでのプレッシャーをかけ続ける。最初の4周で、フェルスタッペンはラッセルのミディアムタイヤにさらなる負荷をかけさせようと仕掛けた。レッドブルの強みである直線での圧倒的なスピードを活かし、バックストレートでのオーバーテイクを狙っていたのだ。

予選後、フェルスタッペンは新型RB21の空力効率性を高く評価していた。レッドブルはリアウイングを削り、最高速を稼ぐ方向にセットアップを振っていたため、コーナーでのパフォーマンスを多少犠牲にしていた。予選ではラッセルがその差を利用してリードを奪ったが、決勝ではフェルスタッペンの方が加速とトップスピードで僅かに優位に立っていたのである。

スタート直後の0.6秒あった両者の差は、フェルスタッペンの猛追により、わずか4周の間で0.5秒まで縮まった。だが、ここでラッセルの真価が発揮される。彼はターンの脱出を完璧にまとめ、巧みにトラクションを確保することで、フェルスタッペンのDRSによる恩恵を打ち消したのだ。これにより、5周目の終わりにはフェルスタッペンがオーバーテイクを諦めざるを得なくなった。すでにミディアムタイヤの寿命を序盤で大きく消費してしまっていたからだ。

■ アントネッリの台頭とレッドブルの緊急ピットイン

カナダGPにおけるタイヤのデグラデーション(性能劣化)は、各チームの戦略担当者にとって極めて繊細な問題だった。タイヤ供給元であるピレリは事前に、2ストップ戦略がより現実的であると予測していた。しかし、中団でのDRSトレイン発生の可能性も考慮すると、トラックポジションを重視し、ギャンブル的な1ストップ戦略にも一定の説得力があった。だが、トップグループにとって、そのようなリスクの高い選択は歓迎されるものではない。だからこそ、フェルスタッペンは序盤でタイヤライフを犠牲にしてでもラッセルを前に出ようと必死だったのだ。

ラッセルはこの最初の攻撃を冷静に耐え切り、その結果としてフェルスタッペンは徐々にペースを落とし始める。そして、彼の背後には、メルセデスのルーキー、アンドレア・キミ・アントネッリが迫っていた。

モントリオールでのF1初レースという状況にもかかわらず、この10代の若者はまるでベテランのような落ち着きとアグレッシブさを見せた。オープニングラップでは、ランキング首位を走るオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を軽々と退けるという離れ業を演じていた。ターン1ではアウト側をキープし、ターン2ではイン側のラインを奪ったアントネッリは、外側に踏みとどまっていたピアストリと並走しながらターン3のブレーキングを遅らせ、力強く前に出て3番手の座を奪ったのだ。

オープニングラップでは、フェルスタッペンがラッセルに執拗なプレッシャーをかけているのを見て、アントネッリはあえて慎重な走りを見せていたが、ここに来てその冷静な判断が功を奏し始めていた。彼はレッドブルの背後にじわじわと、しかし確実に迫りつつあったのだ。

フェルスタッペンのペースは1分16秒5~7に落ち込み、アントネッリはそれまで2秒あったギャップをみるみるうちに詰め、逆に追い上げていった。タイヤが傷んだことでペースの上がらないフェルスタッペンは、アントネッリとの熾烈なバトルに引きずり込まれる。そして、それは彼に勝ち目のない戦いだった。DRSを使ったメルセデスのアントネッリに抜かれると、フェルスタッペンは即座にピットレーンへ逃げ込み、12周目の終わりにハードタイヤへ交換した。

「第1スティントのタイヤが予想以上に早く落ちてしまった。リスクを取ってでも、早めに動くしかなかった」とフェルスタッペンはレース後に語った。

この時点でのタイヤ交換はやや攻めすぎにも見えたが、レッドブルの戦略部門が下したこの大胆な決断は、最終的にフェルスタッペンの2位確保に大きく貢献することになる。彼のピットインによって、アンダーカットを避けたいラッセルも翌周に動かざるを得なくなり(そのためアントネッリはもう一周待たなければならなかった)、フレッシュなハードタイヤで2周分のアンダーカットを成功させたフェルスタッペンは、1回目のピットストップを終えた時点ではアントネッリの前に出ることに成功した。

