▽痛恨!ルノーの判断ミス
今回、ルノーは予選から完全にGPをコントロールしていた。
ここのところフェラーリ優勢のGPが続いていただけに、予選で天候に恵まれたとはいえミハエル・シューマッハーを引き離す絶好のチャンスだった。
しかし、それをたった一つの判断ミスから失うことになった。
その判断ミスとは、アロンソの最初のピットインでフロントタイヤを交換したことだ。
これにより一時は30秒近く差のあった、フィジケラとミハエル・シューマッハーに逆転されてしまった。
その後、アロンソは路面が乾いてくるのを待ち、ドライタイヤに交換。
タイヤ交換後は、ファーステストラップも記録できていただけに、悔やんでも悔やみきれない判断ミスだった。
アロンソが失速したのは、新しいタイヤのが暖まるのが遅く、タイヤがグリップしなかったからだ。
今回は特に気温が低く、タイヤ温度が上昇するのに予想以上に時間がかかってしまった。
アロンソは4周程度で、温度が回復すると予測していたが、実際には8周から9周もかかってしまった。
一度、ペースが落ちてしまうと、それが更にタイヤ温度の上昇を妨げてしまう悪循環に陥ってしまう。
これは今年、ホンダが悩まされ続けてきた問題だった。
それがルノーを直撃したのだ。
大半のクルマは路面が乾く中、フロントタイヤ(特に左側)が摩耗していたが、最初のピットストップでタイヤ交換せずに走り続けた。
アロンソはフロントタイヤの摩耗を訴えており、念のためフロントタイヤだけを交換させたのだろうが、これが完全に裏目に出た。
それにしても痛い、ルノーとミシュランの判断ミスとなった。
だが、それにも負けずに最終的に2位になったアロンソはやはり素晴らしいドライバーと言えよう。
今回、三位以下になった場合、残り二戦で大変苦しい立場に立たされることになっていたが、これでミハエルと同点。
ラスト二戦で勝負を決する。
▽ミハエル・シューマッハー渾身のアタック
今回、勝ったミハエル・シューマッハーだが、実際はかなりきわどい勝利だった。
最大のピンチは予選の第二ピリオド。
雨が降り続く中で、コンディションに合わないブリヂストンのスタンダード・ウェットを履くミハエル・シューマッハーは第二スティントで脱落する可能性があった。
それを最後のアタックで、10位以内に滑り込むスーパーラップ。
トヨタを含むブリヂストン勢の大半が第一ピリオドで脱落し、マッサやウィリアムズ二台も第二ピリオドで脱落する中、BSユーザーで唯一第三ピリオドに進んだミハエル・シューマッハー。
七回のワールドチャンピオンに輝いた偉大なドライバーの力をまた見せつけた。
グリップ不足のタイヤで、アタックすることは非常に難しい。
しかも、ミスが絶対に許されないラストアタックで、ベストラップをたたき出す技術と精神力は脱帽だ。
第三ピリオドに入り若干雨が弱まったことも、ミハエルに味方し予選6位なったが、それも第二ピリオドを通過できたからこそ。
現役も残り少ないが、他のドライバーとは力が違うことを証明した。
二回目のストップを終えた後のアタックも素晴らしかった。
ドライタイヤ交換直後、タイヤ温度があがっていない状況で、しかも路面はまだ濡れている部分もあった。
その状況でものすごい走りを見せて、ピットアウトしてきた、フィジケラをかわした。
コンディションが難しければ難しいほど、ミハエル・シューマッハーは真価見せてくれる。
決勝レースでも雨がスタート前に上がったことは、ミハエルにとっては幸運だった。
ただレース前、ちょい濡れの状態はブリヂストンに有利なコンディションであると考えられていたが、想像以上にミシュランの出来がよく、乾きつつある路面でもミシュランとブリヂストンの差は予想より大きくなかった。
それだけにルノーの作戦ミスはあったにせよ、今回の勝利は価値がある。
本当になぜ、引退するのかわからない。
▽ホンダ、順当な位置に
予選でホンダの二台は全く同タイムを記録。
予選3位、4位で二列目を占めた。