■ ラッセル、冷静沈着なレース運びでリードを堅持

ラッセルは、フェルスタッペンのアンダーカットを許さず、冷静に先頭の座を守り切った。「彼ら(レッドブル)が動いてきたのを見て、すぐに我々も反応する必要があった。チームのピット作業も素晴らしく、完璧なタイミングでマシンを送り出せた」とメルセデス代表のトト・ウルフは語った。

第2スティントに入っても、再びフェルスタッペンが少しずつラッセルにプレッシャーをかける構図になったが、ラッセルはそれに十分対処できていた。燃料搭載量の多い状態では、レッドブルのタイヤの扱いがメルセデスほど繊細ではなかったのだ。

ラッセルはレース後、フェルスタッペンが少しずつミラーの中で大きくなっていったことについて、特に気にしていなかったと語っている。むしろそれは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)とランド・ノリス(マクラーレン)の“ダーティエア”(先行するマシンが作り出す乱れた空気の流れ)による影響だと分析していた。ルクレールとノリスは、予選で予想外にポジションを落としたことで、ハードタイヤスタートで第一スティントを長く走るという変則的な戦略を採っており、彼らがラッセルの視界に入ってきていたのだ。

「シャルルとランドが変則戦略で走っていて、少し邪魔になっていた場面もあった。でも、彼らをパスしてクリアエアを得られたら、フェルスタッペンとのギャップを広げるのはそれほど難しくなかった。もちろん、簡単ってほどじゃないけど、自分とマシンに自信が持てていたからね」とラッセルはレース後に語っている。

実際、ルクレールに追いついたタイミングではフェルスタッペンとのギャップは1.5秒にまで詰まっていたが、ルクレールを巧みに処理すると、再び2秒まで引き離すことに成功した。そして、29周目にノリスがピットインしたことで完全に前方が開け、ラッセルは自身のペースで周回を重ねることが可能になった。

そこからは、ラッセルのリードが一気に拡大していく。わずか7周後にはその差は5秒を超え、フェルスタッペンは再びアントネッリの猛追に晒されるかのような展開となった。

フェルスタッペンとしては、再びアントネッリにオーバーテイクされるのを避けたい一心だった。しかも、この3周の間にアントネッリは1周あたり0.6秒、0.8秒、0.7秒と着実にフェルスタッペンよりも速いペースで周回していたため、もう1周走り続けても守り切れる保証はなかった。そう判断したフェルスタッペンは、37周目の終わりに再びピットインし、最後のスティントに向けたハードタイヤに履き替えた。

この3度目のハードタイヤセットでは、フェルスタッペンもかなり快適に走行できていた。しかし、上位に立つラッセルのリードを考えると、メルセデス側には即座に反応する理由がなかった。代わりにアントネッリが次の周にピットに入り、怒涛のインラップでフェルスタッペンの鋭いアウトラップに応戦。2台はピット出口で、文字通りサイド・バイ・サイドで並ぶ形となった。

だが、フェルスタッペンの新しいタイヤが、すでに温まっていたため、ターン3でアントネッリを辛うじて抑え込むことができた。この一連の展開は、フェルスタッペンの言葉を借りれば、レッドブルの「攻めのピット戦略」の集大成であり、最終的にその正当性を証明する瞬間でもあった。

新しいタイヤでのフェルスタッペンは確かに速かったが、残り30周以上ある状況では無理に攻め続けるわけにもいかなかった。そのおかげで、ラッセルはさらに4周スティントを引っ張ることができた。左リアのタイヤ交換にやや手間取り、ピットストップで少しタイムを失ったとはいえ、それでも3秒以上のリードを維持したままコースに戻ることができた。

■ 最終盤の激闘:マクラーレンの自滅とセーフティカー

後方から迫っていたノリスとルクレールはすでに早めに最終ストップを済ませていたため、ラッセルにとってはさほど気になる存在ではなかった。むしろ問題だったのは、周回遅れのマシンたちだった。彼らの存在が少しずつラッセルのリードを削り、その隙にフェルスタッペンとアントネッリが追い上げ、さらにはピアストリも加わってきていた。タイミングを合わせるように、フェルスタッペンはペースを上げて1分14秒台前半に突入。一方のラッセルは14秒半ばに留まっていた。

ラッセルがフランコ・コラピントを周回遅れにする際に約0.5秒をロスした直後、フェルスタッペンはその隙を突いてギャップを1.1秒まで縮め、DRSを使った終盤の逆転に賭けようとしていた。だが、トラフィックは時にタイムを与え、そして奪っていく諸刃の剣でもある。今度はエステバン・オコンの存在がラッセルに有利に働き、それまでのダメージを相殺し、再びリードを広げることができた。

それでもフェルスタッペンは、ラッセルよりもアントネッリの方が脅威に感じていたと語っている。アントネッリは彼のすぐ後ろ、2秒以内にまで迫っていたのだ。「最後のピットストップでは、正直ゴールまで競争力を保てるかちょっと心配だった。第2スティントのハードタイヤでもすでに苦しんでいたからね」とフェルスタッペンは言う。

「燃料が軽くなったのは助けにはなったけど、ジョージとの差はそこまで大きくなかったし、正直なところ彼に仕掛けられるようなペースはなかった。むしろ後ろを気にして、タイヤを傷めないように走ることの方が重要だったよ」。

その結果、アントネッリはフェルスタッペンを追う過程でタイヤを少し酷使してしまい、背後のピアストリにとっては格好のターゲットとなっていた。DRSを使って何度か仕掛けたものの、ピアストリには決定打がなかった。さらにトラフィックとの遭遇のタイミングによっては、ノリスまでもがこの三つ巴に加わってくることになった。

レース終盤、ピアストリ、ノリス、アントネッリの3台による表彰台争いが過熱する中、67周目に大きな事件が起きる。

ピアストリは、タイミングの悪い場所で中団車両に引っかかり、苦戦を強いられていた。そのおかげで、ピアストリはアントネッリのDRS圏から外れ、ノリスがチームメイト相手に攻めるチャンスが生まれた。

ノリスは当初、慎重な姿勢を取っていた。だからこそ、ターン13のDRS区間でピアストリのインに強引に飛び込むことはしなかった。そしてピアストリは、その後フェルスタッペンがアントネッリを引き離したことで再びDRS圏内に戻った。

だが、ターン13での遠慮がちなアプローチとは対照的に、ノリスは66周目の終わり、ヘアピンでピアストリのイン側に飛び込み、2台はバックストレートで並走する形となった。そしてアントネッリが前にいたおかげで、両者ともにDRSを使える状況にあった。

ノリスはシケインではアウト側のラインを取ったが、これは通常不利なラインである。そこで彼はシケインへの飛び込みでは無理をせず、立ち上がりを重視した。そのためイン側からシケインに飛び込んだピアストリは、立ち上がりが苦しく、ノリスの加速が勝った。その加速とトウ(前走車の後ろにつくことで空気抵抗を減らす効果)を使いつつピアストリの背後に迫るノリス。

しかし、ここで全てが崩壊する。彼はスタート/フィニッシュストレートで狭いイン側のラインを選び、それをピアストリが守っていたにもかかわらず、強引にノーズを突っ込んだのだ。結果、芝生に乗り上げ、接触。観客の悲鳴が響き渡る中、ノリスはそのままリタイアとなった。

「チームメイトと接触しないことが僕たちの一番のルールだけど、残念ながら今日はそれが起きてしまった。オスカーとチームに心から謝りたい。あの瞬間、わずかなチャンスがあるように思えて動いてしまったけど、今振り返ればあの動きは絶対にすべきじゃなかった」とノリスは深く反省の言葉を口にした。

一方、チーム代表のアンドレア・ステラは「ランドは力強い追い上げを見せていたけれど、オスカーとの接触でリタイアとなってしまった。この接触はランドの判断ミスによるもので、チームとしては彼がすぐに責任を認めたことを評価している。重要なチャンピオンシップポイントを失ったことは非常に痛いが、今はチーム一丸となってこの状況を乗り越え、いくつかの見直しを行い、これまで非常に良い流れを見せてきたシーズンを再び継続していきたい」と語った。

このクラッシュによりセーフティカーが導入され、隊列が形成される過程で、ラッセルがブレーキ温度を管理するために一時的に減速した瞬間、フェルスタッペンが前に出る場面が発生した。これに対してレッドブルは抗議を行ったが、スチュワードは「故意性も順位の利得も認められない」として却下した。