しかし、決勝で路面が乾いてくると、ミハエル・シューマッハーの敵ではなく、ルノーにもついていけずに4位と6位になった。
これは今のホンダの競争力を表しており、順当な結果だろう。
なので、次の鈴鹿でも大きな期待はできないだろう。
特に次は2007年バージョンのエンジンを投入予定なので、信頼性が心配だ。
これは2008年からエンジン開発が凍結されることが決定しており、その開発中止のエンジンの原型が今年の日本GPで使用されるエンジンになると決まったからだ。
話しが複雑なのだが整理するとこうなる。
今のところエンジン開発が凍結されるのは2008年から。
だが元になるのは2006年に使用していたエンジンになる。
2007年のエンジンで、2008年を戦うわけではない。
これはFIAがエンジン開発凍結を2007年度から前倒しで適用したいために、チーム側に圧力をかけるための措置と考えられる。
つまり、エンジン開発凍結は2008年からなので、2007年はエンジン開発しても良いけど、どうせ2008年は2006年バージョンのエンジンを使うのだから2007年の開発は無駄。
だったら2007年からエンジン開発凍結しようよというのがFIAの狙いだ。
最後の鈴鹿になりそうなので、ホンダにはがんばって欲しいが、開発不足のエンジンだけに信頼性には不安が残る。
スーパーアグリの山本左近は初の完走。
難しいコンディションだったので、とりあえず良かった。
もう一人の佐藤琢磨は14位を走行していたが、最終ラップで順位を争うハイドフェルドとホンダの二台に周回遅れにされるときに、三台の結果に影響を及ぼしてしまい、それが元で失格となってしまった。
琢磨はハイドフェルドを先に行かせようとラインをイン側にずらしたのだろうが、その前に周回遅れのアルバースがいてハイドフェルドは行く手を阻まれてしまった。
それにより、バトンはハイドフェルドをかわしたが、バリチェロとハイドフェルドは接触。
佐藤琢磨は一連のアクシデントの責任を取らされる結果となった。
琢磨は、ハイドフェルドを前に行かせようとしてレコードラインを外したのだが、アルバースが前にいて、さらにイン側からホンダの二台がくる状況の中で、難しい判断を強いられてしまった。
▽最後の鈴鹿にむけて
ミハエル・シューマッハーとアロンソは同点で、鈴鹿を迎える。
はっきり言って、ドライバーズ・サーキットである鈴鹿でこの二人以外が1位、2位になるのは難しいだろう。
そうすると鈴鹿でどちらが勝つにしても、2点差で最終戦に行くことになる。
そうすると、勝ち星が多いミハエル・シューマッハーが圧倒的有利だ。
そう言う意味で、今回ミハエル・シューマッハーが優勝した意味は大きい。
今回の結果でミハエル7勝、アロンソ6勝となったからだ。
もし、次のレースでミハエルが勝てば、アロンソが2位でも王手をかけられる。
最終戦でアロンソが勝って、ミハエル・シューマッハーが2位でもチャンピオンはミハエル・シューマッハーになるからだ。
そしてよほどのことがない限り、ミハエルが2位以下になることは考えられない。
ミハエルは次のレースでアロンソが勝った場合も、2位になれれば、最終戦で勝つことにより、アロンソの結果にかかわらずチャンピオンになることができる。
そう考えると同点とはいえ、アロンソは追い詰められた。
鈴鹿では追い抜きがほとんど不可能なので、予選のアタックが非常に重要。
第三ピリオドの二人の最後のアタックが、大注目だ。
ここで鍵を握るのはライコネン。
この二人に対抗できる唯一の存在だが、マクレーレンの調子次第となる。
もしライコネンがこの二人に割ってはいるとなると、それがチャンピオンシップの行方を左右しそうだ。
当面、最後になる鈴鹿でこの偉大な二人のドライバーがどういう走りを見せてくれるのか、非常に楽しみだ。
どちらにしても、今回のように天候に左右されることなく、勝負が決することを望みたい。
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シューマッハ