「彼(ラッセル)がブレーキを温めるのは理解できるが、そのやり方がギリギリだったのは確かだ」とレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は述べたものの、裁定が覆ることはなかった。

■ “二重の勝利”を掴んだラッセル、そして輝くアントネッリ

波乱に満ちたレースを制し、ウィニングランを終えたラッセルは、チームメイトやスタッフと勝利を分かち合った後、満面の笑みでインタビューに応じた。「チームにとって今季初勝利を挙げられて本当に嬉しいよ。レースを通じて常にコントロールできている感覚があって、しっかりとマネージしながら勝利に持ち込めた。気温が少し高かったから、金曜よりは苦労するかと思っていたけど、タイヤマネジメントも上手くいって、後続からの追撃を抑える十分なペースもあった。ブレックリーとブリックスワースの全員に大きな感謝をしたい」。

「最近マシンが進化しているのは明らかだ。モントリオールは元々僕らに合っているサーキットだけど、それでも良いステップが踏めたと思う。でもまだ慢心はできないし、毎戦で勝利を争えるようになるにはまだやるべきことがたくさんある。次のオーストリアでもう一歩前進できるように頑張るよ」。

戦略眼、正確なドライビング、そして極限状況での対応力。F1ドライバーに求められる全ての要素を兼ね備え、見事に勝利を手にしたジョージ・ラッセルにとって、今回のカナダGPはまさに彼のキャリアの中でも特別な一戦となったことは間違いない。

そしてこの日、もう一人のスターが誕生した。高校生にしてF1で衝撃的なデビューを飾ったアンドレア・キミ・アントネッリだ。初の表彰台を獲得した彼は、喜びと疲労が入り混じった表情で語った。「めちゃくちゃ集中力を使うレースだった!でもF1で初めて表彰台に乗れて本当に嬉しい。スタートがすべてだったね。ピアストリより前のポジションを取れたことで、自分たちのペースをしっかり発揮できた」。

「何度かフェルスタッペンを捕まえられそうな場面もあった。最後のスティントでは、序盤に少しプッシュしすぎて終盤がきつくなってしまったけど、それでもマクラーレン勢を抑えて3位でフィニッシュできた」と語り、将来への確かな足掛かりを得た。

一方、勝利こそ逃したものの、最大限の結果を持ち帰ったフェルスタッペンは、2位という結果に一定の満足感を示した。「今日は間違いなく持てる力を最大限引き出せたと思う。守る側に回るレースだったし、かなり厳しい戦いだった。タイヤのデグラデーションが高くて、第1スティントと第2スティントではかなり早くタイヤが傷んでしまった。戦略面ではかなりアグレッシブに行って、最後のピットストップ後はこのままゴールできるか不安もあったけど、燃料が軽くなった分タイヤにも優しくなって、最終スティントは少し改善した」と分析する。

「レース全体を見ても、これが現実的に取り得る最大の結果だった。優勝争いをするにはペースが足りなかったし、デグラデーションも多すぎた。だから2位には満足しているよ。ジョージとの差も大きくはなかったけど、正直、戦えるほどのスピードはなかった」。

■ F1は“速さ”だけでは勝てない:モントリオールが示した真実

今回のカナダGPは、単に速いマシンや速いドライバーが勝つという単純な方程式では語れない、F1の奥深さを改めて教えてくれたレースだった。ジョージ・ラッセルは、マシンのポテンシャルを最大限に引き出しながらも、レースマネジメント、タイヤの温存、そしてプレッシャーの中で最善の判断を下し続けるという、ドライバーとしての総合力が試される戦いを制した。彼の冷静沈着なドライビングと、メルセデスの研ぎ澄まされた戦略が完璧に融合した結果だったと言えるだろう。

F1は、最先端の技術が鎬を削る技術競争でありながら、最終的にはドライバーの判断力と精神力が結果を左右する、極めて人間的なスポーツである。2025年カナダGPは、そのF1の本質を再確認させてくれる、記憶に残る一戦として歴史に刻まれた。この勝利がメルセデスの、そしてラッセルの今後のシーズンにどのような影響を与えるのか、次戦以降の展開から目が離せない。